[CML 033429] 空き家活用陳情江東区回答

林田力 info at hayariki.net
2014年 8月 26日 (火) 08:28:40 JST


希望のまち東京in東部の江東区長宛陳情「若者の自立支援政策を目的とした区内の空き家の実態調査とそれに基づく施策策定の陳情」に対し、江東区は8月4日付で回答した。複数の所管が回答している。回答には住宅支援給付事業の説明資料が同封されていた。

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都市整備部住宅課長(2014年8月1日、26江政広第1253号)

 本区では、ご意見にあります「住宅セーフティネット法」に基づいて「江東区居住支援協議会」を設置しております。この協議会は、江東区・東京都・不動産関連諸団体及び公的住宅事業者等で構成され、「低額所得者・被災者・高齢者・障害者・子育て世帯等」の住宅確保要配慮者への対策を官民共同で協議する団体となっております。この団体の取組として、現在、「高齢者世帯への民間賃貸住宅あっせん」を実施しておりますが、若年層の住宅確保要配慮者に対する施策については具体的な協議課題とはしておりません。



 政策経営部広報公聴課長(2014年8月1日、26江都住第805号)

 本区では「住宅支援給付事業」を実施し、離職により住居を失った(失うおそれがある)方で、就労能力と就労意欲のある方に一定期間家賃を支給しております。また社会福祉協議会でも、離職者により住居を失った方に敷金等の貸付を行っています。これらは対象を若者のみに特化したものではありませんが、若者も含めた離職者の住まいの確保に資する事業と位置づけております。

なお、本区におきましては、要求項目にありますような若者の自立支援政策を目的とした空き家の実態調査等を実施する予定はございませんが、本陳情は貴重なご意見として、今後の区政の参考にさせていただきます。

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陳情では住宅セーフティネット法で位置付けられていない単身若年層への住まいの支援を求めている。ところが、都市整備部回答は住宅セーフティネット法に基づいた施策をしていると回答する。住宅セーフティネット法の不十分な点を補って欲しいと求めているのに、「住宅セーフティネット法に基づいている」では回答にならない。

また、「高齢者世帯への民間賃貸住宅あっせん」は実施しているが、若年層の住宅確保要配慮者に対する施策はしていないとの回答は、若年層の住まいの貧困に取り組んで欲しいという問題意識への回答にならない。高齢者向け施策はしても、若年層向けの施策はしないということになり、世代間不公平意識を助長しかねない。

 政策経営部回答は若年層に特化した訳ではないが、若者を含めた離職者の住まいの確保に資する事業を実施しているとする。若者を含めている点で問題意識への回答になるが、離職者などの限定条件があり、対象が狭い。

 「住居を失った(失うおそれがある)方」を対象とするが、貧困と格差の拡大した現代社会は最初からまともな賃貸住宅を借りることができない人々がいる。多くの人々が「住まいの費用が自立の壁になっている」と気付き始めている。空き家をシェアハウスなど廉価な賃貸住宅にすることで、彼らでも借りられる住宅を提供することが有益である。
http://hayariki.net/tobu/akiya2.html
また、現代の若年層を取り巻く状況が「若者も含めた」という一般的な施策で救済されるほど生易しいものかという疑問がある。たとえば労働問題においてもブラック企業という若者言葉で認識しなければ捉えられない状況が起きている。厚生労働省がブラック企業の実態調査に乗り出している。

 従来型の労働運動はブラック企業の問題意識が抜け落ちており、運動側がブラック企業という問題意識を共有することによって初めて若年層に意味のある存在になった。もし労働運動がブラック企業という言葉を使わず、左翼教条主義的なアジテートを繰り返すだけでは若年層の助けにならず、そっぽを向かれたままだったろう。住まいの問題についても若年層に特化した取り組みが必要ではないか。
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林田力(『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』著者)
http://hayariki.jakou.com/



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