[CML 029507] 東京都知事選の「脱原発」統一論争と「脱原発」理念の希釈・拡散化について ――「脱原発」運動の「堕落」によって市民が大きなツケを払わされないために

higashimoto takashi higashimoto.takashi at khaki.plala.or.jp
2014年 2月 8日 (土) 20:46:10 JST


――リベラル・左派の堕落によって市民が大きなツケを払わされている

明日9日投票の東京都知事選では「脱原発」がひとつの重要な争点となってきました。それにはその脱原発シングルイシューを
武器にして都知事選に参入してきた細川・小泉元首相コンビの影響が大きいでしょう。脱原発、原発再稼働反対を政策に掲げ
た細川氏が都知事選に勝利すれば安倍首相も安閑と原発の重要性を説いてばかりではいられなくなるだろう、というのが細川・
小泉元首相コンビの都知事選参入の理由です。当初、マスメディアは安倍内閣、現首相と元首相コンビとの対決という観点から
色めきたち、細川人気はうなぎのぼりの様相がありましたが、細川陣営の政策の後出しジャンケンなどの不手際からその細川
人気も急速にしぼんでいき、いまや自・公推薦の舛添氏の当選を前提に宇都宮陣営との2位、3位争いが取沙汰されるばかり
です。それでも脱原発シングルイシューが都知事選の重要な争点のひとつになったということだけはたしかなことです。

「脱原発」は、いわゆる「革新」陣営の重要な目玉政策のひとつでもあります。「脱原発都知事を実現する会」(鎌田慧氏、河合弘
之氏ら)が宇都宮健児氏及び細川護煕氏に「脱原発候補の統一のための話し合い」を呼びかけたのは文字どおり「脱原発を心
から願う」ためでしたし、宇都宮陣営がその「統一のための話し合い」を拒否したのも「脱原発運動が分裂しなければ勝てる」もの
を同実現する会が「細川氏支援表明で運動を分裂させてしまった」というのが拒否の理由でした。いずれにしてもどちらもその宣
言のキー・ワードは「脱原発」です。
http://d.hatena.ne.jp/vanacoral/20140128

しかし、「革新」陣営がそれほどまでに選挙のキー・ワードとする「脱原発」は、必ずしも「革新」の政策ということはできません。た
とえば東京新聞は一昨昨日の2月6日付けで「再稼働反対派の投票先は、安倍政権の原発政策に沿う舛添氏と、原発即時ゼロ
を訴える細川氏と宇都宮氏に三分した」という都知事選世論調査の結果を発表しました(「都知事選世論調査 脱原発票割れる
舛添・細川・宇都宮氏に」東京新聞 2014年2月6日)。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014020602000121.html

この調査結果からもわかるように「脱原発」は単に「革新」支持者が支持している政策というばかりでなく、「保守」支持者もかなり
積極的に支持している政策ということができます。この調査結果が示していることは「脱原発」は決して「革新」支持者の専売特許
のスローガンではない、ということです。

このことはなにを意味するのか。

第1。当然、「脱原発」理念の「保守」支持層への影響の拡がりを意味しているでしょう。しかし、その保守支持層が抱いている「脱
原発」理念とはどういうものか。原発再稼働反対ではあっても、安倍政権の原発政策に沿う舛添氏を支持するということですから、
安倍首相の言う「徹底した省エネルギー社会の実現と再生可能エネルギーの最大限の導入を進め、原発依存度は可能な限り低
減する」が、「海外への化石燃料への依存度が、第1次石油ショック当時よりも高くなっているという現実を考えると、そう簡単に、
原発はもうやめる、もうやめたというわけには」いかないという「原発再稼働に前向きな考えを示」す(The Huffington Post 2014年
01月28日)安倍政権の姿勢を容認する範囲内での原発再稼働反対でしかない「脱原発」理念というほかないものでしょう。それを
しも「脱原発」というのか? 大いに疑問、としないわけにはいきませんが、新聞社の世論調査には「原発再稼働反対」と回答して
いるわけですから回答者自身の気持ちの中ではそういうおのれの考え方も「脱原発」理念の内なのでしょう。ひとことで言って、
「保守」支持層の「脱原発」とは、「脱原発」理念のもう「理念」とは呼べないまでの希釈化とデフォルメーションを意味すると見てよ
いでしょう。
http://www.huffingtonpost.jp/2014/01/28/shinzo-abe-nuclear-power_n_4678547.html

第2。では、そこまで「脱原発」理念をデフォルメーションし、希釈化してきた人たちとはどういう人たちでしょう? あるいはどういう
人たちだったでしょう? 上記でも触れた「脱原発都知事を実現する会」の共同世話人の河合弘之氏という「脱原発」弁護士を「脱
原発」理念をもう「理念」とは呼べないまでにデフォルメーションしてきた好個の人物例証としてその負の役割について見てみます。

