[CML 026924] (クルーグマンコラム@NYタイムズ)米の最富裕層 愚かな「0.01%の怒り」

BARA harumi-s at mars.dti.ne.jp
2013年 10月 6日 (日) 13:32:00 JST


新聞記事・
朝日新聞・
9月5日
http://digital.asahi.com/articles/TKY201310040633.html?ref=pcviewer
(クルーグマンコラム@NYタイムズ)米の最富裕層 愚かな「0.01%の怒り」

米保険大手アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)のロバート・ベンモシェ
最高経営責任者(CEO)が先日、大変、愚かな発言をした。

 ただ、その発言によって極端に不平等な所得格差によって我々国民が被っている
損失が浮き彫りになったのだから、喜ぶべきことともいえるだろう。
「社会病質者」としか呼べないような小さくはあるが強力な集団の台頭である。

 念のために書いておくと、AIGは世界経済危機を引き起こす要因をつくった大手
保険会社だ。
金融規制の抜け穴を利用して、債務を履行するすべのない多額の債務保証商品を
売った。
5年前に米政府はAIGが破綻すれば金融システム全体が不安定になることを恐れ、
多額の資金を注入し救済した。

 しかし、当局でさえ、不当に利用されたと感じていた。
バーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長は、この経済危機においてこれほど
大きな怒りを覚えた出来事はほかになかったと、後に証言している。

 事態はその後もこじれた。
AIGは一時、実質的に大株主である連邦政府の管理下にあったというのに、幹部に
高額賞与を支払い続けた。
当然、国民は激怒した。

 そんなAIGのベンモシェ氏が、ウォールストリート・ジャーナル紙のインタビューで 

何と言ったか。
高額賞与騒動を、米南部の黒人リンチ事件(殺人も行われる本物のリンチ)に
なぞらえて、賞与に対する社会的な激しい反発は「同じくらい邪悪で、同じくらい
間違っている」と断じたのだ。

 このたとえが妥当だという人はいないだろう、と思うかもしれない。
しかし、実はこのような話がずっと続いてきている。

 例えば2010年、世界最大級のプライベートエクイティ会社であるブラックストーン・
グループを率いるシュワルツマン会長も似たようなことを言っている。

 ブラックストーンのような企業の幹部は所得の大部分が15%しか課税されておらず、 

成功報酬に関する抜け穴を規制する案が出たことに対し、こう断言した。
「これは戦争だ。1939年にヒトラーがポーランドに侵攻したときのようだ」

 おわかりだろうが、このように公に報道される発言は突如生まれるわけではない。
悪役ヒーローたちは常に口にし、互いに共鳴しているのだ。
ただそれを、大衆の耳に入るかもしれない所で言ってはいけないということを時々、
忘れてしまうのだ。


 2人とも何を守ろうとしていたのか。それは特権である。

 シュワルツマン氏は、庶民と同じように課税されるかもしれないと憤慨した。
ベンモシェ氏はAIGの公的資金による救済の引き換えに、同社幹部が犠牲を払う
べきでないと考えた。

 彼らは時折、自分たちがまるで「肩をすくめるアトラス」(アイン・ランド著、人民が
資本家を弾圧して搾取していると糾弾する小説)の登場人物であるかのごとく話を
する。
社会に一番求めるのは、たかり屋が自分たちにちょっかいを出してこないことだ、と。 

だが、実際には彼らは社会の99%を占める庶民から自分たちへの再分配を求め
ようとしているではないか。
これはリバタリアニズム(自由至上主義)ではなく、特別扱いの要求だ。
アイン・ランドではなく、アンシャン・レジーム(旧体制)である。

 実際、0.01%の人が露骨に権利意識を表すことがある。
米著名投資家ウォーレン・バフェット氏が率いる投資会社バークシャー・ハサウェイの 

副会長を務める億万長者、チャールズ・マンガー氏は、ウォール街への救済策を
受けて「われわれは神に感謝すべきだ」と言った。
一方、財政難にあえぐ一般の米国人については「ただがまんし、耐えるべきだ」と。
ちなみにベンモシェ氏はクロアチアのドブロブニクの海岸近くの別荘で受けたインタ
ビューで定年を70歳、さらには80歳までに引き上げるべきだと表明していた。

    
 つまり、金持ちの望みがかなってきているということだ。
ウォール街が救済される一方で、労働者や住宅所有者は救済されなかった。
回復とやらは、一般の労働者たちにとってはほとんど無縁なのに、富裕層の所得は
急増している。
2009年から2012年までの所得増加分はほぼすべて上位1%のもの。
そして3分の1近くは上位0.01%、つまり所得1000万ドル(約10億円)以上の
人たちのものだ。

 「富裕層が迫害されている」という彼らの主張は、少数意見ではない。
新聞にも出ているし、昨年の大統領選でもロムニー候補の選挙運動の中心テーマに
なっていた。

 そんなにたくさんのお金を持っているのに、さらに金もうけをして何を買おうとして 

いるのか? 
何軒もの豪邸を構え、使用人がいて、自家用ジェット機も所有しているではないか。

 今、本当に欲しがっているのはお世辞だろう。
自分たちの成功に世界がひれ伏すのを見たいのだ。

 もちろんこう考える人たちの規模はものすごく小さい。

 しかし、財力には権力がついてくる。全世界が服従してくれないという彼らの愚痴や 

怒りが、やがて現実的な政治の結果としてあらわれるかもしれない。

 「0.01%の怒り」を恐れよ!

 (NYタイムズ・9月27日付)

    ◇

 Paul Krugman 53年生まれ。米プリンストン大教授。08年にノーベル経済学賞受賞 



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