[CML 027044] 慰安婦問題の拡大阻止 92~93年、東南アで調査せず 外交文書、政府見解と矛盾

BARA harumi-s at mars.dti.ne.jp
2013年 10月 13日 (日) 10:28:23 JST


新聞記事
朝日新聞・名古屋本社
9月13日

慰安婦問題の拡大阻止 92~93年、東南アで調査せず 外交文書、政府見解と矛盾 

http://digital.asahi.com/articles/TKY201310120621.html?ref=pcviewer

旧日本軍の慰安婦問題が日韓間で政治問題になり始めた1992~93年、
日本政府が他国への拡大を防ぐため、韓国で実施した聞き取り調査を
東南アジアでは回避していたことが、朝日新聞が情報公開で入手した
外交文書や政府関係者への取材で分かった。
韓国以外でも調査を進めるという当時の公式見解と矛盾するものだ。

 「河野談話」が出る直前の93年7月30日付の極秘公電によると、
武藤嘉文外相(当時)は日本政府が韓国で実施した被害者からの
聞き取り調査に関連し、フィリピン、インドネシア、マレーシアにある
日本大使館に「関心を徒(いたずら)に煽(あお)る結果となることを
回避するとの観点からもできるだけ避けたい」として、3カ国では実施
しない方針を伝えていた。

 日本政府は当時、内閣外政審議室長が「(調査)対象を朝鮮半島に
限っていない」と答弁するなど、韓国以外でも真相究明を進める姿勢を
示していたが、水面下では問題の波及を防ごうとしていたことになる。

 インドネシア政府が日本政府の慰安婦問題の調査は不十分などと
抗議する声明を出したことについて、外務省の林景一南東アジア2課長
(現駐英大使)が92年7月14日にインドネシアの在京公使に申し
入れた内容を記す文書もあった。

 林氏は「信用できないと断定されたに等しく、残念」と抗議。
両政府間で戦争賠償は決着しており、慰安婦への補償を求められる
ことは「ありえない」と批判した。
さらにインドネシア政府の担当者が声明を発表した際、旧日本兵の
処罰を求める発言をしたことに触れ、「韓国ですら問題にしていない。
かかる発言は驚き」と非難した。

 当時の宮沢内閣で慰安婦問題を仕切った政府高官は「韓国
以外には広げたくなかった。
問題をほじくり返し、他国との関係を不安定にしたくなかった」と語る。
(佐藤純、板橋洋佳)

 ■韓国と別対応、収束急ぐ

 《解説》被害者は韓国女性に限らないのに、慰安婦問題は
「日韓の政治問題」という印象が定着した。
背景には、日本批判が高まった韓国と他国を切り離して対応し、
事態の収束を急ぐ日本の外交方針があった。

 当時の宮沢内閣は役所に眠る資料を探し、韓国では聞き取り
調査をした。
韓国世論の高まりに対処するための異例の態勢だった。
その韓国では今も慰安婦問題は収まっていない。

 一方、韓国に刺激されて世論が高まり始めた東南アジアでは
真相解明に後ろ向きで、聞き取り調査をしなかった。
戦場だった国々に慰安婦問題が波及して深刻な実態が明らかに
なるのを恐れた、と当時の政府高官は明かす。
東南アジア諸国も経済発展を優先し、途上国援助(ODA)を
受ける日本政府との関係悪化を恐れて政治問題化を避けた。

 政府間の思惑が一致した結果、置き去りにされたのは被害者だ。
今夏、インドネシアで彼女らを取材した。大半は90歳前後。
インドネシアでは、日本政府が主導したアジア女性基金の
「償い金」は同国の意向で元慰安婦に渡らず、元慰安婦に
限定しない福祉事業にほぼとどまった。救済どころか、
実態調査さえ行われていない。これが20年後の現実だ。
(鬼原民幸、小田健司)

 ◆キーワード
 <慰安婦問題> 旧日本軍の要請などにより各地に慰安所が
設けられた。
加藤紘一官房長官は92年7月、政府の関与を認める調査結果を
発表。
河野洋平官房長官は93年8月の談話で「当時の軍の関与の下に、
多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた」と認めた。

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慰安婦問題「非難声明、穏当にした」 インドネシア「大統領の意向くむ」
http://digital.asahi.com/articles/TKY201310120528.html?ref=pcviewer

韓国で慰安婦問題が沸騰した後、日本政府は真相究明よりも東南アジア
への拡大阻止を優先して動いていた――。
約20年前の外交文書を入手し、取材班はこの夏、インドネシアへ飛んだ。
スハルト大統領の独裁下にあったインドネシア政府が日本の外交にどう
対応したのかを知るためだ。

 インドネシア政府が日本の調査結果を非難する声明を出したのは
1992年7月。声明を書いた当時の外務省政務総局長ウィルヨノ・
サストロハンドヨ氏(79)が、ジャカルタの研究機関の自室で2度にわたり
4時間半、取材に応じた。

