[CML 031062] profound mistakeを「非常に好ましくない過ち」と訳すことがそんなに非難に値することなのか? ―― 乗松聡子さん(「PeacePhilosophy」主宰者)の思いこみの激しい「御用通訳」批判

higashimoto takashi higashimoto.takashi at khaki.plala.or.jp
2014年 4月 29日 (火) 16:25:55 JST


「尖閣問題をエスカレートするのは profound mistake「深刻な過ち」とオバマが安倍に釘をさした言葉を、日本のメディアの多くは重視せず、『正しくない』『非常に好ましくない過ち』と誤訳したりしてごまかしている」、と「PeacePhilosophy」ブログを主宰する乗松聡子さんが政府とメディアの「御用通訳」ぶりを自身のブログで批判しています。

■尖閣問題をエスカレートするのは profound mistake「深刻な過ち」とオバマが安倍に釘をさした言葉を,日本のメディアの多くは重視せず、「正しくない」と誤訳したりしてごまかしている。(Peace Philosophy Centre 
Friday, April 25, 2014)
http://peacephilosophy.blogspot.jp/2014/04/profound-mistake.html

■Profound mistake を「正しくない」と訳しますか??? 日本のメディアはねつ造に近い 訂正してください(Peace Philosophy Centre Saturday, April 26, 2014)
http://peacephilosophy.blogspot.jp/2014/04/profound-mistake_26.html

■【御用通訳に注意】オバマ発言誤訳は日米共同記者会見の同時通訳によるものだった。官邸HPの動画でも誤訳。(Peace Philosophy Centre Monday, April 28, 2014)
http://peacephilosophy.blogspot.jp/2014/04/blog-post_28.html

しかし、私は、profound mistakeを「正しくない」「非常に好ましくない過ち」と訳したことがそれほどまでに非難されなければならないほどのプロファウンド・ミステークといえるのか、と逆に疑問に思います。profound mistakeはたしかに 
直訳すれば「深い(激しい)誤り(過ち)」ということになりますから「正しくない」という訳では「深い(激しい)」という感じは出ません。それでも、私は、「ごまかしている」とまで言ってしまうのは論理的な評価というよりも情緒過多の過小評価にすぎるように思います。私たちが人を理解しようとするとき、言葉だけに依拠するわけではありません。その人の表情やしぐさもその人、その人の意を理解するための重要な要素です。その場のシチュエーションということもあるでしょう。そうしたもろもろの要素を通じて私たちは人というもの、人の意というものを全感覚的(それは「論理的に」ということをも意味します)に確かめようとするのです。

だから、この場合もprofound mistakeの「正しくない」という同時通訳が不適切であったとしても、明らかな「誤訳」ではない限り、人はその言葉の意味を全体として理解することはできます。むしろ、この場合は訳語の問題というよりも、「profound 
mistake」という言葉のある文脈でオバマ大統領が尖閣諸島問題をことさらにいま騒ぎ立てようとすることは「正しくない」と「釘をさした」諫言の言葉を安倍首相がスルーしようとした姿勢そのものにあると見るべきものでしょう。乗松聡子さんはことの本質を見違えている、と私は思います。

また、「正しくない」という適切とは思えない訳語についてさえ上記のことは言えるのですから、政府の公式の同時通訳が訳した「非常に好ましくない過ち」という訳まで「わざわざ『好ましくない』といった抑えた表現に変え」ている、「御用通訳」などと批判するのは難癖のための難癖というほかない所為というべきだろう、と私などは思います。この問題はそれぞれの訳者の訳し方の問題であって、そこに訳し方の問題に関して本質的な差異(過ち)があるようには私には見えません。

私はここに思い入れの激しい人の過誤を見るような思いがします。乗松聡子さんは以前にもオリバー・ストーンが原水禁世界大会2013広島講演の際に「最近オバマ大統領の沖縄政策に反対してオバマにやめさせられた人」と暗に民主党元代表の鳩山由紀夫氏を評価して語った講演録を無批判に拡散するということがありました。鳩山氏が「やめさせられた」理由はアメリカという「外圧」もあったかもしれませんが、本質的な理由は「外圧」というものではなく、「『最低でも県外』と首相自ら公約しながら県民の心を8カ月間ももてあそび、『辺野古現行案』に回帰するという公約違反の裏切り行為」(琉球新報社説 2010年6月1日)があったからと見るべきものであった、にも関 
わらずです(弊ブログ2013.08.11付記事参照)。また、自身が自身のブログで沖縄への連帯と共感の思いを強く表明している、にも関わらずです。
http://mizukith.blog91.fc2.com/blog-entry-637.html

しかし、思い入れの激しい人の思いはやはり思い入れの激しい人には相通じるものがあるようです。北海道深川病院の松崎道幸医師(私はこの松崎医師の放射能問題に対する認識についても批判をしています。弊ブログ2013.02.18付記事参照 )は私か 
ら見て「難癖のための難癖」としか見えない乗松さんの「御用通訳」批判にさまざまなメディアの「重大な間違い」(週刊東洋経済)、「大きな過ち」(レコードチャイナ)、「正しくない」(フジテレビ、TBS、時事通信)などという訳語の例証を十把一絡げにあげて「テレビ系・通信社系も同じ穴のむじなと言うところです」と共感を表明しています。この松崎医師の言語感覚も相当なものだと言わなければならないように私は思います。
http://mizukith.blog91.fc2.com/blog-entry-526.html

