[CML 033389] ブラック企業: 賃金とは何か
maeda at zokei.ac.jp
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2014年 8月 24日 (日) 23:47:53 JST
前田 朗です。
8月24日
石垣さん
ご苦労様です。
ブラック企業という言葉を巡るやり取りは、ずっと以前にこのML上で行われまし
た。私の見解はその時に示したことで十分であり、繰り返すつもりはありません
でした。
しかし、石垣さんが下記の投稿をしているので、再度、最低限必要なことを一言
書いておきます。
ある言葉が差別になるかどうかは、その言葉が使われる文脈に依存します。
例えば、日本社会では、「朝鮮(チョーセン)」という言葉を、ある文脈で使う
と極めて差別的侮蔑的になります。しかし、朝鮮半島の北半分に行けば、それは
文字通り、朝、鮮やかな素晴らしい国を指します。そのことにシンパシーを持っ
ている人もいます。私は、後者の文脈で頻繁に朝鮮という言葉を使います。「朝
鮮」という言葉が差別的なのではなく、その言葉が使われる文脈、とりわけ使う
人間の主観、使う状況、その言葉が向けられる相手との関係によって差別的にな
るのです。差別は実体ではなく、関係です。
ブラックという言葉が差別的になるかどうかも同じです。ブラック企業という言
葉は、日本の労働現場で被害を受けている者と加害を行っている企業との間で、
特定の文脈で使われている言葉です。日本社会に暮らす黒人に向けられているの
でもなければ、国外の黒人に向けられているのでもありません。
ブラックは色やそのイメージを指す表現です。ある文脈では黒人を指す場合もあ
る言葉ですが、黒人を指していない場合にもかかわらず無理やり黒人を指してい
ることに変えて批判しても無意味です。以前にも何度も紹介されたように、ブラ
ックはいい意味でも、悪い意味でも使われる、普通の言葉です。赤も白も黄色も
同じです。
文脈を無視して何でも差別だと言い募ることを、PC(Political Correctness)と
言います。PCは日本的に言えば差別語狩りです。相手に対する差別が行われてい
る場合ではなくても、言葉が気に入らないといって非難することであり、不毛な
議論の原因となります。「**が聞いたらどう感じるか」と、勝手に文脈を変え
ることは止めましょう。文脈と意味を読み変えて非難するのは、悪質な恫喝とな
ります。
差別についてさまざまな理解があり、議論がることでしょう。上記の見解に対し
て、石垣さんからも反論があることでしょう。しかし、それに対して私からの反
論はしません。
私は40年間差別問題に取り組んできた私なりの経験と理解で物事を考え、取組
み続けます。そして、人種差別撤廃委員会での議論をもとに、真に解決するべき
差別を取り上げて、その解決を目指します。この社会には真に解決しなければな
らない多数の差別があります。ヘイト・スピーチや朝鮮学校無償化除外や「慰安
婦」問題がその典型です。力及ばず、なかなか解決できませんが。
おかげで多忙なので、これ以上、言葉狩りの議論に加わる暇がありません。
ではまた。
----- Original Message -----
> 皆さん・林田さん
> お世話様
>
> >たとえば労働問題においてもブラック企業という若者言葉で認識しなければ
捉えられない状況が起きている。
>
> 分かり易い言葉として『ブラック企業』という造語、
> をあなたを含めマスコミは使用しています。
> レッテルを貼る、これは敵に対して有効です、
> しかし、そのレッテルの内容で新たな敵をあなたは作っているのです、
> いわゆる『ブラック・黒』黒人といわれるアフリカ系住民をです。
> 『自分が足を踏まれているから』「踏んだ人間をボロクソに罵倒する」それは
許されるでしょう。
> しかし、その発した言葉が敵だけでなく、それを聞いている『他者・弱者』の
心を傷つけていたら、
> どうなるのでしょうか。
>
> >左翼教条主義的なアジテートを繰り返すだけでは若年層にそっぽを向かれた
ままだろう。
>
> ブラック企業を「過酷(苛酷)・または酷薄」企業と呼び変えたらそれは教条
的なアジテートになるのでしょうか。
> そのことによって若者がそっぽを向くのでしょうか。
> 今の労働組合はご用組合か、分裂して政党の下請けになっているのが多く、
> 若者が賃金とは『働いているから得るのではなく」
> 「労働力商品という労働力を売って賃金を得る」という基本的なことを
> 理解していないだけです。
> 賃金は労働者の需要と供給で多少上下はしますが。
> 労働者が如何に自分たちの労働力を経営者・資本家に賃金として高く売るかで
決まります。
> 非正規雇用、長時間低賃金労働者は組合を結成し、団結して経営者と
> 団体交渉を行い、主張が全て通らなければストライキをやるのです。
> これは労働基本権です。
> 働く人々が団結して経営者と対等になる、これは同じ人間として
> 当然の権利です。
> 差別されている、非正規労働者が団結してストに立ち上がれば
> 経営は麻痺しますし、経営者は譲歩してきます。
> 経営者にお願いして賃金を上げ、労働時間を短くしてもらおう
> などのゴマスリは新たな、差別を産みます。
> 若者はダラカン組合幹部を当てにせず、仲間を作って闘うしかありません。
> 「ブラック企業」というレッテルを貼っても闘う若者が成長しなければ、
> 労働条件は改善されません、
> また『ブラック」という差別性、哲学を認識できない人は
> 闘い切れないでしょう。
> 労使の関係が共同労働で、賃金・労働時間をみんなで
> 話しあって決めるという企業はこのケースと異なります、
> そのような企業は『過酷企業』などとはいわれないでしょう、
> 石垣敏夫
>
>
> ブラック企業
>
> 現代の若年層を取り巻く状況が「若者も含めた」という一般的な施策で救済さ
れるほど生易しいものかという疑問である。
> たとえば労働問題においてもブラック企業という若者言葉で認識しなければ捉
えられない状況が起きている。
> 従来型の労働運動はブラック企業の問題意識が抜け落ちており、運動側がブラ
ック企業という問題意識を持つことによって
> 初めて若年層に意味のある存在になった。もし労働運動がブラック企業という
言葉を使わず、
> 左翼教条主義的なアジテートを繰り返すだけでは若年層にそっぽを向かれたま
まだろう。
>
> --
> 林田力(『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』著者)
> http://www.hayariki.net/
> http://hayariki.zero-yen.com/
>
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