[CML 026285] 堺市長選挙と行政改革

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2013年 9月 3日 (火) 22:39:15 JST


大阪市長選挙における橋下徹氏当選の要因は「改革者VS体制内批判派を含む既得権益擁護者」との構図を描くことに成功したことである。行政の無駄や癒着、既得権益、不合理な官民格差があることが事実である。刺青公務員を排除できない職場環境は市民感覚からすればまともではない。関東連合出身者など元暴走族ヤンキーが社会問題になっている状況では尚更である。生活保護の不正受給など既存の福祉施策に欠陥があることも事実である。

これらの問題は是正されるべきである。確かに公務員バッシングや生活保護バッシングには被支配者の分断工作という側面がある。それ故に公務員バッシングや生活保護バッシングに乗っかることを支持しないが、官民格差や生活保護の不正受給が問題であることは変わらない。そこを突かれれば既得権益と無関係な市民は改革者を支持したくなる。これは自然な感情である。大阪維新の会に支持が集まったダイナミズム自体は肯定的に評価できるものである。行政の無駄を許さないという民意に背を向ける政治勢力に未来はない。

 堺市長選挙も政党支持の構図は大阪市長選挙と類似する。維新の会の勝利戦略は「改革者VS体制内批判派を含む既得権益擁護者」との構図を描くことである。維新批判者側も「とにかく維新に好き勝手させないために維新候補の当選を阻止する」という発想がある。それは「改革者VS体制内批判派を含む既得権益擁護者」との構図に収斂してしまう。ファシズムに抗する人民戦線運動と主張するかもしれないが、その表現自体がイデオロギー色濃厚かつ前時代的で、既得権にしがみつく古い時代の政治運動とのイメージを強める。

むしろ堺市長選挙は真の行政改革とは何かを問う選挙である。竹山修身・堺市長は自己を「自ら先頭に立ち、行財政改革を徹底的に断行」と評する。その上で具体的な実績として以下を挙げる(『竹山おさみ市政報告』第12号、2013年6月)。

・大規模公共事業(LRT425億円/堺東再開発350億円)を中止

・市長退職金 約2800万円の廃止、市長給与20%カット、 市長公用車・交際費廃止

・事務事業の見直し、人件費の削減、外郭団体の見直しで(H22〜24年度)約180億円以上削減

 一番目に挙げていることからも分かるように、大規模公共事業の中止が目玉となる実績である。その政策を支持しない人も含めて、LRT計画や堺東中瓦町2丁地区再開発の中止が竹山市政の成し遂げた大きなことであるとの認識は共通する。

 土建国家・政官業の利権に真っ向から対立する大型開発を中止してこそ、真の行政改革者である。土建国家に手を付けず、福祉や公務員の労働条件を切り詰めることで行政改革を気取るならば紛い物に過ぎない。竹山市政が大型開発を中止し、それを実績として支持することは、竹山市長を支持する広範な連合が、既得権益擁護者の連合でないことを示す重要な要素になる。

 竹山市長が挙げた実績の最後「事務事業の見直し、人件費の削減、外郭団体の見直しで(H22〜24年度)約180億円以上削減」は第三極的な行政改革と重なる。約180億円は大きな金額であるが、大型開発(LRT425億円/堺東再開発350億円)の中止に比べると小さい。この点でも行政改革の本丸が何かが浮き彫りになる。

 一方で大型開発と比べれば害悪は小さいとしても、公務員の無駄やぬるま湯があるならば改善することが民意である。堺市が懸命に行政改革に取り組み、黒字経営であることは、借金だらけの大阪府・大阪市と統合する大阪都構想への反対を強める要因になっている。実際、「堺市は黒字で税金も安い。なんで借金だらけの大阪都に参加せんとあかんの」が竹山支持者の声である(「大阪都構想も頓挫? 注目の9・29堺市長選、橋下・維新のガケっぷち!」週プレNEWS 2013年8月22日)

この実績「事務事業の見直し、人件費の削減、外郭団体の見直し」の評価には難しい問題がある。公務員労働者の利益と衝突するためである。それは共産党の以下の指摘が示している。

 「市職員の大幅な人員削減と給与カットで、『住民の奉仕者として頑張っているが現状のままでは限界がある』との声も寄せられています」(日本共産党堺地区委員会「堺市長選挙にあたって住民福祉の増進と自治都市・堺を守り発展させるために市民のみなさんの討論と共同を広くよびかけます」2013年3月3日)。

 公務員労働運動は政治における重要なアクターである。官民格差の解消は必要であるが、公務員がブラック企業労働者と同レベルになることを求めるものではない。既に官製ワーキングプアという問題が現実化している。公務員の労働条件改善にも意味はあるが、公務員労働運動の利害だけで候補者の善し悪しを判断しても市民的支持は得られない。それ故に公務員労働運動の立場から不満はあっても、竹山市長を支持するという判断は見識である。

この点は全国各地で試みられる市民派統一候補擁立で紛糾しがちなところである。市民派統一候補に名乗りをあげるような人物は現在の政治に問題意識を持ち、改革志向を有している。それ故に公務員の人員や給与の削減という行政改革的な主張も有していることが多い。そこに公務員労働運動の教条主義的な立場が噛みつき、統一候補擁立に失敗するケースが多い。

 公務員労働運動が公務員労働者の利害を主張することは正しい。それが公務員労働運動の立場である。問題は運動に参加する市民の側に厚みがないと、それだけになってしまい、世間からは既得権を守るだけの運動と見られてしまうことである。竹山市長支持の広範な連合ができるということは、堺市の市民運動に厚みがあるということである。

そこには「より大きな悪を避けるための窮余の策としての連合」という以上の意義がある。「ファシズムを阻止するために穏健保守とも手を組む」という単なる戦術論では、どこまで妥協すべきか際限がなくなる。それこそ住民福祉や公務員の労働条件を低下させるだけの人物を改革者として持ち上げることになりかねない。その重要なリトマス試験紙が「開発利権と対峙し、大型開発を中止できるか」になる。
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