[CML 026591] ゆとりの乱とアラブの春の落差

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2013年 9月 16日 (月) 23:15:25 JST


2013年の日本では「ゆとりの乱」(バイトテロ)が話題になっている。アルバイトが冷凍庫に入る、売り物の食品で遊ぶ姿を写した悪ふざけ写真のネット投稿が相次いでいる。たとえば東急ストアのアルバイトは店内でグレープフルーツやリンゴを口にくわえた写真をTwitter(ツイッター)に投稿した(林田力『東急ストアTwitter炎上』「東急ストアTwitter不適切投稿」)。 

悪ふざけ写真投稿に対しては、非常識な若者が原因という論調が圧倒的で、店舗を被害者と位置付ける風潮まである。しかし、ブラック企業・非正規労働者搾取体質への無意識的な反発が悪ふざけ写真投稿に駆り立てたと見ることもできる(林田力『東急ストアTwitter炎上』「東急ストアTwitter炎上とブラック企業」)。 

それは行為者が解雇や損害賠償請求など大きなペナルティを受けているにもかかわらず、悪ふざけ写真投稿が相次いでいることの説明になる。労働者を使い捨てにする社会への抗議の意思表示の一つの形である。「ゆとりの乱」「バイトテロ」というネーミングにも妙味がある。 

「アラブの春」ではSNSを活用したデモによって独裁政権を打倒した。トルコの反政府デモもSNSで拡大し、それによってオリンピック招致活動に打撃を与えた。それに比べると日本の「ゆとりの乱」は幼稚である。いくら「ゆとりの乱」が拡大したとしても社会を良い方向に変えられるとは思えない。 

しかし、「ゆとりの乱」を、ゆとり世代の幼稚性と笑うことはできない。日本社会の歴史的な幼稚性である。日本では幕末にも封建社会の行き詰まりに対して自然発生的な民衆運動が起きた。「ええじゃないか」である。しかし、「ええじゃないか」は踊って浮かれ騒ぐだけでエネルギーを発散してしまった。その結果が徳川幕府から薩長藩閥に権力が移行しただけの明治維新であった(林田力「住宅政策の貧困を訴える住まいは人権デー 市民集会=東京・渋谷」 PJニュース2011年6月15日)。 

現代の脱原発運動も大勢の人を集めることに成功したが、「ええじゃないか」的なエネルギー発散で終わってしまう懸念がある。2012年12月総選挙や2013年7月参議院選挙への失望もあり、市民運動の世界では予示的政治というアナーキーな考え方への支持が広がっている。 

予示的政治の思想史的意義は十分に理解できる。共産主義イデオロギーが目指す共産主義社会は千年王国待望論のように映り、社会変革を志向する市民運動家への魅力が乏しくなっている。また、タハリール広場で予示的政治を語ることの有効性を否定するつもりもない。しかし、日本で予示的政治を実践する場合、特殊日本的風土から「ええじゃないか」化の危険を常に警戒すべきである。
http://hayariki.net/futako/29.htm
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林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』
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