[CML 030813] ウクライナ、クリミア情勢の見方(18)――浅井基文さんの「ロシアの『拡張主義』-ウクライナ問題における争点④-」

higashimoto takashi higashimoto.takashi at khaki.plala.or.jp
2014年 4月 14日 (月) 14:25:46 JST


浅井基文さん(元外交官、政治学者)の「ロシアの「拡張主義」 -ウクライナ問題における争点④-」。浅井さんは今回は「プーチン
・ロシアの大国主義・拡張主義」問題の背景にある「自国の安全を守るにはあまりにも不利な地勢的条件がロシアをして拡張主義に
駆り立ててきた」というロシア固有の事情に焦点を当てて、「ロシアをして身構えざるを得なくするような意図・言動を外部が厳に慎め
ば、ロシアとしても拡張主義に走る必要はなくなる」ことについて、また、「西側特にアメリカに今何よりも求められるのは、ロシアに対
して他者感覚を働かせること」の重要性について、中国の論者の主張を紹介する形で主張されています。元外交官としての浅井さん
の着目点の公平の観点からの「現実」性には学ぶべきものがあるように思います。

■ロシアの「拡張主義」 -ウクライナ問題における争点④-(浅井基文 
 2014.04.14)
http://www.ne.jp/asahi/nd4m-asi/jiwen/thoughts/2014/597.html

ロシアのラブロフ外相は4月11日にロシアのテレビ局のインタビューに答えて、ロシアはウクライナ東南部地域を併合する意図はない、
なぜならば、そうすることはロシアの根本的な利益に背くからだ、同地域をロシアに編入する計画はないし、そのような考えはあり得
ない、ロシアとしては、ウクライナが各地域の状況を尊重するもとで国家の統一性を保つことを希望するし、連邦制がウクライナの直
面する困難な状況を解決すると考える、ウクライナ現政権は国家に対して負っている責任を認識し、すべての地域と対話を行うよう
にするべきだ、と発言したそうです(4月12日付新華社電)。

ロシアのクリミア併合に対しては、ロシアの拡張主義の証拠だとする見方が多いし、そういう見方からすると、ロシアはさらにウクライ
ナ東南部をも併合する野心があるのではないかという警戒感も出て来ます。上記ラブロフ発言はそういう警戒感を踏まえた上で、ロ
シアにはそういう野心はあり得ないことを強調したものと受けとめられます。

私は3月27日と29日のコラムで、「プーチン・ロシアの大国主義・拡張主義」問題について、アメリカと中国の専門家の否定的な見方を
紹介しました。

中国国内では、ロシアの拡張主義については様々な角度からの分析が行われています。私が興味深く読んだのは、ロシア拡張主義
傾向を地縁政治の角度から解説した、何帆署名「ロシアはどのように錬成したのか」という文章です。

ロシアの拡張主義を地縁政治の角度から分析する文章は、米日を含めて珍しくありませんが、中国でも地縁政治の角度から国際政
治を分析するのは今や主流です。何帆文章もその典型です。しかし、何帆文章について私がそれなりに納得したのは、「ロシアには
天性の対外拡張性があり、その対外拡張の根底にあるのは根っからの安全欠如の感覚である」という認識が全篇を通じて貫かれて
いることです。私流に言えば、自国の安全を守るにはあまりにも不利な地勢的条件がロシアをして拡張主義に駆り立ててきた、という
ことです。

この点を正確に理解すれば、ロシアをして身構えざるを得なくするような意図・言動を外部が厳に慎めば、ロシアとしても拡張主義に
走る必要はなくなるということでしょう。今日的に言えば、ソ連崩壊後のNATOの東方拡大ほど愚かな政策はないということです。ウクラ
イナ問題の最大の一つは正にウクライナの対西側傾斜特にNATO加盟にあるわけですから、ロシアが身構えるのはあまりにも当然な
ことです。西側特にアメリカに今何よりも求められるのは、ロシアに対して他者感覚を働かせることです。

ここでは、もう一つ、丁暁星署名の「ロシアのウクライナに対する食欲を西側は誇張している」という文章も紹介しておきます。これは
地政学的な立場を押し出したものではありません。しかし、ロシアがウクライナ東部を第2のクリミアにする意図はないとする丁暁星の
指摘は私には説得力があるものでした。

もう一つこの機会につけ加えるならば、ロシアの場合は地政学的劣勢を補うための「防衛的拡張主義」であるのに対して、アメリカの
場合は、太平洋・大西洋という天然の防壁で守られて地政学的弱点がないのにしゃしゃり出ずにはすまないということですから、これ
こそ正真正銘の「攻撃的拡張主義」と呼ぶべきものでしょう。拡張主義というレッテルはアメリカにこそふさわしいものだと思います。

また、日本では中国の拡張主義を言うのが当たり前になっています(特に2010年以来の尖閣問題をめぐって)。私自身、「世界第2位
の経済大国にふさわしい国防力を持つのは当然」とする中国側公式見解には強い違和感を覚えます。しかし、中国が身構えるのは
アメリカ主導の軍事網(その中心が日米同盟)が中国を威圧しているからであることは間違いないことです。原因(日米軍事同盟の脅
威)を無視して、それに身構える中国(国防力増強努力)を拡張主義とレッテル貼りをするのは、他者感覚の欠落した「天動説」国際
観の米日だからこその芸当だと思うのですがどうでしょうか。

以下は下記をご参照ください。

■ウクライナ、クリミア情勢の見方(18)――浅井基文さんの「ロシアの『拡張主義』-ウクライナ問題における争点④-」
(弊ブログ 2014.04.14)
http://mizukith.blog91.fc2.com/blog-entry-847.html


東本高志@大分
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http://mizukith.blog91.fc2.com/ 



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