[CML 032959] IK改憲重要情報(58)

河内 謙策 kenkawauchi at nifty.com
2014年 8月 3日 (日) 17:00:42 JST


IK改憲重要情報(58)[2014年8月3日]



 私たちは、内外の改憲をめぐる動きと9条改憲反対運動についての情報を発信しま
す。(この情報を重複して受け取られた方は失礼をお許しください。転載・転送は自
由です。)

   

弁護士 市川守弘、弁護士 河内謙策



連絡先:〒170-0005東京都豊島区南大塚3-4-4-203 河内謙策法律事務所

(電話03-6914-3844,FAX03-6914-3884)



 弁護士アピールを支持する市民の会

 http://2010ken.la.coocan.jp/kaiken-soshi/

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(以下は、あくまで河内個人の見解です。御了承ください。)



グローバリゼーションと脱グローバリゼーション



 集団的自衛権容認の閣議決定に対する怒りは収まりませんが、今は、日米新ガイド
ラインや集団的自衛権具体化立法反対の「後半戦」に向けて、「前半戦」のわれわれ
の闘いを点検し、「後半戦」にむけての理論を整備し、新たな戦略を策定する時期だ
と、私は考えています。

 そのような私の考えからすると、集団的自衛権とグローバリゼーションについての
議論をもっと深めるべきだと思います(もちろん、これが最重点だというつもりで言
うのではありませんが)。日本が集団的自衛権の道に踏み込むことは、日本がアメリ
カと共同してグローバリゼーションを主導していくことに他ならないと思うからで
す。

したがって、日本の民衆運動の先頭には、9条改憲阻止の旗とともに脱原発の旗、脱
グローバリゼーションの旗がともに翻るべきではないかと思うのです。

 それで、最近読んだいくつかの本を紹介させていただきたいと思います。



*『週刊 東洋経済』2014年7月26日号



 いくつかのネットで紹介されているように、最近、アメリカやヨーロッパで、フラ
ンスの経済学者トマ・ピケティの書いた『21世紀の資本論』が話題になっています。
週刊東洋経済が翻訳の刊行に先立ち、同書のエッセンスを紹介する特集を組んでいま
す。

 同書は、現在、グローバリゼーションによって国民の間での格差が拡大しており、
2100年には格差は「ヨーロッパの18世紀からベル・エポックまでの水準程度に上昇す
る」と主張しています。日本の後藤道夫氏や渡辺治氏が主張してきたことと同様の感
じもするのですが、この本が大きな反響を呼んでいることに注目すべきことは間違い
ありません。



*ジグムント・バウマン著、高橋良輔ほか訳『《非常事態》を生きる』作品社

 

 バウマンは、ポーランド出身の社会学者です。2008年のリーマンショックの後、
2010年に出版。この本の特徴は、グローバリゼーションを単なる経済現象ととらえる
のでなく、広範な社会現象としてとらえて分析していることです。モダニティ、ポス
トモダニティ、人口、性、宗教、遺伝、愛情の将来までが論じられています。もう一
つのこの本のメリットは、欧米の学界やマスコミの議論の現状がよく分かることで
す。たとえば、構造主義の議論が下火になった状況がよく分かります。



*エマニュエル・トッド、ハジュン・チャン、

柴山桂太、中野剛志、藤井聡、堀茂樹著『グローバリズムが世界を滅ぼす』文春新書



 この本は、昨年12月の京都での国際シンポジウムを基にしたものです。あとがきで
「現時点において世界で最も包括的、かつ、最も思想的に深みのあるグローバリズム
についての議論となったのではないか」(243頁)と自賛の言が述べられています
が、それは誇大ではないと思います。この本が、打ち出している新しいテーゼは一杯
あります。たとえば、グロバリゼーション下では経済成長率が下がる、もともと脱グ
ローバリゼーションは保守が主張してきたことだ、グローバリゼーションの下ではエ
リートの劣化が進んでいるetc.

 トッドはヨーロッパの現状につき、「一つの覇権大国[ドイツのことです。河内]を
いただく不平等な連合体になろうとしています」と評価しています。トッドはリアリ
ストだと思いました。



*三橋貴明・渡邉哲也『仁義なき世界経済の不都合な真実』ビジネス社



 著者の二人は、今売出し中の保守派の若手論客です。この二人は「現在の世界はグ
ローバリズムからナショナリズムへの転換期」にある(はじめに)、「いま問題なの
は国民国家の復活だ」(40頁)という問題意識で共通しています。個々の分析は玉石
混淆ですが、この問題意識は、先のトッドらの問題意識とも共通しており、私は支持
できるものと考えます。

 私見によれば、かつて、グローバリゼーションに反対して、「真のグローバリゼー
ションを!」とか「もう一つのグローバリゼーションを!」とか言われたことがあり
ましたが、「ナショナリズムの復活・連携によるグローバリゼーションの克服を!」
と考えるべきなったのではないでしょうか。それゆえ、それは誤りだったと思うので
す。



*ロバ−ト・N・ベラー、島薗進、奥村隆『宗教とグローバル市民社会 ロバート・
ベラーとの対話』岩波書店



 ロバート・N・ベラーは、日本においても

『徳川時代の宗教』(岩波書店)、『心の習慣ー

アメリカ個人主義のゆくえ』(みすず書房)などで知られる、著名な宗教社会学者で
す。ベラーが2012年秋に来日したときの講演とシンポジウムを基に本書が編集されて
います。

 ベラーは「日本がこの二大国とも深く、まったく別種の結びつきを持っているとい
う事実は、どの客観的指標でみても日本が中国・アメリカ両国より優れた社会である
という事実とあいまって、東アジアの権力関係の改善を積極的に構築するために、そ
してなによりも世界全体にとって脅威になりかねないアメリカと中国の衝突を阻止す
るために、日本がリーダーシップを果たしうることを意味する」(|y頁)という立場
を堅持しています。

 また、彼は、社会倫理・宗教的な動機の重要性を一貫して強調し、「もし私たちが
その育ちつつあるグローバルな道徳的同意と世界法の重要な創出をグローバルな連帯
とグローバルな統治の効果的な形式に転換しようとするならば、そこに宗教的な動機
が必要な要素であることを私は確信している」(同書25頁)と述べています。



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                 以上 











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