[CML 026967] 伊勢神宮と日本 政教分離の役割重大/島薗進さん

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2013年 10月 8日 (火) 19:24:29 JST


新聞記事
朝日新聞・名古屋本社
9月8日

伊勢神宮と日本 政教分離の役割重大/島薗進さん

伊勢神宮の参拝者が増えています。
背景には、重なり合う二つの要因がある。
一つは、庶民が心のよりどころや癒やしの場を求めているということ。
例えば、東京大神宮は都心のオアシスやパワースポットとして、多くの女性が
集まっている。
明治期、伊勢神宮を拝む遥拝殿として創建されましたが、現在の人気と
国家主義とは関係が薄い。
世界でも、スペインのサンティアゴ巡礼やフランスのルルド巡礼が活発で、
巡礼ブームが起きています。
歴史的な観光資源があり、しかも宗教的な意味がある場所に、人はひかれる。

他方で、日本のアイデンティティーの回復を目指す動きも、神社崇敬と結び
つく形で強まっています。
力をつけた中国や韓国などに対し、他国と日本は違うという意識を強く持つ
ようになる。
これは新しい形のナショナリズムです。
世界は、キリスト教やイスラム教などの宗教的な伝統に帰ろうという動きが
目立ちますが、日本は国家、民族へ向かう傾向が強い。
天皇中心の日本の伝統を取り戻そうとする動きです。
そこには注意が必要で、国家神道が歩んだ歴史を的確に見直したいですね。
戦前、国民は神に連なる天皇に礼拝し、天皇中心の国を守ろうと神社参拝した。
天皇崇敬は、国家神道の基軸だったのです。

国家神道は戦後、連合国軍総司令部(GHQ)の神道指令で解体されたとされて
いますが、皇室の神道行事は今も厳格に守られています。
皇室が国のための神道行事をされているからこそ尊いと考える人は多く
天皇崇敬は非常に根強い。
憲法改正で信教の自由の条項などが変更されると、国家神道をより広く
容認する道を開く可能性があります。
実は、明治憲法にも信教の自由は定められていた。
ところが、神社の神道行事は伝統的な祭祀であり、宗教とは違う--。
こういう抜け道の考え方が特別につくられたのです。
この解釈を復活させ、神道行事を国の行事に取り入れようとする動きは
根強いものがあります。
例えば、地鎮祭を地方自治体がやることは政教分離に反しない。
しかし、この議論を国家レベルにつなげるのは次元が異なります。

現代の皇室神道が、戦前の国家神道のように思想信条の自由を制限
することは避けなければなりません。
日本国憲法が定める政教分離や信教の自由の役割は、たいへん重い。
憲法改正を考える際、ここに注意深くなる必要があります。

しまぞの・すすむ
上智大特任教授(宗教学)。
著書に「国家神道と日本人」「現代宗教とスピリチュアリティ」など。 



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