[CML 033330] 憲法と東アジア情勢

林田力 info at hayariki.net
2014年 8月 22日 (金) 21:02:25 JST


以下では「憲法と東アジア情勢」の感想を述べる。最初に配布資料について、集会では言及されなかったが、興味深い記述があった。「日本人全体としての反核感情は、広島及び長崎の原爆体験を国民的な負の遺産として共有する営みに根ざすものではなく、第五福竜丸の被爆及びマグロの放射能汚染に対するパニックに基づくものであるだけに、様々な弱点を抱えています」。この指摘は放射脳カルトに基づく脱原発の弱さに重なる(林田力『放射脳カルトと貧困ビジネス』アマゾンKindle)。

 続いて内容の感想である。ポツダム宣言重視の憲法論、日中露協力関係、日本人論の三点について述べる。最初にポツダム宣言重視の憲法論であるが、これは大いに賛同する。

 日本国憲法に対する強固な攻撃は押し付け憲法論である。これに対して護憲派は日本国憲法の内容が当時の日本人の希望に合致していたと反論する傾向がある。これは憲法の内容が国民に支持される妥当な内容であるとの論拠としては有益である。しかし、当時の日本に日本国憲法の内容に反対だった人がいたことも事実である。日本国憲法制定に連合国軍総司令部の強権があったことも事実である。この点で押し付け憲法論を否定できない。

むしろ押し付けられて当然と考えるべきである。日本は軍国主義の除去を求めるポツダム宣言を受諾した。大日本帝国憲法のままでは日本が平和的な民主国家になることはない。従って新憲法の制定は必然である。押し付けに不満があるならば連合国(国際連合)と再度戦争して勝たなければならない。それが保守派の大好きな現実政治というものである。

 次の米国悪玉・中露善玉論に基づいた日中露協力関係は、あまり賛成できない。会場で質問したようにウクライナでロシアがしていることは拡張主義にしか見えない。クリミアをウクライナ領にしたのがフルシチョフの思い付きで根拠のないものとしても、それ以前にクリミアがロシア領であったこと自体がロシアの長年の拡張主義の結果である。

 米国批判については賛同できる面が多い。現在の日本外交が米国従属一辺倒で属国化の道を進んでいる以上、米国離れが望ましい方向性になる。だからと言って日米同盟を抜けて中露ブロックに入るならば冷戦思考そのものである。米国善玉・中露悪玉の冷戦思考に振り回されたくないが、その逆にも振り回されたくない。日本は米中露等距離外交を目指すべきだろう。

この日中露協力関係に対して集会参加者の反応は必ずしも好意的なもので満たされた訳ではなかった。実は中露善玉論はインターネット上では珍しいものではない。むしろネット左翼の共通認識と言ってよい。ウクライナ問題でもロシアに都合の悪い報道は全て欧米メディアのプロパガンダとする陰謀論が幅を利かせている。この集会の雰囲気からネット世論は現実の世論とまだまだギャップがあることを再確認した。

 最後の日本人論は賛同できる。日本人は進んだ西欧、いち早く近代化した日本、遅れた中国という視点から西欧と中国を対極に見る傾向がある。しかし、実際は西欧と中国の価値観は似ており、日本の特異性が顕著である。

 但し、中国と西欧の共通点は公共心よりも個人主義になると考える。個人主義と真の意味の公共心は裏表の関係であり、浅井氏の指摘を否定しないが、個人主義の脆弱な日本人に公共心を説くことは、そのような意味での公共ではないとしても、お上への従属を進めることになると危惧する。

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林田力(『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』著者)
http://www.hayariki.net/poli/katsushika.html


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