[CML 026546] ジブリの「反戦」 鈴木敏夫プロデューサー

BARA harumi-s at mars.dti.ne.jp
2013年 9月 14日 (土) 19:18:17 JST


新聞記事・
朝日新聞・
9月14日
http://digital.asahi.com/articles/OSK201309130182.html
ジブリの「反戦」 
鈴木敏夫さん
(考 民主主義はいま)

今月6日、東京都内のホテル。引退会見を開いたアニメ映画の宮崎駿監督(72)の
隣に、スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサー(65)が並んだ。

 国内外から幅広く支持されるアニメを世に送り続けてきた。
宮崎監督の最後の長編「風立ちぬ」も11日までに810万人を動員。
旧日本海軍の戦闘機・零戦の設計者がモデルの作品は、鈴木氏から宮崎監督に
「作ろう」と持ちかけた。
「『反戦』を再認識するのがいいと思った」

 鈴木氏はこの夏を「驚きがあった」と振り返る。
憲法を変えて国防軍の創設を目指す自民党が参院選で大勝し、安倍晋三政権は
集団的自衛権の行使容認に踏み出そうとしている。

 「戦争に反対するのは当たり前だと思っていた。
でも、どうも現実はそうじゃなくなっている」

 ヒットメーカーの目に時代はどう映っているのか。

「風立ちぬ」批判 衝撃と満足

 大きな驚きがあった夏だった。
「戦争を二度と起こさない」は絶対的な常識だと思っていた。
敗戦から68年。それが揺らいでいると知り、衝撃を受けた。
原発が危険だということが常識だったのに、いつの間にか安全神話が生まれた
のと似ています。

 7月の参院選で、改憲を掲げた自民党が大勝した。
安倍晋三首相は集団的自衛権行使容認の憲法解釈変更に意欲を見せる。

 宮さん(宮崎駿監督)も僕も話す時に紙にいたずら描きをする癖がある。
1941(昭和16)年生まれの宮さんが描くのは戦闘機ばかり。
戦闘機が大好きなんです。
ところが戦争は大っ嫌い。
矛盾ですよね。
だけど、それは彼だけでなく、戦後の日本人全体の矛盾じゃないかと思っていた。

 宮さんは模型雑誌に「風立ちぬ」の原作を描いた。
3年前の夏、「あれを(映画で)やろう」と言ったら、「鈴木さん、どうかしてる」と 

怒り出して。
自分の中で結論が出ていないことを映画にできないと思ったんでしょう。

 でも数カ月後に「考えてみる」と。
その年の暮れ、友情物語と恋愛物語の二つの企画案を持ってきて「どっちが
いい?」と聞かれたから、「両方混ぜてはどうですか」と答えたら、10日後に混ぜた 

案が出てきた。

 宮崎監督は5年ぶりの新作「風立ちぬ」を完成させ、引退を表明した。
軍靴の音が高まる時代、夢を追って精いっぱい生きる主人公の姿が印象的だ。

 国がある方向へ向かっている時、人はその流れに身を任せながら、目の
前のことに対処して生きていく。
きっと今もそうでしょう。
そんな人間の一人を描くことに意味があった。
戦争反対を声高に叫ぶわけじゃない。
でも反戦映画になっている。
宮さんにそう言ったら、すごく喜んでいた。

 「今回は本気だなと感じざるを得なかった」。
宮崎監督の引退会見で、鈴木氏は6月に「引退」を聞いたと明かした。

 宮さんはファンタジーの世界で戦争を描いた。
「紅の豚」(92年)は反戦、「ハウルの動く城」(2004年)は厭戦です。

 「風立ちぬ」は歴史上の出来事を描いていますから、反戦の思い
がストレートに出ている。
賛同してくれた人は多かった。
でも実は、そうじゃない人もかなりいた。
ショックでした。

 戦争に反対することがこんなに常識じゃなくなっているとは
知らなかった。
だから、この映画を公開して本当によかった。

 僕のおやじは戦争に行った。
でも、戦争の体験や戦争に対する考えは全く話さなかった。
それが6年前に息を引き取る直前、突然こう言った。
「日本は中国で本当にひどいことをした。
そりゃあ、恨みは消えんわな」。
これが最期の言葉。
強烈だった。

