[CML 026617] 松元保昭さんの「『反テロ世界戦争』はどうなったのか? シリアで『アルカイダのために戦う』米国」という翻訳記事に対する疑問の提起

higashimoto takashi higashimoto.takashi at khaki.plala.or.jp
2013年 9月 18日 (水) 11:28:55 JST


以下は、松元保昭さん(パレスチナ連帯・札幌代表)が9月16日付けでいくつかのメーリングリストに発信した「『反テロ世界戦争』は
どうなったのか? シリアで『アルカイダのために戦う』米国」(ミシェル・チョスドフスキィ、松元保昭訳)という翻訳転載記事に対する
疑問を提起した拙記事です。

松元さんの上記の翻訳転載記事は以下で読むことができます。
http://bit.ly/1bq5k7x

なお、以下の拙記事は、以前の松元保昭さんと泥憲和さんの議論を前提に稿されています。両者の以前の議論は下記の弊ブログ
記事をご参照ください。
http://mizukith.blog91.fc2.com/blog-entry-657.html

なおまた、以下は、公開型メーリングリストの議論を含む議論ですからそのまま実名をあげています。


松元さん

メーリングリストへのご投稿ですから私からもひとこと。

松元さんが今回も翻訳転載されているミシェル・チョスドフスキィ氏の論は泥さんが先の9月6日付けの論「Re: 米国とその同盟軍
の軍艦がシリア沖に: 海軍の配備は8月21日の化学兵器攻撃の「以前に」決められた」で、「わずかでもシリア情勢に関心があり、
多少の記憶力があるなら、こんな分析に同意できるはずがありません」と一蹴されていた人の論です。

泥さんはその一蹴の理由を「米国防総省がシリアへの軍事介入に向けた態勢整備を強化していることをCNNにリークしたのは4月
でした。/この頃にはすでに海軍の艦艇配備計画は完成していたと思われます。/こうした経緯があるのだから、8月21日より以
前に艦隊が動いていたのはあまりに当然です」と述べていました。さらに「こんなことを陰謀めいた話に仕立てる人がいるとは思い
もしませんでした。/またそれを簡単に信じる人がいるとも思いませんでした。(略)私たちは変なプロパガンダやおかしな情報に惑
わされないリテラシーを身につけたいものだと思います」とも述べていました。

その泥さんの「反論」への松元さんの返信(再反論 9月9日付)は「泥さんは、『政府軍の仕業であるという状況証拠はたっぷりある」
という前提で、『米国の分析には異論がない』という結論のようですが、私には『政府軍の仕業であるという証拠』は、まだ手にして
いません」というものでした。

泥さんの反論の主題は、シリア沖への「海軍の配備は8月21日の化学兵器攻撃「以前に」決められ」ていたのはシリア情勢の経緯
から見て「あまりに当然で」あり、「こんなことを陰謀めいた話に仕立てる人がいるとは思いもしませんでした」というものでした。その
泥さんの反論の主題、すなわち問題提起を松元さんは完全にスルーして、「(化学兵器攻撃が)私には『政府軍の仕業であるという
証拠』は、まだ手にしていません」というピントはずれの話に論点をすり替えた上でその話を延々と続けます。泥さんの反論(問題提
起)への再反論になっていない「再反論」もどきのものでしかなかったことはいうまでもありません。すなわち、松元さんは、泥さんの
反論に有効に再反論を提起することのできなかった人、すなわちチョスドフスキィ氏の論を再度持ち出して「『反テロ世界戦争』 とい
う戦争ドクトリンの崩壊を論証している画期的な内容になっています」などとして大風呂敷の店を再度繰り出しているということになる
のです。そうした態度と姿勢に(意図的なものではないのでしょうが)失礼ながら私は「理性」を見出すことはできません。

さて、今回のチョスドフスキィ氏の論についても同氏が主張する肝心要の論の2点についてその論の問題点を指摘しておきます。

チョスドフスキィ氏はいまシリアで起きている(1)「民間住民に向けられた殺害と残虐行為」「首切り」「子どもの処刑」「ほとんどがぞ
っとするような大虐殺」は「これらの犯罪は、十分に文書で証明済みである」として「シリアのアルカイダ・テロリストたち(すなわち、
反政府勢力)」のしわざとして断定しています(「テロリスト支援」の項)。(2)また、化学兵器の使用に関しても「CNNによれば、西側
の特殊部隊に訓練されてきた」として反乱軍(すなわち、反政府軍)のしわざであるとして断定しています(同左)。

しかし、上記のチョスドフスキィ氏の(1)の断定は「大部分は政府軍と準軍隊の人道犯罪」とする国連総会人権理事会が13日に公
表した独立調査委員会の報告書( United Nations A/HRC/24/46)の報告と相違します。この報告書を読みこんだ龍谷大学名誉教授
(元共同通信ベイルート特派員)の坂井定雄さんはこの報告書について「同委員会が今年4-6月にシリアで起こった人権侵害を、
上記3国でおもにシリア難民258人から直接聞き取ったのをはじめ、他の証拠を収集して検討、まとめた。本文と付属資料計41
ページ。シリア政府側と反政府側双方に分けて、一般市民の大量虐殺、拷問、レイプ、追い出しなどの人権侵害を列挙しているが、
圧倒的に政府軍とその雇われ民兵によるケースが占めている」と整理、報告しています。その国連総会人権理事会の報告とチョス
ドフスキィ氏の断定はまったく異なります。私は国連総会人権理事会の方が真実であろう、と思います。
http://lib21.blog96.fc2.com/blog-entry-2520.html

また、チョスドフスキィ氏の(2)の断定、すなわち化学兵器の使用の問題に関しても、昨日の16日にシリアの化学兵器使用疑惑に
ついての国連調査団の報告書が公表されましたが、この報告書の見解とも異なるように見えます。本日9月17日付けの朝日新聞
は「報告書は一方で、アサド政権、反体制派のどちらが化学兵器を使ったかは特定していない。ただ、西側外交官は『報告書は使
用者の特定に踏み込んでいないが、政権軍の使用を示唆する十分な状況証拠を提示している』と話した」という記事を掲載してい
ます。
http://digital.asahi.com/articles/TKY201309160513.html?ref=comkiji_txt_end_s_kjid_TKY201309160513

また、アラブ諸国に精通する元外交官の野口雅昭氏もこの問題について「シリア情勢については、化学兵器に関する国連調査団
の報告等が詳しく報じられています(略)国連のレポートについては、サリンが使用されたのは間違いなく、サリンは化学兵器用の
砲弾でミサイル発射され、ダマスの北西から飛来した、という事実関係を報告していて、誰が使用したかは特定していないとのこと
ですが、これだけでも政府軍が使用したことを示していると思います」という見解を示しています(「シリア情勢(16日)」)。
http://blogos.com/article/70153/

とりあえず以上の2点についてのみチョスドフスキィ氏の論の問題点を指摘しておきました。チョスドフスキィ氏の論はやはり信憑性
に欠けるというのが私の判断です。


東本高志@大分
higashimoto.takashi at khaki.plala.or.jp
http://mizukith.blog91.fc2.com/



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