Re: [CML 033277] 『チェレンコブルーの月』書評
石垣敏夫
motoei at jcom.home.ne.jp
2014年 8月 21日 (木) 07:21:57 JST
林田さん
お世話様
「放射脳カルト」とは林田さんの造語ですか、
「放射能アレルギー」というのでしたら、わかりますが、
私は放射能は嫌いですが。
昔小児結核にかかり、レントゲンにはお世話になりました、
放射能は医学として恩恵を受けています。
ただ「放射能アレルギー」の方が生まれたとしても
その方には責任はありません、
責任は原発を稼動させた者
再稼動を進めている者の責任です。
言うなれば私たちの「敵」です。
放射能アレルギーとは原因があり結果の問題ですから、
原因を取り除かない限り、発生を止めることは
できない、と考えます。
石垣
小山紗都子『チェレンコブルーの月』(セルバ出版、2014年)は放射能事故で人生を変えられた独身女性を主人公とする一人称小説である。著者はいじめや交通事故、リストラなどを体験した自称社会派主婦作家である。
本書の放射能事故は工場で起きたものだが、読者は嫌でも東京電力福島第一原発事故を意識する。工場の進出によって地方都市が経済的には発展した。事故発生時に行政が正確な情報を伝えず、住民の被曝を拡大させた。さらに放射脳カルト的な風評が住民を苦しめる。
「放射能と聞いただけですべてがダメになってしまう、といった恐怖感で頭の中がいっぱいになって正しい知識や情報などには耳も貸さない単純な昔人間」(68頁)。
これは放射脳カルトの本質を見事に捉えている。放射脳カルトは自分達がマスメディアの情報支配に洗脳されない進んだ人間と思っているが、本質は差別意識と偏見に凝り固まった昔人間である。
差別された側の怒りは大きい。主人公は「ああいう偏見に満ちた連中が、のうのうと生きていてもいいのか」と語る(121頁)。ここには一部の過激な脱原発運動が社会の反感を受ける理由がある。放射脳カルトと共存する脱原発運動に反省を迫るものである。
本書の社会性の根底には格差社会がある。「多くの善良な若者が貧しい暮らしを強いられる不景気だというのに。相変わらず研究室などという趣味の延長のような部署で潤沢な給与をもらいながら、何の心配も憂いもなく生きている」(179頁)。
http://www.hayariki.net/cul/tsuki.html
本書は社会派的なテーマを扱っているだけでなく、物語としても巧みである。主人公の過去の因縁と物語の中で出会った人物の関係が交錯する。重たい背景を持つものの、主人公も登場人物も希望がある爽やかな読後感を与える終わり方になっている。
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林田力(『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』著者)
http://www.hayariki.net/
http://hayariki.zero-yen.com/
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