[CML 027011] 君が代監視、生徒らの考えは(考 民主主義はいま)

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2013年 10月 11日 (金) 13:07:53 JST


新聞記事
朝日新聞・名古屋本社
9月11日

君が代監視、生徒らの考えは(考 民主主義はいま)

入学式や卒業式で教職員が君が代を実際に歌ったかどうか、管理職が
目視で確認せよ――。
大阪府教委が先月、そんな通知を府立学校長に出した。
なぜ生徒を祝福する行事で先生が互いに監視しあうのか。
なぜ君が代をめぐり意見が対立するのか。
記者1年目の3人が、生徒たちの声を聞いて考えた。

■先生が歌わない理由 「知らない」が8割

 9月下旬、大阪市内の複数の府立高校近くで、下校途中の生徒に取材した。
計114人が答えてくれた。

 まず「君が代の歌詞を知っていますか」と尋ねた。
94人(82・5%)が「知っている」だった。
だが、「歌詞について様々な解釈があることを知っているか」と聞くと、
「知っている」は44人(38・6%)に大きく減った。

 「歌詞の意味は母から聞いたことがあるけど、覚えていない」。
市東部の高校の1年女子(15)はそう話した。
天皇を賛美する歌だという解釈もあることを記者が説明すると、「私たちは
戦争について先生や祖父母から学んだけど、今の小学生は『戦争』や『国歌』
と言われてもピンと来ないのでは」と話した。

 同じ高校の2年女子(16)は「ツイッターで『恋人とずっと続くようにという歌
だ』との解釈を見たので恋の歌だと思っていた。
日本っぽい音楽で、好き」と言った。

 一方、卒業式などで一部の教職員がなぜ歌わないのか「理由を知っている」
と答えたのは25人(21・9%)にとどまった。

 条例と職務命令をもとに歌わせようとする府教委側。
処分を承知でそれを拒む教職員。
生徒の約8割は、なぜそんな対立が生まれるのかよく分かっていないことになる。

 君が代は戦前の軍国主義の象徴だったことなどを記者が説明すると、
市西部の高校の2年男子(16)は「歴史とか深く考えず、国歌を尊重したら
いいのに」。
市中部の高校の3年男子(18)は「君が代を歌うことで(社会が)悪い方向に
行くことはないと思う」と話した。

 ほかにも「自分たちの晴れの舞台で(教職員同士が)いざこざを起こして
ほしくない」
(3年男子、17)など、歌わないことを否定的に受け止めている生徒が多かった。

 これに対し、「生徒に歌えと指導しないのなら、先生が歌わないのもあり」
(3年女子、17)という生徒や、「歌詞の意味を知れば反対する人がいて当然。
自分も歌いたくない」(1年男子、15)と積極的に理解を示す生徒もいた。

 ただ、圧倒的に多かったのは、こうした君が代をめぐる問題に「関心がない」と
いう声だ。
「歌いたくなければ(歌わなくて)ええんちゃう?」(2年男子、16)。
「(自分たちは)校歌は歌うけど国歌は歌わないのが普通。君が代に反対とか、
正直、どうでもいい」(1年女子、16)

 君が代斉唱が「思想信条の自由を侵す」との主張や、「悲惨な歴史を繰り
返してはならない」との一部の教職員の思いが、生徒たちに伝わっているとは
言いがたい現実が見えた。

■教員処分、強まる動き

 「君が代」の歌詞は平安時代の古今和歌集に原型がある。
戦前には「君が代」とは「天皇の治世」を指すと考えられてきた。
一方で、「君」は一般的に「あなた」を指し、「親しい人の長寿を願い祝う歌だ」と
理解する人もいるなど、様々な解釈がある。

 なぜ君が代斉唱に抵抗する教職員がいるのか。

 戦時中、学校で日の丸を掲げて君が代を歌わせて「お国のため、天皇陛下の
ため」という意識を高め、子どもたちを戦争に駆り立てた――。
戦後、そう反省する教職員は少なくなかった。
君が代の起立斉唱に反対するのは、主にその思いを受け継いだり、「身分制の
肯定につながる」と考えたりする教職員だ。
宗教上や民族的な理由もある。

 1999年、国旗・国歌法が成立した。
法案審議で政府は「君」が「象徴天皇」を指すとの統一見解を出し、「学校教育に
おける指導の扱いに変更はない」「国として強制や義務化をすることはない」と
答弁した。
しかし現実には、都道府県教委や校長が起立斉唱を求める職務命令を出し、
従わない教職員を処分する動きが強まった。

 大阪府では2011年、公務員の服務規律を厳格化するとして、府立学校の
卒業式や入学式で教職員に君が代の起立斉唱を義務づける条例が成立した。
府教委によるとその後、起立しなかったことを理由に延べ43人が懲戒処分を
受けた。

■「好きか嫌いか」 自分の感覚で

 《長志珠絵(おさしずえ)・神戸大教授(日本近現代史)の話》 強制や監視の
動きが強まるなか、国歌を特別に尊ぶ意見がそれほど多く見られなかったのは
興味深い。
生徒たちが「好きか嫌いか」という自分の感覚に引きつけて君が代をみている
様子が浮かび上がる。
国旗・国歌が歴史的にもつ抑圧性を敏感に感じ取っているのかもしれない。
また、私の教員経験からは、教職員が歌いたくない理由を知っている生徒は
もっと少ないかと思っていた。
今の学校で現代史の負の側面をきちんと学び、君が代について議論するのは
なかなか難しい。
教員の姿を見て生徒自身が考えたのかもしれない。

■高校生たちの声

◇一部の教職員が歌わないことをどう思う?

・国歌に反対だと言うのはピンと来ない(3年男子・17)

・起立斉唱を強制するのはおかしいと思うが、学校でも教えてもらって
いないので何が正しいのか分からない(3年男子・17) 

・自分たちの式典で担任が斉唱時に座っていたら悲しい(1年男子・15)

◇君が代をどう思う?

・歌詞の意味が分からん。簡単な日本語にしてほしい(1年男子・16)

・暗くて歌う気にならない。もっと前向きで分かりやすい歌詞にしたらいい
(2年女子・16)

・覚えやすくて好き(1年男子・15)

■取材記者3人の視点

 なぜ君が代を国歌として歌うのか。
そうなった歴史を私たちの世代も教えられていない。
「歌え」「歌わない」という主張だけでなく、意見の違いがあることを生徒たちに
きちんと教えてほしい。
この問題に無関心にならないように。(江口英佑、23歳)

     ◇

 君が代の解釈が分かれているのを知らない生徒が多いことに驚いた。
教職員への監視が強まる中、君が代を語ることをタブーとする風潮が
生まれていないか。
若者が異なる主張を無意識に排除しないために、様々な意見を知る機会は
必要だ。(宮田裕介、24歳)

     ◇

 君が代の歴史を話しても質問を返す生徒は少なく、関心がないのだろうと
感じた。
私も高校生の頃、国歌とは何かを考える機会はなかった。
「歌うのが当たり前」という空気は、若者たちから考える機会をますます
奪ってしまう気がする。(新屋絵理、25歳) 



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