[CML 026389] 伊田広行さん(大学教員・ジェンダー論)の「婚外子差別違憲判決」感想と「スピリチュアリティ」に関するいくつかのメモ

higashimoto takashi higashimoto.takashi at khaki.plala.or.jp
2013年 9月 7日 (土) 17:45:18 JST


この9月4日、最高裁大法廷は、いわゆる「婚外子差別」問題(「嫡出でない子の相続分は嫡出子の2分の1とする」という民法
900条4号ただし書きの規定)について、「法の下の平等を保障した憲法に違反する」との違憲判決を出しました。明治時代か
ら115年間続いてきた民法の規定の見直しにつながる違憲判決ですから、どういう立場から見るにせよエポックを画する歴史
的な判決ということができるでしょう。そういうしだいで「婚外子差別」違憲判決について少しメモをしておきます(ただし、常套的
なメモ程度であればメディアの報道などを参照すればそれですむことですから、ここではふつうの報道や解説とは少し違う観点
からメモしておきます)。

同違憲判決の全文は下記の裁判所ホームページの「最高裁判所判例集」で見ることができます。
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20130904154932.pdf

が、全文は上記のサイトの頁数で20頁にもなる長文ですから、ここでは朝日新聞掲載の要約版でその内容を見てみることに
します。

      ■婚外子の相続分を定めた規定を違憲とした最高裁決定要旨(朝日新聞デジタル 2013年09月04日)
      http://digital.asahi.com/articles/TKY201309040381.html

  婚外子の遺産相続分を定めた民法の規定について、最高裁が4日に判断した決定の要旨は次の通り。

  1 相続制度を定めるにあたっては、国の伝統や社会事情、国民感情を考慮し、親子関係に対する規律や国民の意
       識を離れて定めることはできない。制度をどのように定めるかは立法府の合理的な裁量判断にゆだねられている。
       非嫡出(ちゃくしゅつ)子の相続分を嫡出子の2分の1とする区別が、裁量権を考慮しても合理的な根拠が認められ
       ない場合は、法の下の平等を定めた憲法14条1項に違反する。

  2 1995年の大法廷決定は、規定は非嫡出子に一定の相続分を認めて保護した面があり、遺言がない時に補充的
       に機能することも考慮して、憲法に反しないと判断した 。しかし1で示したことは時代と共に変遷するもので、規定の
       合理性は不断に検討されなければならない。

  3 47年の民法改正後、婚姻、家族の形態は著しく多様化し、国民の意識の多様化も大きく進んだ。現在、嫡出子と
       非嫡出子の相続分に差異を設けている国は、世界的にも限られた状況だ。国連の委員会は、差別的規定を問題に
       して、法改正の勧告等を繰り返してきた。

  4 わが国でも、住民票での世帯主との続柄の記載や、戸籍での父母との続柄の記載で、非嫡出子と嫡出子は同様
       の扱いとされた。法定相続分の平等化の問題もかなり早くから意識され、平等とする旨の法改正準備が進められた
       が、法案の国会提出には至らず、改正は実現していない。理由の一つには、法律婚を尊重する意識が幅広く浸透し
       てい ることがあると思われる。しかし規定の合理性は、個人の尊厳と法の下の平等を定める憲法に照らし、非嫡出
       子の権利が不当に侵害されているか否か、という観点から判断されるべき法的問題だ。

  5 当裁判所は、結論としては規定を合憲と判断してきたが、47年の民法改正当時の合理性が失われつつあるとの
       補足意見や個別意見が、最高裁判決や決定で繰り返し述べられてきた。95年の決定で考慮した補充的な機能も、
       規定の存在自体が非嫡出子への差別意識を生じさせかねないことを考えると、重要ではないというべきだ。

  6 法律婚という制度自体は定着しているとしても、父母が婚姻関係になかったという、子にとっては自ら選択、修正
       する余地のないことを理由としてその子に不利益を及ぼすことは許されず、子を個人として尊重し、権利を保障すべ
       きだという考えが確立されてきている。

  以上を総合すれば、遅くとも本件の相続が開始した2001年7月当時、立法府の裁量権を考慮しても、嫡出子と非
       嫡出子の法定相続分を区別する合理的根拠は失われており、規定は憲法14条1項に違反していたというべきだ。

