[CML 030753] 昔の国際法学者 Re: 小松一郎という人(内閣法制局長官)をやんわりと批判する毎日新聞

Maeda Akira maeda at zokei.ac.jp
2014年 4月 11日 (金) 10:58:45 JST


前田 朗です。
4月11日

東本さん

記事紹介ありがとうございます。

背景事情が分かるとよいと思い、勝手な補足をさせていただきます。

昔の国際法学は、はっきり言って御用学問でした。学者は政府と同じ意見、ある
いは学者は外務省の顧問。

他の法律学――憲法学、刑法学、労働法学などでは、政府と同じ立場もいれば、違
う立場もたくさんいました。むしろ、違うのが当たり前。憲法9 条を見ればわ
かるように、まともな学者はみな政府見解を批判してきました。

しかし、国際法学は違ったのです。もちろん、細かな点ではいろんな見解が存在
しましたが、基本部分は御用法学です。

理由は簡単です。外務省から資料をもらわないと論文を書けなかったからです。
学者は外交秘密に触れることができません。条約交渉過程も外務官 僚から資料
をもらう必要があります。学界に通用する論文を書くためには、外務省と仲良し
でなくてはならないのです。

今はまったく状況が変わりました。第1に、学者は自分で世界に出かけ、国連に
出かけ、EU本部に出かけて行きます。第2に、インターネットの 普及により
重要文書がかなり入手できるようになりました。極秘文書は別ですが。第3に、
国際人権法分野では、政府だけでなく、NGOが主要な アクターになってきま
した。

このため、今はいろいろな立場の国際法学者がいます。

余談。

私は国際法学者ではありませんが、20年間、国連人権委員会や人権理事会に
通って活動してきました。1994年8月、初めて国連人権小委員会 (人権委
員会差別防止少数者保護小委員会)に行って、NGOとして朝鮮人差別の事件を
訴える発言をした時、会議室隣の喫茶店で、日本外務省書 記官から「前田さ
ん、日本の恥を外に出すのはやめませんか」と言われました。「恥だと思うのな
ら、事件を防止するようになんとかしろよ」と口 げんかになりました(笑)。

> 「集団的自衛権の行使容認に道を開くため、安倍首相が『禁じ手』の手法で法
> 制局以外から異例の形で長官に起用した」 (沖縄タイムス社説、2014年3月16
> 日)元外務官僚(駐仏大使)の小松一郎内閣法制局長官について毎日新聞の
> 『発信箱』に「課長からの手 紙」という興味深い記事が掲載されていました
> (2014年04月10日)。小松一郎という人のひととなりを彷彿とさせる記事で
> す。先日、私 は、毎日新聞『風知草』筆者(編集委員)の山田孝男記者を批
> 判する記事を書いたばかりですが、毎日新聞にも人あり、いや、記者ありとい
> うこと でしょうか。見る目が確かですし、文章力も冴えています。ご紹介さ
> せていただきたいと思います。奇しくも今日は「国民投票『改正』案」審議入
> りの日でした(辺見庸「日録12」2014/04/09付参照)。
> http://www.asaho.com/jpn/bkno/2014/0407.html
> http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=64853
> http://yo-hemmi.net/article/393668685.html
>
> ■発信箱:課長からの手紙=木戸哲(毎日新聞 2014年04月10日)
> http://mainichi.jp/shimen/news/20140410ddm005070049000c.html
>
> もう二十数年前のことだ。私立大で国際法を研究していた教授の元に、一通の
> 手紙が届いた。差出人は外務省で国際法の解釈を担当する部署の課 長。教授
> が書いた論文の内容は我が国の立場と異なる、と記されていた。
>
> 自分は国のために論文を書いたわけではない。在野の研究者が政府と違う見解
> を持つのは当たり前だ。それなのに、外務省の官僚が、ああしろこう しろと
> 言ってくるのはおかしくないか。教授は反論をまとめて返事を書いた。やりと
> りはそれで終わったが、上から国の考えに従えと押しつけられ た気がして、
> 後味が悪かった。
>
> 課長はその後、順調に出世の階段を上り、省を代表する「国際法の権威」と
> なった。昨年夏には内閣法制局長官に抜てきされる。集団的自衛権の行 使容
> 認を目指す安倍内閣で、法制局勤務経験がないまま長官を務めている小松一郎
> 氏のことだ。
>
> 国内外に向けて政府の立場を説明するのは外務官僚の大事な仕事だろう。歴代
> 担当課長の中で、教授にそんな手紙を送ってきたのは小松氏だけとい うか
> ら、誰より熱心に職務に励んでいたに違いない。初めて課長というポストに就
> き、力が入り過ぎた面もあったのだろうか。学問の自由は憲法で 保障された
> 国民の権利だ。いくらなんでも、それをないがしろにする独自の憲法解釈に基
> づいて手紙を書いたわけではないはずだ。
>
> 政府の解釈を見直すだけで、実質的に憲法9条を改正することが許されるの
> か。法制局長官は、その議論の中心にいる。自分の考えを振りかざさ ず、慎
> 重に、謙虚に検討してもらいたい。釈迦(しゃか)に説法だろうけど、それが
> 「法の番人」にふさわしい姿だと思う。(社会部)
>
> 参考:
> ■私たちはいま政治の貧困を目撃している=与野党7党が国民投票法改正案を
> 衆院に共同提出の愚(Daily JCJ 小鷲順造 2014年04月09日)
> http://jcj-daily.seesaa.net/article/394215484.html
>
>
> 東本高志@大分
> higashimoto.takashi at khaki.plala.or.jp
> http://mizukith.blog91.fc2.com/



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