[CML 035438] 学校法人京都朝鮮学園・弁護団コメント
maeda at zokei.ac.jp
maeda at zokei.ac.jp
2014年 12月 12日 (金) 10:30:36 JST
前田 朗です。
12月12日
学校法人京都朝鮮学園・弁護団コメント
今般、最高裁決定により判決が確定したことは、京都の学校のみならず、日本全
国の朝鮮学校で、明るく元気に学んでいる子どもたちの安心につながる。大阪高
裁判決は、単に差別街宣の悪質性を論じるのみならず、民族教育を受ける利益の
重要性にも言及し、差別に屈せず民族教育の充実に尽力している教職員、父母、
その他関係者のみなさんを勇気づけてきた。今般、最高裁においても高裁判決が
維持され確定したことは、大きな社会的意義を有するものである。
約5年の長きにわたる司法手続のなかで、父母や教員など学校当事者が大きな犠
牲を払って、ようやく獲得された司法判断であることを忘れてはならない。動画
上映によって事件当時の絶望感を思いだし、自らの心の傷を証言する辛さを感じ、
そして、法廷においてさえも無反省な被告らのヘイトスピーチに晒され続ける二
次被害を受け続けながらも、民族教育を守る一心で団結し、覚悟と決意により勝
ち取られた高裁判決であった。
他方で、司法作用が、ヘイト被害からの回復に向けてできることには限界がある。
ヘイト街宣がますます拡散・蔓延しつつある昨今、被害者は日本社会に対する不
信を拭えず日々の安全に大きな不安に晒されているといえる。一連の司法判断は
日本社会の姿勢を示すという観点で大きな一歩ではあるものの、被害救 済とし
て未だ十分とはいえない。今回の最高裁決定を受け、日本社会がヘイト街宣や差
別の問題についてどのように対峙していくのか、私たち一人一人の行動が問われ
る段階となろう。また、本件の民事判決が注目を集めた背景には、これに先立つ
刑事司法において、際だった機能不全があったことを忘れてはならない。警察の
対応が被害の長期化、深刻化を招いたことについて、改めて十分な検証が行われ
る必要がある。
なお、「表現の自由」論については、最高裁判所も、被告らの「政治的表現であ
った」などとする弁明に惑わされることなく、人種差別という本件行為の本質を
見据えた地裁・高裁判決を維持したものであり、今後の同種ヘイト事案における
審理にも先例として影響を与えていくものと評価する。
民族教育の実践への理解と、ヘイトクライム被害の深刻さへの理解は、民族的自
尊心の保護というキーワードで共通し、コインの表裏の関係にある。京都地裁判
決、大阪高裁判決については、人種差別撤廃条約の適用も含めて世論・報道機関
の圧倒的支持を受け、法律学の論文においても堅実な評価を得てきたものである
が、今回、最高裁においてもこの判断が維持されたことを受け、民族教育の取り
組みを発展させ、人種差別を許さない社会を作っていく取り組みを一層加速させ
る効果が期待される。
以上
CML メーリングリストの案内