ところで、日本報道検証機構(GOHOO)がこの乗松聡子さんのprofound mistakeの政府、メディアの訳語への疑問の提起を紹介している琉球新報の記事は逆に「誤報」であるという「注意報」を出しています。以下です。ご参照ください(乗松聡子さんのこの問題についての記事は上記の3本のURLでご確認ください)。

■オバマ”正しくない”発言 「政府が同時通訳」は誤報(日本報道検証機構(GOHOO) 
2014年4月28日)
http://gohoo.org/alerts/140428/

▼オバマ大統領が尖閣問題のエスカレートを看過し続けると「重大な誤り」と指摘したのを政府の同時通訳が「正しくない」と訳し、
メディアがそのまま報じたと琉球新報が指摘。しかし、政府の同時通訳は「非常に好ましくない過ち」と訳していた。

《注意報1》2014/4/28 19:00

琉球新報は4月27日付朝刊で、「オバマ氏発言で『誤訳』が独り歩き 日本のメディア」との見出しで、24日の日米首脳の共同記者
会見でオバマ大統領が、尖閣諸島問題について「事態をエスカレートさせるのは『重大な誤りだ』」と語った部分について、多くの
日本メディアが「正しくない」と訳していたため「誤訳」と指摘されていると報じた。その際、政府の公式の同時通訳が「正しくない」
と訳し、メディアがそのまま報じたと指摘。しかし、実際は、政府の同時通訳は「非常に好ましくない過ち」と訳していた。NHKの生
中継では「正しくない」と訳して放送されていた。

オバマ大統領は会見で、日中間の尖閣問題に関する記者の質問に答える形で、「私は直接、安倍首相に、日中間で対話や信頼
醸成措置を築かないまま、この問題の事態がエスカレートしていくのを看過し続けると深刻な過ちになると伝えた」と発言(訳は日
本報道検証機構。英語の発言は後記引用参照)。この発言の「深刻な過ち」(a 
profound mistake)の部分について、「正しくない」
と訳して報じたメディア(産経新聞など)と「大きな過ち」と訳したメディア(朝日新聞など)に分かれていた(コラム=米大統領尖閣
発言 訳語の食違いは許容範囲?参照)。
http://gohoo.org/column/140426/

      ■オバマ氏発言で『誤訳』が独り歩き 日本のメディア (琉球新報 
2014/4/27)
      http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-224391-storytopic-3.html

27日付琉球新報は、多くのメディアが、政府側の同時通訳が「正しくない」と訳したのを通訳機を通じて確認し、そのまま報じたと
説明。しかし、政府が公開した日米共同会見の動画では、オバマ大統領が発した”a 
profound mistake”を、男性の同時通訳が
「非常に好ましくない過ち」と訳していた。内閣府の担当者によると、この動画は外務省が手配した同時通訳が録音されたもので、
安倍首相ら政府関係者や会見に出席していた記者も、通訳機を通じて聞いていた。

他方、この日米共同会見はNHKが生中継で放送していたが、NHKの女性の同時通訳がオバマ大統領の問題の発言を「正しくな
い」と訳していた。多くのメディアが「正しくない」と報じたのは、NHKの同時通訳をそのまま使った可能性がある。

また、琉球新報の記事は、同紙が配信を受けている共同通信も「正しくない」との訳で報じたと伝えた。当機構が共同通信に問い
合わせたところ、24日の会見直後の第一報では「正しくない」と訳して配信したものの、24日夜の配信記事では「大きな過ち」と訳
していたと回答。実際、共同通信が25日午前にネット上で掲載した会見要旨は「大きな過ち」と訳されていたが、琉球新報は26日
付記事でも「正しくない」と訳して報じていた。

琉球新報は、当機構の取材に対し、当初「記事には自信を持っており、事実誤認はない」と答えていたが、その後「事実関係は
調査中」とコメントしている。

■オバマ大統領の共同記者会見の発言(一部抜粋) (米ホワイトハウス 
 2014/4/24)
http://www.whitehouse.gov/the-press-office/2014/04/24/joint-press-conference-president-obama-and-prime-minister-abe-japan

… at the same time, as I’ve said directly to the Prime Minister that it 
would be a profound mistake to continue to see escalation around this issue 
rather than dialogue and confidence-building measures between Japan and 
China.  And we’re going to do everything we can to encourage that 
diplomatically.

■日米共同記者会見の同時通訳(政府インターネットテレビ) (首相官邸 
2014/4/24)※動画23:25ごろから
http://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/statement/2014/0424kaiken.html
http://nettv.gov-online.go.jp/prg/prg9734.html

…同時に総理に言いました。引き続きエスカレーションになってしまうということは、非常に好ましくない過ちになるということ。日中の間で対話や信頼醸成措置を形成すべきだと。我々としてもこれを外交的に奨励したいと思います。…

■日米共同記者会見の同時通訳 (NHK 2014/4/24)

…同時に安倍総理に申し上げましたが、この問題について事態がエスカレートし続けるのは正しくないということです。日本と中国は信頼醸成措置をとるべきでしょう。そしてできるだけのことを外交的に私たちも協力していきたいと思います。…

■共同通信4月25日付「尖閣関連発言要旨」(一部抜粋)
http://www.47news.jp/47topics/e/252934.php

日中が対話や信頼醸成をせず事態がエスカレートするのは、大きな過ちだと安倍首相に伝えた。私たちも外交的にあらゆる協力をする。


東本高志@大分
higashimoto.takashi at khaki.plala.or.jp
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