河合弘之弁護士はいまや「脱原発弁護団全国連絡会」や「脱原発法制定全国ネットワーク」の共同代表などもつとめる「脱原発」
弁護士としてその名前を知らない人はいないほど「脱原発」運動界隈内において名を馳せている存在ですが、同弁護士は同時に
大阪市特別参与
http://www.city.osaka.lg.jp/seisakukikakushitsu/page/0000157541.html
としてポピュリスト市長、橋下徹(大阪市長・日本維新の会共同代表)のうそ「脱原発」、うそ「原発再稼働反対」を
指南した「凄腕用心棒」(大木英治『逆襲弁護士河合弘之』)弁護士でもあります。しかし、なぜか「脱原発」運動界隈内では河合弁
護士のこうしたポピュリズム市政への「貢献」はまったくといってよいほど問題にされません。こうしたポピュリズム市政貢献という
「革新」陣営にとってはまぎれもない「負」の事実があるにもかかわらず同弁護士への「脱原発」弁護士としての評価は微動だにし
ないのです。しかし、なぜ、このような弁護士が「脱原発」弁護士とみなされるのか。同弁護士が橋下に指南してきたこの一連のう
そ「脱原発」、うそ「原発再稼働反対」なるものがそれでも「『脱原発』ということになるのか、私は全く理解でき」(金光翔「都知事選
とリベラル・左派の問題」)ません。
http://watashinim.exblog.jp/20324721/

河合弘之弁護士は60年安保世代の渕上太郎氏や正清太一氏、三上治氏などが中心となって結団している経産省前テントひろ
ば明渡訴訟のテントひろば側弁護団団長もつとめています。福岡の「原発とめよう!九電本店前ひろば」は同経産省前テントひ
ろばとは友好、支持、支援関係にあります。さらに「原発とめよう!九電本店前ひろば」運動は社民党ばかりでなく共産党も積極
的に支援する立場です。河合弁護士はそうした「革新」政党を含みこんだ「脱原発」運動の流れ(私流に言えば「脱原発」運動の
「拡散化」の流れ)に大きな影響力を保持しているのです。

また、同弁護士は、原発民衆法廷顧問でもあり、同検事団の一員でもあります。まさに「脱原発」に関して八面六臂の獅子奮迅
ぶりです。しかし、その原発民衆法廷・熊本公判の参考人として同弁護士ら検事団から推薦されて出廷しようとした熊本市在住
の小野俊一医師(元東電原発技術者)は‘onodekita’なるハンドル・ネームで「ピカの毒はうつる」などの「放射能怪情報」を全国
に拡散する人物として民衆法廷に「出廷忌避申し立て書」が提出される体のトンデモ脱原発論者でした。結局、‘onodekita’氏は
参考人として同法廷で陳述することにはなりましたが、判事団からさまざまな注文をつけられる始末でした。原発民衆法廷顧問
(検事)としてそうしたトンデモ脱原発論者を推した棟梁格が同弁護士です。こうして「脱原発」理念のデフォルメーション化、拡散
化はいまも進行し続けています。

その河合弁護士と同様の意味で「脱原発」理念のデフォルメーション化、拡散化に負の貢献をしている人物として、ほかにも広
瀬隆氏(作家)や飯田哲也氏(環境学者)、山本太郎氏(参院議員)、上杉隆氏(フリージャーナリスト)、岩上安身氏(同左)、田
中龍作氏(同左)などの面々もあげることができますが、ここでは詳述しません。が、そのそれぞれについては私はすでに相当
回、相応数の批判を展開しています。弊ブログの検索欄にそれぞれの氏名を挿入して検索していただければ幸いです。

以上見てきた「脱原発」理念の希釈・拡散化とデフォルメーション化は、今回の東京都知事選においても負の影響としてはっき
りとした影を落としているように私には見えます。拡散化した「脱原発」理念はその拡散化のために保守層の素朴な「脱原発」
感情を「革新」の側に引き寄せる理念の役割を果たしえなくなっていること。それが「再稼働反対派の投票先は、安倍政権の
原発政策に沿う舛添氏と、原発即時ゼロを訴える細川氏と宇都宮氏に三分」(東京新聞 

2014年2月6日)するという一種の政
治的無関心(「どの党(勢力)も同じ」という市民の政治的諦観)現象となって現われているということ。

この問題は「脱原発候補の統一のための話し合い」にも負の影響の影を落としています。「脱原発候補の統一」という名のも
とに集まった「脱原発都知事を実現する会」は実質的な細川候補を支持する人々でした。しかし、その当の細川候補(及び小
泉元首相)の言う「脱原発」はトンデモチックな「脱原発」論でしかありません(弊ブログ「石井孝明氏の細川護煕論」(2014.02.
03)参照)。これでは「脱原発候補の統一」どころか「脱原発都知事を実現する会」自体が細川氏の掲げる原発政策をめぐっ
て二分三裂しかねない萌芽を宿している「統一」運動の提起だったと評価せざるをえない代物でしかないのです。
http://mizukith.blog91.fc2.com/blog-entry-778.html

上記の論は「リベラル・左派の堕落」現象を「脱原発」理念の希釈・拡散化は結局どこにゆき着かざるをえないのか、という視
点から見ようとしたものです。「脱原発」運動、さらに政治運動によって市民が大きなツケを払わされないためには、私たちは、
「脱原発運動保守化」という現象をもう少し深刻に受け止める必要があるように思います。 



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