  7 本決定は、95年の決定やその後の小法廷の判決等が、01年7月より前に相続が開始した事件について、その
       相続開始時点での規定を合憲とした判断を変更するものではない。

  他方、本決定の違憲判断が、すでに行われた遺産の分割にも影響し、解決済みの事案にも効果が及ぶとすること
       は、著しく法的安定性を害することになるから、すでに裁判や合意で確定した法律関係まで現時点で覆すことは相
       当ではない。01年7月から本決定までの間に開始された他の相続で、確定的となった法律関係に影響を及ぼすも
       のではないとするのが相当だ。

  【金築誠志裁判官の補足意見】
  遅くとも本件の相続開始当時に違憲だったとの判断がされた以上、法の平等な適用の観点から、それ以降に相続
       が開始した他の事件にさかのぼるのが原則だ。しかし拘束性を認めることがかえって法的安定性を害する時は、
       その役割を後退させるべきだ。各裁判所は、本決定を指針としつつも、違憲判断が必要かも含めて、事案の妥当
       な解決のために適切な判断を行う必要があると考える。

  【千葉勝美裁判官の補足意見】
  本決定の効果の及ぶ範囲を一定程度に制限する判示は、違憲判断の効力は個別的とするのが一般的な理解で
       ある以上、異例といえる。しかし法的安定性を大きく阻害する事態を避けるための措置であり、必要不可欠な説示
       というべきものだ。違憲判断の範囲等 を制限することは、違憲審査権の制度の一部として当初から予定されてい
       るはずで、憲法はこれを司法作用としてあらかじめ承認していると考えるべきだ。

  【岡部喜代子裁判官の補足意見】
  婚姻期間中に当事者が得た財産は婚姻共同体の財産であり、本来その中にある嫡出子に承継されるべきという
       見解がある。夫婦は婚姻共同体を維持するために協力し、嫡出 子はその協力により扶養されるのが、わが国の
       一つの家族像として考えられ、現在においても一定程度浸透している。しかし国内外の事情の変化は、婚姻共同
       体の保護自体に は理由があるとしても、そのために嫡出子の相続分を非嫡出子よりも優遇することの合理性を
       減少させてきた。全体として法律婚を尊重する意識が広く浸透しているからとい って、相続分に差別を設けること
       はもはや相当でないと言うべきだ。

さて、ここでご紹介しておきたいのは、この最高裁大法廷決定をうけての伊田広行さん(大学教員・ジェンダー論)の次のよう
な感想的メモです。上記で「ここではふつうの報道や解説とは少し違う観点からメモしておきます」と私が言っているのは伊田
さんのこのメモの紹介のことを指しています(ただし、私は全面的に伊田広行さんの説に賛成しているわけではありません)。

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      ■婚外子差別違憲判決 続き(ソウル・ヨガ(イダヒロユキ) 2013年09月06日)
      http://blog.zaq.ne.jp/spisin/article/3852/

      これについては、私の中では古い問題なのですが、少し聞かれたので答える中で考えたことを紹介しておきます。
      ほかの人も、根本的に考える人は少ないので。ちゃんと説明しない程度のメモですが、なんとなくわかると思うので。

      結婚しているかどうか、法律婚かどうか、異性かどうか、そんなことが関係ない社会になることが必要。
      結婚しているかどうかが無意味になるからこそ、パートナーシップは純粋に愛情関係になっていく。

      世界的には、サンボ法、ドメスティックパートナー制度、パックス法など多様なものがあり、日本は最も遅れている。

            【引用者注】
            サンボ法:
            http://kwww3.koshigaya.bunkyo.ac.jp/wiki/index.php/%E3%82%B5%E3%83%A0%E3%83%9C%E6%B3%95
            ドメスティックパートナー制度:
            http://www.asahi-net.or.jp/~km5t-ootk/taqo_text/gfd9_domepa.html
            パックス法:
            http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D1%A5%AF%A5%B9%CB%A1

      根本的には、遺産相続というものにおける親族優遇がおかしい。だれもが遺言なり何かで、財産をあげたい人に
      あげるとして、税率は同じにすべき。それが民主主義の平等の精神。金持ちの子どもが金や土地を自動的に持
      てるというのがおかしい。

