[CML 032962] 今日の言葉~抜録~ 辺見庸「日録28」(2014/08/03)――ガザ虐殺と檜森孝雄の死について

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2014年 8月 3日 (日) 17:52:39 JST


弊ブログの今日の言葉からです。
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ガザ虐殺の死者が昨日、1650人をこえた。米議会はイスラエルの対空防衛システム支援のため新たに2億2500万ドルの
拠出を承認した。ホワイトハウス周辺で1万人以上がガザ虐殺に抗議した。米政府に“Shame 
 on you!”のシュプレヒコール。
日本とイスラエルはすでに、企業や各研究機関が「共同研究・開発」を促進するための覚書を締結している。共同研究・
開発には「兵器」および軍事関連技術がふくまれる。日本政府は今春、武器輸出三原則の転換の過程で、イスラエルへ
の武器や関連技術の輸出が可能になるという見解を示している。アベ・ネタニヤフ両右翼政権は事実上の「準同盟関係」
となりつつあり、イスラエルが集団的自衛権行使の対象になる可能性もある。“Shame 
 on you!”のyouに、理の当然、アベ
政権もふくまれることになる。きのう、檜森孝雄の遺書をおもいだした。「まだ子どもが遊んでいる。もう潮風も少し冷たくな
ってきた。遠い昔、能代の海で遊んだあの小さな波がここにもある。この海がハイファにもシドンにもつながっている、そし
てピジョン・ロックにも。もうちょっとしたら子どもはいなくなるだろう」。檜森孝雄はパレスチナ支援の活動家だった。2002年
3月末の土曜の夕、日比谷公園かもめの広場で、ガソリンをかぶり焼身自殺。新聞はベタ記事だった。かれはイスラエル
軍によるパレスチナ民衆虐殺に抗議し、そして、あまりにも無関心なニッポンに絶望し、ひとしきり焔のダンスをおどったの
だった。享年54歳。あの焔は、パレスチナの少年が無理やりガソリンを飲まされて焼き殺された、その焔の色とどうちがう
か、おなじか。(辺見庸「日録28」(2014/08/03)

引用者注:上記の檜森孝雄さんの自死の話は辺見庸の「私」の思いにつながる死の話です。辺見はけっして檜森さんの
死をまかりまちがっても「社会」的な啓蒙の死として述べようとしているわけではないでしょう。誤解のないように引用者注
として「社会は人の死をどんな形でも利用してはいけない」という池澤夏樹の「夏のかたみに」の言葉もあわせて引用して
おきたいと思います。

池澤夏樹 夏のかたみに10「亡き伯母との会話」(要旨):

「死んだ人はもう死んでいるわけだから、後から出てきて弁明もできない。死んだ者の気持ちはわからない。それなら、社
会は人の死をどんな形でも利用してはいけないでしょう。もともと人は決して大義のために死ぬわけじゃなくて、それぞれ
にひっそりと小さな個人の死を死ぬのよ。そこに生者の勝手な都合を上乗せしてはいけない。誰かの死をテコにして、社
会を変えようとしてはいけない。死の瞬間だけでその人の人生を意味づけるようなこともやっぱりいけない。共感をもって
その人の生を見なおすことしか、残った者にはできないし、それで充分なんじゃないかな。」(朝日新聞文化欄 1993.8.18)


東本高志@大分
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