[CML 029726] イスラエルの「脱シオニズム化」(1):アラブ=イスラエル紛争のイデオロギー的源泉を枯渇させること

Yasuaki Matsumoto y_matsu29 at ybb.ne.jp
2014年 2月 18日 (火) 04:24:02 JST


みなさまへ    (BCCにて)松元

「人種主義と植民地主義の源泉となっているイ スラエルのシオニ ズム」、ある
いは「シオニズムとユダヤ教はまったく別物」「ユダヤの戦争と呼ばれているも
のは正しくはシオニストの戦争」と指摘されてい ながら、日本人の 多くがシオ
ニズムの理解は難しいというと聞きます。シオニズムについては多様な角度から
の情報があった方がよいように思います。昨年11月には、アメリカのシオニスト
権力機構の米国政策への影響力を論じたジェームズ・ペトラスの論考をお届けし
ました が、今回は、同時期にパレスチナ人が論じた「脱シオニズム化」の論考
を拙訳ですが紹介させていただきます。

著者のニコラ・ナースィル氏は、主に欧米諸国 の読者対象に活躍 する西岸ビル
ゼイトのパレスチナ人ジャーナリストです。イスラエルはもとより米国・ヨー
ロッパの「脱シオニズム化」こそが、「この地域に おける平和を正夢 にさせ、
歴史を正常なコースへと回復させるであろう」と論じています。欧米人に対する
切実なパレスチナ人の期待と読むことができます。ま た、文中で触れら れてい
るエルサレム諸教会の指導者による「キリスト教シオニズムにかんするエルサレ
ム宣言」もご参考に拙訳を添えてみました。 

シオニズム理解については、先回もヤコヴ・ラ ブキン氏の『イスラエルとは何
か』(平凡社新書)を紹介しましたが、イスラエル/パレスチナ問題をめぐる現
代史および世界史におけるその意味と位置づけについては、中東・イスラーム研
究者の板垣雄 三氏の独自の歴史理解に学ばれることをお勧めします。(板垣雄
三著『歴史の現在と地域学―現代中東への視角』、『イスラーム誤認』ともに 岩
波書店、他多数)

また不十分ながら、いくつかの訳注を付しまし たが間違いもあるかもしれませ
ん。くれぐれも上記二氏の諸著を参考にしていただきたいと思います。

なお、このニコラ・ナースィル氏の論説につい て、板垣雄三氏か ら寸評をいた
だきましたので紹介させていただきます。現在のパレスチナをめぐる情況も浮き
彫りにする以下の鋭い洞察は、パレスチナ問題を 考える私たちに、 さらに日本
におけるさまざまな言説評価にさいしても、重要な指摘が含まれていると思いま
す。(2014年2月16日記)

【「…原文も乱れているうえ、筆者は聖書の知 識でも欠陥があ り、アブラハム
やヤコブへの約束を無視したり、バルフォア宣言について誇張した新(珍)説を
持ち出したり…またアラブ社会の中のユダヤ教 徒という問題を ヨーロッパの
「ユダヤ人問題」に安直に連結してしまう筆者の頼りなさに注目する必要がある
でしょう。…」

「筆者ニクーラー・ナースィルが欧米の外交政 策ないしオート・ ポリティーク
としての国際政治の変化の側からイスラエルの脱シオニズム化を進めようとし
て、欧米世論に訴えかける戦略をとっていることを 見抜く必要につい ては以前
指摘したことですが、むしろ大事なことは、欧米読者向けに書く、というより欧
米メディアを顧客として売り込む、そのために、彼が 採らざるを得ない 戦略戦
術として、パレスチナ問題をイスラエル・パレスチナ紛争そして中東の平和をめ
ぐる問題と捉え、正面から植民地主義とそれへの抵抗・ それからの解放の 問題
だという本質を打ち出すことを控え、自制して、欧米メディアと欧米読者とに通
用する用語と論理構成とを借りながら、国際的植民地主義 において欧米とシ オ
ニズムとが一体的に複合する構造を半面適応的・半面教育的に掘り崩せないかと
いう前記のような迂回戦略をこれでもかこれでもかと試みて いるうち、ミイラ
取りがミイラになる式で、彼自身がその思考法や論理の運びに慣れきってしまっ
た観がある、という問題です。パレスチナ人同胞やアラブや世 界のムスリムに
向 けてでなく、さらに日本人に向けてでもなく、欧米相手の言説の「たたか
い」において、パレスチナ人ジャーナリストをしてそのように討死さ せるよう
な、そん なパレスチナ問題なのだということを観なおさせる材料でしょう。…」

「植民地主義批判という本質論は抑制して「衣 の下の鎧」として 隠し、あくま
で〈紛争〉解決・〈平和〉回復という欧米メディア・読者に合わせた議論の仕方
で、メッセージを送ることを通じて、欧米の世論 や政策が変化する ことを期待
し、そこからイスラエルという国のあり方を変化させる突破口が開けないもの
か、という筆者の試みから、私たちはあらためて八方 塞がりのパレスチ ナ問題
の性質や構造を考えなおす機縁ともすることができるのではないでしょうか。」
(板垣雄三)】