 ウィルヨノ氏は声明に「強制売春」「女性たちの尊厳は日本政府が
何をしても癒やされない」など厳しい言葉を並べたが、「本件を大きく
することを意図しない」と結んだ。スハルト氏の意向をくみ、穏当にまとめた
つもりだった。

 「本当はもっときつい声明を書きたかったが、大統領に従わなければ
ならなかった。つらかった」

 それでも、ジャカルタの日本大使館幹部はすぐに抗議してきたという。
ウィルヨノ氏は「なぜこんな声明を出したのかと言われ、被害国として
当然だと反論した」と顔をゆがめた。

 両国は58年に戦争賠償を決着させ、関係を深めた。日本からの
途上国援助(ODA)は2011年度までに累計5兆2千億円超で国別で最大だ。
インドネシアから見ても日本は最大の援助国。
スハルト氏は日本を重視し、98年の政権崩壊まで戦争被害に冷たかった。

 慰安婦問題の国内対応を担ったインテン・スエノ元社会相(68)は、
ジャカルタにある邸宅で取材に応じた。
東南アジアへの拡大を防ぐ当時の日本政府の姿勢を「理解できる」と語った。
スハルト氏の強い意向を知っていたので、日本政府に聞き取り調査を
求めるつもりはなかったという。

 東京で日本側から抗議された元公使のラハルジョ・ジョヨヌゴロ氏(72)
にも会えた。
記憶は薄れていたが、「日本との友好を維持するため少しの間違いも
許されない雰囲気だった」と語った。

 (佐藤純、板橋洋佳)

 ■日本「他国をあおりたくなかった」

 日本政府の本音は何だったのか。取材班はインドネシアから帰国し、
慰安婦問題を担った約20人の政府高官や外務官僚を訪ね歩いた。
直接取材に応じたのは12人で、うち実名報道を承諾したのは5人だった。

 その一人、全省庁の官僚を束ねていた石原信雄・元官房副長官(86)は
「シビアに問題提起してきたのは韓国だけ。他国から問題提起されていない
のに、進んで調査する気はなかった」と証言した。

 東南アジアで聞き取りをしなかったのは、相手国の行政実務に問題があり、
調査対象の元慰安婦を的確に探し出せるか疑問だったからだという。

 石原氏は「外務省の末端の行動は知らないが、政府がもみ消しに回った
ことはない。政府がかかわる以上、公平性、正確性は非常に重要だ」と
力説した。

 だが、石原氏の下で奔走した当時の内閣官房担当者の説明は違う。
「我々も外務省も静かに済ませたかった。韓国以外で聞き取りをする感じ
ではなかった。
現実の政策はそういうものだ」。別の担当者も「他国をあおりたくなかった。
韓国での聞き取りで幕引きにしたかった」と語った。

 インドネシア外交を担った外務省OBはインドネシア政府の声明に抗議
したと認め、「問題が大きくなったらやりにくくなる。
いい加減にしてほしいという圧力だった」と証言した。

 情報公開で得た外交文書とは別の内部文書も取材で見つけた。
インドネシアの声明に対し、ODAを進めた大使経験者が「いろいろやってる
のに、そんなことを今さら持ち出すとはなんだ」と非難していた。

 河野洋平元官房長官には6月と10月に取材を申し込んだが、事務所を
通じ「取材はお受けしない」と回答があった。
外務省は「当時の経緯を確認中」としている。

 (小田健司)

 ■多くは90歳前後 「次会う時は死んでいるかも」

 インドネシアでは90年代、民間団体の呼びかけに約2万人が旧日本軍
から性暴力を受けたと申し出た。
慰安婦ではなかった人もいるとみられるが、実態は不明だ。

 ジャワ島から600キロ離れたスラウェシ島は、支援組織が根を張る。
日本政府は国内での資料調査でこの島に21カ所の慰安所があったことを
確認したが、現地で聞き取りはしなかった。
取材班は7月、支援組織から紹介を受け、慰安婦だったと名乗る女性や
目撃者ら約20人と会った。
多くは90歳前後。つらい記憶を胸に生きてきた体験を時に涙を流しながら
語った。

 南西部ピンラン県のイタンさんはトタンで作った約10畳の小屋に住む。
日本兵に連行され、終戦まで数カ月間、木造の建物で連日のように複数の
兵士に犯されたと証言した。
「今からでも日本政府にちゃんと償ってほしい。せめて子や孫に家を
残したい」と訴えた。

 ミナサさんは自宅そばの森で2年間、強姦され続けたと訴えた。
足腰が弱り介助がないと歩けない。「今度あなたと会う時は、私はもう
死んでいるかもね」

 河野談話の前年、インドネシアで初めて元慰安婦だと名乗り出た女性は
約10年前に他界した。
彼女の生涯をたどる映画が今夏、ほぼできた。制作にかかわったジャーナ
リストのエカ・ヒンドラティさんは「慰安婦問題が未解決のままであることを、
若い世代に伝えたい」。風化への懸念が募る。

 (鬼原民幸) 



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