      戸籍制度を個人単位化すること必要。住民票のようなものにして、戸籍制度廃止。
      税制度、社会保障制度、労働における雇用、賃金制度、すべてを個人単位化で変革することが必要。
      DV法も、その精神で、恋愛関係も含めて規制するべき。

      これからの家族制度は、もっと多様化していく。家族と家族的なものの境目があいまいになる。親しいパートナー
      シップは将来も続くが、そこに法律婚は必要ない。友人と一緒に暮らすということと、愛する人と暮らすということと、
      家族ということが接近する。結婚という言葉が意味を減らしていく。人権意識の向上も英産システムの変更も、これ
      を後押しする。

      その端緒はすでに北欧などで始まっている。例えば介護における「近しい人」が介護休業する権利。遠くにいる血
      縁より、近くの親しい人。当該が誰を近しい人か規定すればいい。.
 
  「配偶者の立場に配慮を。婚外子に財産を渡さないといけなくなるということで妻の居住権が危うくなる」という水野
       さんの見解は古臭い。それは鈍感な意見。ではその非嫡出子の親の居住権は? 今までの非嫡出子への差別?  
       そこを無視する傲慢な考え。根本的には子供が特別に遺産をもらえる/求めるのが平等原則に反する。あげたい
       人にあげる、税率は同じでいい。 

       仲が悪いが金は欲しいというのもおかしい。
       また金に左右されて従属するような生き方でいいのか、と問われる。人間関係の質の向上のためにも、見直して
       いくべき。

       居住権は個人単位で保障されるべきで、ミズノなど保守主義者の意見は、独身者への差別に鈍感。
  個人単位化は、そういった多労働権、被介護権、居住権、年金なども個人単位化して権利保障することと連動し
       ていくべき。取りあえず夫婦別姓など当然。

       パートナー関係でともに財産を形成してきたなら、当然その半分はパートナーのもの。結婚していようとしていなか
       ろうと。サンボ法の精神。子供の権利とは切り離し。
       今回の判決は時代遅れ。

       今回の判決で家族関係が変わるかというと、これだけではあまり変わらない。しかし、議論が始まり、北欧型の社
       民主義のシステムにしていくことにつながれば、意味がある。しかし日本では当面そうはならない。

       今回の判決でも、遡及効を制限するのがおかしい。救済措置を司法がしなくて良いというのはおかしく、政治家・
       立法がチャンとすべき。
       司法、政治家、官僚の怠慢と保守性、非論理性、無責任性が如実に出ている。
       法律、裁判がいかに、論理的ではなく、恣意的で、政治的立場によって左右されるかが、今回も如実に示された。

       今後非婚者はまだ増える。孤独な状態は増えていく。結婚には今までマイナスも多かったので、そこは避けて、
       メリットだけを追求していくから、それは事実婚のようなものになっていくだろう。モノガミー当然視から、ゆる→か
       なぽりあもりー精神の拡大の中で、お互いの尊重とのバランスが追及されていく。従来の男だけの愛人・妾、浮気、
       性商品利用というアンバランスは長期的には変わらざるを得ない。

              【引用者注】
              モノガミー:
              
http://kotobank.jp/word/%E3%83%A2%E3%83%8E%E3%82%AC%E3%83%9F%E3%83%BC
              ポリアモリー:
              
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9D%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%A2%E3%83%AA%E3%83%BC

       それによって今までの不平等や抑圧は減る。自由は拡大する。それがメリット。逆にコストは、安定感の低下、孤
       独への付き合いが難しい問題と、税金アップ。しかし今も、実は安定もなく、孤独問題もある。
       ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

上記の伊田広行さんの「スピリチュアリティ」に関する説については、今回の伊田さんの「婚外子差別違憲判決」感想への直
接の反論ではありませんが、以下のような反論もあります。この反論の説もご紹介しておこうと思います。

■「スピリチュアル・シングル論」は、マイノリティをダシにしたマジョリティのための自己啓発セミナーだ
(小谷真理(ジェンダー問題批評家) macska dot org 2006/5/29)
http://macska.org/article/137



東本高志@大分
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