*The “De-Zionization” of Israel: Drying up Ideological Wellsprings of
Arab -- Israeli Conflict*

*イスラエルの「脱シオニズム化」:アラブ**=**イスラエル紛争のイデオロギー
的源泉を枯渇させること***

ニコラ・ナースィル(Nicola Nasser
<http://r20.rs6.net/tn.jsp?e=001F-IgNaMZHFjo5REZf-jbtE-
rXx2NW3yMH8rBitSIhxxay0U3XLyptibmTHCtR5Y_tHNNXUGTFBPvSFR9C7tjeMECL8qKEAN8yPMCKEPfoTyvQWwG6vL5-
qBIpA92iKHcbScOiTwc_xWau79I3kPWMcOTzWyVyNcr>)(松元保昭訳)

2013年10月30日
グローバル・リサーチ誌

Url of this article:
http://www.globalresearch.ca/the-de-zionization-of-israel-drying-up-ideological-wellsprings-of-arab-israeli-conflict/5356184
<http://r20.rs6.net/tn.jsp?e=001F-IgNaMZHFgZB73iRyxitVdikR29NrTV130eCxjuykWDs-T-dX3qzl1sQBpTNEy68MZRlSy8TGegWZG4NSBvgxhlgkAL5PRUM0zv3rY0iWFKpVQ6LQGwJ26N7nXkpfhrEeFCjnxfsmaMu7mPZkgPBwLb0_BqXsxEllh6kwxNuevYOPVI24BS12kmUMswD6LAi8t6_iy3jcdQ6PsuTewVBFeKTvQWip2E_tdve60b34i6UmDwMFCNVhH1ZzX1qdqx>

/イスラエル国家の対内政策ならびに米国およびヨーロッパの 外交政策の脱シオ
ニズム化こそが中東における平和の必須条件になってきたという認識が、徐々に
ではあるがイスラエルと世界の世論およ び公衆意識の中に着実に定着しつつあ
る。///

しかしながらこの認識も、欧米の外交政策をシオニズムへのイデオロギー的執着
から解放させイスラエルが脱シオニズム 化するまでは、アラブ=イスラエル紛争
におけるシオニストの イデオロギー的水源を枯渇させることも、あるいはそれ
を現実政治に反映させることも、いまだ時を待たねばならない。

ジェイムズ・トゥローブ(James Traub:ニューヨーク・タイムズ・マガジンを
中心に批評活動で練達のジャーナリスト)は、今年10月25日『フォーリン・ポリ
シー』誌が掲載した彼の論文で、去る5月にバラク・オバマ大統領が「対テロ戦
争の再定式化を公表」した演説を引き合いに出し、「われわれは 過激なイデオ
ロ ギーが根付くあらゆる場所で軍事力を行使するわけにはいかず」、「永久戦
争」に唯一代わるものは「過激主義の水源」を減らす努力を継続す ることだ、
という 一節を引用した。

過去20世 紀の大部分をつうじ現在にいたるまで、中東における「永久戦争」と
「過激主義」の「水源」は、(本来の)世俗的(シオニズム)が転じた宗 教的
シオニズムの 「過激イデオロギー」と現実政治とが野合する不自然きわまる邪
悪な組み合わせのなかに容易に見出すことができたはずである。

【訳注】文中の「世俗的転じて宗教的シオニズ ムthe secular -- turned --
religious Zionism」については、シオニズム変遷の理解が必要。シオニズムは
本 来、伝統的ユダヤ教 から袂を分かちユダヤ教信仰の日々の実践を無視して自
らを民族主義(ナショナリズム)と一体化する非宗教的な世俗的シオニズムとし
て台頭 した。しかし、バ ルフォア宣言を機にパレスチナの「領土」獲得が日程
に乗ぼるようになると、聖書の言説「約束の地」を後ろ盾にした植民地的侵略を
正当化す る過激な宗教的シ オニズムに転じた、と考えられる。その前史とし
て、「シオニズム運動のプロテスタント的な源泉」があるが、前文紹介のラブキ
ン氏の論説を 参考にされたい。

この組み 合わせは、母国で圧迫され反ユダヤ主義・ポグロム・ホロコーストの
犠牲者にされていた西洋諸国のユダヤ人を人工的に寄せ集めた多国籍集団 に
取って代えたた め、パレスチナ・アラブ先住民の倫理に反する住民追放を容認
し正当化することを可能にさせ、かつ欧米人にとってはあたかもうわべだけ倫理
にかなったことの ように思わせた。

米 国およびヨーロッパのシオニスト・イデオロギーに対する一貫した執着が、
彼らがこのイデオロギーの落し児=イスラエルこそ中東における最 大の「死活
的利 害」のひとつとみなす処遇の核心にある。そしてこうした処遇がこんど
は、反米主義その他アラブの「西洋」に対するさまざまな形の紛争の心 臓部に
横たわって いる執着と化すのである。

イスラエルの「脱シオニズム化」(1)終 わり





CML メーリングリストの案内