[CML 035656] ◆衆議院総選挙――われわれは何を選んだのか:白井聡 | 文化学園大学 助教(政治学・社会思想)
M.nakata
gukoh_nt at yahoo.co.jp
2014年 12月 27日 (土) 17:10:06 JST
M.nakataです。
メールをありがとうございます。
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白井聡さんの投稿記事を、あらためてご紹介いたします。
ビデオニュース・コム神保:本編でも、今回彼の解説が聞かれます。そちらでどうぞご視聴ください。
http://www.videonews.com/
きちんと、学問として、学ばれているので、思い込みの強い、社会学者・宮台真治の論とは格段の差を感じます(笑)
▼日本の「共産党」とは、そもそも、一体何なのか?きちんと考えてみる必要がありますね。
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衆議院総選挙――われわれは何を選んだのか
白井聡 | 文化学園大学 助教(政治学・社会思想)
2014年12月22日 19時30分
※本稿は、12月18日の「京都新聞」文化面に掲載されたものです。
安倍政権は信任された。低投票率(最低値を大幅に更新、50%台前半まで落ち込んだ)や選挙制度の欠陥(小選挙区での自民党の得票率は48%だが議席占有率は75%)に助けられてのこととはいえ、与党が相対的に最大の票を得たことは事実であり、安倍晋三総理の続投が是認されたのである。
第二次安倍政権が成立して以来、多くの人々が危惧の念を表明してきた。すなわち、「日本は再び戦争をするのではないか」と。今回の総選挙を経て、この危惧は新しい段階に入るだろう。▼いまや問題は、「日本が戦争をするかどうか」ではない。戦争をすることはもはや既定路線であり、「いつ、誰と、どんな戦争をするのか」が問題である。
政治姿勢の是認
安倍政権の選挙戦勝利は、この戦争路線に国民が賛意を示したことを意味する。「ちょっと待て! 経済政策に対する期待から安倍政権に投票した、あるいは投票に行かずに与党が勝利を収めるのをボンヤリ見ていただけで、〈戦争する日本〉に賛成した覚えなどない!」と言う人もいるだろう。私ははっきり言うが、甘ったれた寝言はいい加減にしていただきたい。安倍晋三という政治家の首相になる以前からの、また第一次政権当時の言動、そしてこの二回目の政権担当期間に何をやってきたかを見れば、この人物が何をやりたい人なのか、それは一目瞭然だ。そして、「選挙の争点」なるものがメディアによってどう設定されていようとも、▼衆議院総選挙とは、政党・政治家の政治姿勢・政策に対するトータルな支持・不支持の表明機会以外の何物でもない。有権者が主観的にどう考えていようが、制度を通じて打ち立てられる客観的事実として戦争路線は是認されたのである。
戦争の実行にあたっての最大の障害は憲法問題であると言われている。憲法9条がある限り戦争などできはしない、と。特に3.11以降、日本社会ではあらゆる従来の常識が通じなくなってきているのだから、この常識も疑ってみた方がよい。そもそも憲法9条の歴史とは、その空文化の歴史にほかならず、その集大成が集団的自衛権の行使容認による解釈改憲であった。集団的自衛権の行使とは、要するに、同盟国の戦争を自らの戦争とみなして対処するということにほかならず、そして同盟国アメリカはほぼ途切れることなく大小の戦争を行なっている国家なのだから、すでに憲法9条は死んだも同然なのである。ここまでくれば、憲法を変えないまま徴兵制が復活されようが、あるいは核武装が試みられようが、別段驚くに値しない。これらを正当化する屁理屈をひねり出してくれる小役人と御用学者は掃いて捨てるほどいる。
ファシズム的動員
無論、保守支配層の悲願は改憲である。そして、それを議題に乗せる際に失敗は許されない。とすれば、改憲の前に参戦はやってくるに違いない。「現に戦争をしている」という状況が発生してしまえば、憲法9条は現実によって否定されることになるのだから、改憲の手続きは現状を追認する作業にすぎなくなる。その作業はファシズム的動員を通して執り行なわれるであろう。
安倍自民党の政治手法がファシズム的であるという批判はすでに多数なされているが、ここで厄介なのは、ファシズムという言葉が多義的で定義が難しいという事情だ。私は、ある思想家の定義、「ファシズムとは何一つ変更しないためにすべてを変更するふりをする政治である」という定義を採用したい。安倍首相の言う「戦後レジームからの脱却」は、「すべての変更」をイメージさせるが、その内実たるや先の大戦の敗北の総括をすり抜けた支配勢力の自己正当化と保身にすぎない。私はこのような戦後体制を「永続敗戦レジーム」と呼んでいるが、安倍首相が言う「保守」とはこのレジームの死守にほかならない。彼らは、この目的のためならば、戦争を含むあらゆる手段をとるだろう。▼戦争を回避する微かな望みがあるとすれば、多数の国民がこの現実を即座に正面から見据え、断固たる反対運動を組織することによってのみである。
白井聡
文化学園大学 助教(政治学・社会思想)
1977年、東京都生れ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒、一橋大学大学院社会学研究科博士課程単位修得退学。博士(社会学)。政治学者の立場から「いま何が起きているのか」を考え、分析します。私の専門は、政治哲学とか社会思想などと呼ばれる分野です。哲学・思想のプリズムを通して、現実の本質に迫りたいと思います。著書に、『未完のレーニン』(講談社選書メチエ)、『「物質」の蜂起をめざして――レーニン、〈力〉の思想』(作品社)、『永続敗戦論――戦後日本の核心』(太田出版)、共著に『日本人が知らないウィキリークス』(洋泉社新書)などがある。朝日新聞社「WEBRONZA」寄稿者。
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