[CML 033073] 週刊東洋経済:原発再稼働の是非「住民の安全性を踏まえない規制委審査だ」(植田和弘・京都大学大学院教授)

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2014年 8月 9日 (土) 10:15:11 JST


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週刊東洋経済:原発再稼働の是非

「住民の安全性を踏まえない規制委審査だ」
http://toyokeizai.net/articles/-/44624

川内原発審査の問題/田和弘・京都大学大学院教授

中村 稔 :東洋経済 編集局記者 2014年08月06日

「住民の安全性を踏まえない規制委審査だ」 

植田和弘(うえた・かずひろ)●1952年、香川県生まれ。京都大学博士(経済学) 、大阪大学工学博士。1994年、京都大学経済学部教授。1997年、京都大学大学院経済学研究科教授、2002年から京都大学地球環境大学院教授兼任、現在に至る。専攻は環境経済学、財政学。

 原子力規制委員会が7月16日に九州電力・川内原子力発電所(鹿児島県薩摩川内市)に対し、新規制基準に基づく審査で初めてとなる、事実上の“合格証”を出した。現在、8月15日を期限とするパブリックコメント(意見公募)の期間中にあり、それを踏まえたうえで、規制委は正式な合格を判断する意向だ。その後、地元同意や設備の使用前検査を経て、早ければ今秋中にも再稼働の方向との見方が強まっている。

 しかし、川内原発の審査結果や審査プロセスには、問題点も数多く指摘される。審査の対象にはなっていないが、地元自治体が策定し、住民の安全確保に必須となる防災・避難計画に対しても、批判が少なくない。こうした問題点を有識者へのインタビューを通じ、シリーズで検証する。第1回目として、植田和弘・京都大学大学院教授(環境経済学)に聞いた。

――原子力規制委員会による川内原発の審査結果、審査プロセスについてどう考えていますか。

いくつか問題点がある。まず、政府の方針は「安全性の確保を大前提に原発を再稼働させる」というものだが、その場合の「安全性」の中身が問題になる。

政府の説明では、規制委の新規制基準の下での適合性審査にパスすればいいということだが、田中俊一委員長は、適合性審査にパスしただけであって安全と認めるものではない、と説明している。安全性が確保されたかどうかを、誰が責任を持って判断するのかがあいまいだ。

本当に世界で最も厳しい基準なのか

また、新規制基準が世界で最も厳しい基準というのも、かなり怪しい。具体的には、世界ではすでに導入されているコアキャッチャー(原子炉圧力容器外に流出した溶融炉心を格納容器内に貯留する設備)や、二重の格納容器などが、必ずしも審査の要件になっていない。技術的専門家からも「世界最高とは言えない」との評価がある。

仮に世界最高水準の基準だとしても、それで本当に十分なのかという本質的な議論もある。われわれが求めているのは安全性の確保だが、それはリスクの評価と関係している。やはり、福島原発のような事故を二度と起こさないようにしないといけないと思うが、そうしたリスクについて明確になっていない。

これらは原子炉の技術基準に関わる問題点だが、さらに重要なのは、住民の安全性を踏まえたものになっていないことだ。

非常事態を想定しているとは言うが、福島事故の教訓を生かしているとは言い難い。福島事故では、放射能汚染の多いほうへ住民が避難してしまったことや、重度の病気の方々がギリギリの選択を迫られるようなことがあった。が、規制委の審査では、住民の避難計画をしっかり立てることが要件になっていない。

――避難計画に関しては、地元でも多くの問題点が指摘されています。

病気の方々の避難方法や、住民が一斉に避難した際の道路の渋滞の問題など、現在の避難計画に実効性が本当にあるのか、という問題がある。

また、避難というのは、受け入れてくれるところがあって初めて成り立つわけで、本来は「避難受け入れ計画」というものが必要になる。内閣府が地元自治体の避難計画策定を支援することになっているが、避難受け入れ計画のほうは見ていない。そのため、本当の意味で避難できるのかは、何も担保されていない。これでは、新規制基準の適合性審査にパスしたとしても、本来確保されるべき安全性のごく一部しか審査していないということになり、まったく安全性の確保にはなっていない。

誰も審査を信用しなくなる恐れ

――再稼働の判断は時期尚早であると。
 
 原発の稼働問題は世論調査を見ても反対のほうが多く、(東日本大震災後は)大きな変化がない。ここで不十分な審査基準と審査プロセスの下、責任もあいまいな中で再稼働のゴーサインを出せば、規制委の規制方式が形骸化し、誰も審査を信用しなくなるおそれがある。それは非常にまずいことだ。新規制基準による最初の審査であるからこそ、もっときっちりとみんなの納得が行くようにしないと、再稼働はさらに難しくなるだろう。

――火山の影響審査が不十分だという指摘もあります。

非常に大事な問題だ。新規制基準は(各原発が立地する地域特有の)ローカルな問題に十分に対応するものとなっていない。川内原発の場合は、火山の影響が大きな問題となっている。これまで周辺で起きた巨大噴火を考えれば、川内原発へ影響が及ぶ可能性がある。そのことが十分に評価されたとは言えない。そもそも原発を立地する場所として適切であるのかが問われている。

――原発再稼働が遅れると、化石燃料の輸入代金で貿易赤字が続き、国富が流出したり、電気料金が上昇したり、電力の安定供給にも支障をきたしたりする弊害があるため、「再稼働を急ぐべき」との意見も多い。

「原発稼働ゼロのリスク」がよく強調されるが、まず確認しておく必要があるのは、もし不十分な形で原発を稼働させて再び大事故が起こったら、“日本は終わり”と言っても過言ではないことだ。そうなった時のリスクの大きさを考えれば、みんなが十分に合意し、確認して再稼働させる必要がある。拙速は避けるべきだ。

関西電力・大飯原発(福井県大飯郡)について、6月の福井地方裁判所の判決にもあるように、原発が引き起こす被害の大きさを考えると、経済的なベネフィット(効用)よりもはるかに大きいリスクがある。判決では「人格権」という言葉を使っていたが、そもそも経済的効用などとは比較衡量の対象にはならないとしている。それほど原発の重大事故によるリスクは大きいということだ。

原発自体が安定供給の電源か、というとそうではない。何らかの事故が起これば、大量の発電能力を持つ発電所が一度に止まってしまう。止まれば、かなりの期間、検査もしなくてはならない。原発が安定供給の手段というのは間違った理解の仕方だと考えられる。

原発のコストは安くない

また、原発は予測が難しく、コストやリスクの計算が難しい、厄介な電源と言える。電力会社の範囲内での計算だけではなく、社会全体へ与える費用を計算に入れた場合、原発のコストは決して安いとはいえない。

つまり、安全性、経済性、倫理性の3つの点で、原発は稼働に値しない状況にあると考えられる。

さらに、電気代の問題も大事な問題だが、これは電力システム改革(自由化による料金・サービス競争促進)とも結びつく問題であり、中長期的性格の課題として理解すべきだ。

国富の流出問題についても、国産の再生可能エネルギーを増やしていくことこそ、国富の流出を抑え、地域経済の活性化、さまざまな技術革新にもつながり、プラス面は大きい。そのほうが国民も安心ができて、将来性のある展望が持てる。

――省エネ、節電も電力の安定供給に寄与し、化石燃料の輸入減少につながる。

日本の経済社会全体の構造を、省エネ、節電型の方向へ持っていくことは、たくさんのビジネスチャンスも生む。そういう意味で、再生エネや省エネの推進には、二重、三重のメリットがある。

 		 	   		  


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