 人間は一体何をやってるんだ。生きるって何なんだ。
そんなことを「風立ちぬ」は問いかける映画でもあるんです。

 高畑さん(高畑勲監督)の14年ぶりの新作「かぐや姫の物語」
(11月公開)は「竹取物語」が原作。
彼女が人生の節目で何を思ったのか。
なぜ彼女を地球にとどめられなかったのか。
高畑さんはそこを描きたかった。
これも人間は何をやっているのかを問いかける映画なんです。

 〈映画「風立ちぬ」〉 
関東大震災から世界恐慌、太平洋戦争へと突入する激動の時代、
主人公・堀越二郎は「美しい風のような飛行機をつくりたい」という夢をひたむきに
追う。
大学を卒業後、軍需企業の技師となり、試行錯誤の末に「ゼロ戦」の開発に
成功する。
震災のさなかに出会った菜穂子と再会して恋に落ちるが、菜穂子は結核に
侵されている――。
零戦を開発した堀越の半生と、同時代に生きた作家・堀辰雄の小説「風立ちぬ」
を融合。
スタジオジブリが初めて実在の人物をモデルにした長編。

■旗色鮮明 立派な憲法守る

 参院選公示6日後に発行した小冊子で憲法改正を特集し、話題を呼んだ。

 日本の方向性を決めることになるのに、一番問題なのは無関心。
だから参院選を前に旗色を鮮明にしようと。
ジブリの中でも賛同しない人はいたが、個人的には立派な憲法だと思う。
自分たちがつくった憲法かどうかなんて関係ない。
国防軍も明確に反対です。

 日本はかつて貧しくとも心豊かな国だったと思う。
コロッと変わったのは明治時代の富国強兵。
笑顔を消し、100年以上走り続けてきた。
戦争に負け、バブルが崩壊した。
軍事、経済で世界と戦おうという発想は、もうやめましょうよ。

 大事なのは、どうすれば幸せに暮らせるか。
政治家は国のビジョンをそこに置き、軍隊の問題もその中で考える
べきだと思う。

 政治は政権交代を経て、自民党の1強体制へ。
選挙のたびに民意は大きく揺れ動く。

 人間ってそんなもの。右に行ったり左に行ったり。
期待値が高いほど、失望も大きい。
西洋の詩人の名言にあります。
「英雄のいない時代は不幸だが、英雄を必要とする時代はもっと
不幸だ」と。

 今の政治が描く幻想も、いよいよ限界に近づいたと思ってるん
です。
みんなを何か一つのものにワッと集中させるのは20世紀のやり方。
21世紀は通じません。

 ただ、こうも思います。その限界の向こうに、たとえ貧しくても心
豊かな時代がきっとある、と。
僕は実に楽観的なんです。

 〈無料小冊子「熱風」〉 
毎月発行。
7月号で憲法改正を特集した。
宮崎駿監督は「憲法を変えるなどもってのほか」と題した談話記事を
寄せ、96条の先行改正を「詐欺」と批判した。
鈴木敏夫プロデューサーの「9条 世界に伝えよう」、高畑勲監督の「60年
の平和の大きさ」も掲載。
約5千部を配布した全国の書店で品切れが続出し、同社は一時ホーム
ページでも公開した。

------
 すずき・としお 
スタジオジブリ代表取締役プロデューサー。
1948年、名古屋市生まれ。72年に徳間書店に入り、アニメ雑誌の編集者に。
85年、スタジオジブリ設立に参加。
「もののけ姫」「千と千尋の神隠し」「崖の上のポニョ」など世界的大ヒット作を
プロデュースした。

■取材記者の視点 向かう先、冷静に想像

 一方通行の道を後ろ歩きで進んでいる。
向かう先は見えず、道を誤ったと思っても引き返せない。
いまの自分をそんな風に感じる。
ふと、時代を読む妙手の声が耳に届く。
いま岐路に立っている。
目に見える過去の道に学び、背後の道を誤るな、と――。

 戦後68年遠ざけてきたきな臭い時代の気配を背後に感じる。
政治家の言葉が高ぶる時こそ、冷静に、その言葉が導く先を想像したい。 



CML メーリングリストの案内