[CML 035284] 今日の言葉(「私」と総選挙)15 ――株価が上がれば、経済がよくなるという考え方は本末転倒。強い人たちだけが生き残る均一化した社会は必ず滅びます。 附:大阪選挙区と沖縄選挙区から

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2014年 12月 2日 (火) 19:29:03 JST


「今日の言葉」(「私」と総選挙)15は、マクロ経済の分析がご専門の浜矩子さん(同志社大学教授)の「強者だけ生き残る社会は
滅ぶ」という朝日新聞インタビュー記事(2014年12月2日)。附記として広原盛明さん(都市計画・まちづくり研究者、元京都府立大
学学長)と岡留安則さん(ジャーナリスト、元『噂の眞相』編集長)のそれぞれ大阪選挙区と沖縄選挙区からの情勢分析記事。

浜矩子さん(同志社大学教授)インタビュー(朝日新聞 2014年12月2日)から。
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11485036.html?iref=comkiji_txt_end_s_kjid_DA3S11485036

アベノミクスは崩壊しつつあると思います。金融の異次元緩和で円安、株高を導き出したけれど、輸出数量は期待したほど伸びず、
輸入価格が上昇して生活と生産のコストが上がっている。家計や中小企業は圧迫されています。株価が上がれば、経済がよくなる
という考え方は本末転倒です。本来は、実体経済がよくなって株価が上がるものです。しかも上がったといっても、日経平均は2万
円に届かない。株をたくさん買っているのは外国人投資家で、彼らは売るために買うから長続きしない。円安と株高の二つの芸だ
けでは経済政策の限界は明らかです。世論調査の結果をみても、多くの人が景気がよくなったと感じていません。何をやっても、
なかなか思った通りにいかず、衆議院を解散したのではないか。下手な将棋士が将棋盤を眺めて「もう、いやっ」とひっくり返すよう
に。最大の眼目が成長戦略だというのも時代錯誤です。確かに発育過程には成長が必要でしょう。でも日本経済はもう大人。成熟
しているのに、まだ成長戦略ですか。お年寄りにドーピングして、100メートルを9・9秒で走れ、と言うようなものです。副作用どころ
の話ではない。格差が広がっているのに重点政策の視点が違っています。

アベノミクスは強い者をより強く、弱い者はそのままにしておく政策だと言わざるを得ません。株高などの恩恵に浴した富裕層から
富がしたたり落ちる「トリクルダウン」が効くのだと称して、熱い部分をどんどん熱くしている。その結果が人手不足です。おかげで、
中小企業は人手が足りずに増産もできない。富はしたたり落ちていないのです。そんな状態では、創造力豊かな面白い発想が生
まれるはずもありません。消費増税はいずれやらなければならなかった、というのは分かります。所得税に依存する今の税体系は、
戦後のサラリーマン世帯中心の社会を想定したものです。消費税を導入した1989年当時も世界に冠たる平等社会で、「分厚い
中間層」がまだ健在だった。しかも税率は3%です。今は非正規社員が増え、貧困の連鎖が起きている社会です。なんの激変緩
和措置もなしに税率が8%になり、それが死活問題となる人々が出てきている。再増税の先送りはそりゃそうでしょう。でも、なぜ
1年半先の2017年4月なのか。その間になんとかなると思っているのでしょうか。このままではデフレ脱却は夢のまた夢だと思い
ます。やるべきことは別にあります。最大のテーマは、これまでに蓄えた富をどう分かち合うか、いかに分配するかです。それがで
きていないから豊かさの中に貧困が存在しているのです。

所得の低い人ほど負担感が大きい消費税を引き上げていくなら、軽減税率の導入は当然です。生活必需品の税率を下げ、ぜい
たく品には逆に「重増税率」を適用していい。高額所得者に対する金持ち増税、企業の内部留保への課税なんかも考える必要が
あります。そもそも成長戦略と大仰に言わずとも、ずうたいのでかい経済が1~2%も成長すれば、すごいことです。日本経済の完
成度は高く放っておいても回る。でも回転の輪の中に貧困が存在するから足腰の強い経済が実現しない。彼らがちゃんと暮らせる
ようにすれば、結果的には成長率アップだって、それが必要かどうかはともかく、実現する可能性はあるでしょう。めざすべきは、
多様な人々が参画できる社会です。強い人たちだけが生き残る均一化した社会は、必ず滅びます。東京と地方の関係も同じ。東
京一極集中が進んで、地方が疲弊して立ちゆかなくなると多様性が失われます。安倍政権は「地方創生」を掲げて、ストーリー性や
テーマ性、観光資源の発掘を目指せとあおります。地方は皆、テーマパークになれということですかね。地域を再生するために本当
に必要なものは何か。高齢化対策か、少子化対策か、働く場所の確保か、それぞれの地域がまず自らを分析しなければならない。
分析結果に基づく取り組みを政府がアシストする。これがまともな姿でしょう。

附記1:「維新は2014年衆院選の大阪選挙区で壊滅的敗北を喫するだろう」(広原盛明のつれづれ日記 2014-12-02)から。
http://d.hatena.ne.jp/hiroharablog/20141202/1417473943

附記2:岡留安則の「東京-沖縄-アジア」幻視行日記(2014.12.01)から。
http://okadome.cocolog-nifty.com/blog/


東本高志@大分
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