[CML 033239] 書評・子育てハッピーアドバイス
林田力
info at hayariki.net
2014年 8月 18日 (月) 22:37:06 JST
松成容子、明橋大二『子育てハッピーアドバイス 笑顔いっぱい 食育の巻』(1万年堂出版、2014年)は食育をテーマにした子育ての書籍である。『子育てハッピーアドバイス』はシリーズ物で、「ほめ方・叱り方」や「小児科」などの書籍が既に刊行されている。それらの子育て本と比べると、食育というテーマは堅さを感じるが、太田知子氏の可愛いイラストや漫画もあり、楽に読み進めることができる。
食育というテーマに堅いイメージがあることには理由がある。著者は周囲の母親達に「今度、食育をテーマにした本を出そうと思う」と言ったところ、消極的な反応を返ったという。食育という言葉には道徳的な押し付け感があるためである。著者は「『食育』というのは、国家が、お母さんたちに強制するカタチで始まっている」と指摘する(6頁)。
その上で著者は「本来それ(食育)は、お上から『こうしなさい』と言われる筋合いのものでは決してないはずです」と指摘する(7頁)。実際、本書の内容は、たまには手抜きをしてもいいなど、無理なく取り組める内容になっている。精神論的な頑張りを求める要素はない。それどころか本書の帯には「ママがラクになる食のあれこれ」と書かれている。このような食育ならば歓迎である。
食育が息苦しいものになる理由は官僚的な上から目線だけではない。類書では添加物禁止など食材の選別に力を入れているものもあるが、フード左翼を突き詰めるとカルト化してしまう。福島や東日本の食材を忌避した挙句、怪しげなベクレルフリーと称する食材に飛びつく放射脳カルトは幸せになれない。その種の気持ち悪さは本書にはない。
本書もジャンクフードばかり食べることへの批判はあるが、全否定ではない。たとえばファーストフードならば「楽しさと速さを買うと割り切って、利用すればいい」と助言する(69頁)。追求すべきは特定の食品の排除ではなく、バランスである。そのバランスも1食ごとではなく、2、3日単位で帳尻を合わせればいい(50頁)。
本書のアドバイスは食材選びや料理法ばかりではなく、子どもへの接し方も多い。食育もコミュニケーションである。食育の概念を転換させてくれる書籍である。
--
林田力(『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』著者)
http://hayariki.sa-kon.net/shokuiku.html
CML メーリングリストの案内