[CML 027801] 安倍政権の改憲・構造改革新戦略

林田力Hayashida Riki info at hayariki.net
2013年 11月 22日 (金) 18:36:09 JST


本書の分析も納得できるものが多いが、構造改革の位置づけが躓きの石になる。共産党の躍進を自民党政治・アベノミクスへの明確な対案提示と見る点は支持できる。しかし、それは必ずしも構造改革への対案ではない。むしろ共産党は古くから構造改革への対案を提示してきたが、伸び悩んできた。市民にとって純理論的な構造改革は否定すべきものではない。共産党は都議選では外環道という具体例を出して大型開発を批判し、開発予算を福祉予算に回すことを訴えた。これは構造改革よりも、従来型土建政治への対案である。 

参院選ではブラック企業批判に注力した。構造改革や大企業といった抽象的なものではなく、ブラック企業という具体的な社会悪を批判した。本書ではブラック企業批判には触れず、反貧困でまとめているが、反貧困とブラック企業批判は少し意味合いが異なる。格差社会の過酷な実態は多くの人の同情心を誘う。派遣村が典型である。 

しかし、困っている人を救うという論理には弱さがある。パチンコで乱費するなど貧困者の側の問題を強調することで同情心は霧消するためである。実際に生活保護バッシングによって反貧困運動は守勢に立たされた。これに対してブラック企業批判は異なる。ブラック企業という搾取者を批判するものであり、ブラック企業被害者の道徳性は問題にならない。これがブラック企業批判の論理的強みである。 

閑話休題。マルクス主義に馴染む左翼にとって、新自由主義はケインズ主義よりも理解し難いものである。そのために構造改革批判は心地よい。しかし、それは構造改革への需要に逆行する。共産党の躍進は構造改革批判一辺倒から脱却できた点にある。 

本書の参院選東京選挙区の分析は興味深い。本書は山本太郎が比例区で維新、みんな、民主に投票した層からも投票されたと分析する。吉良佳子と山本太郎が「吉良を支持するような革新票と、山本を支持するようなリベラル票」と棲み分けしたと分析する(166頁)。 

山本が第三極支持層からも集票したとの指摘は理解できる。というよりも、そのように考えなければ計算が合わない。社民党・生活の党・緑の党という山本推薦政党の比例票だけでは山本の得票数にならないためである。比例では第三極に投票したことから彼らを「革新票」と対比して「リベラル層」と名付けたくなることも理解できる。しかし、そうなると革新は共産党だけで、山本太郎を支持した社民党は革新でないということになる。 

より重要な問題は山本太郎が「リベラル層」の支持に値する候補者かという点である。瓦礫焼却阻止への肩入れや過激派との接点が指摘されるように共産党よりも過激である。本書は「反原発、反TPP、反改憲を志向する層は、比例では、維新の会やみんなの党に入れている部分も少なくない」と分析するが(165頁)、逆ではないか。反TPPや反改憲を志向する層が第3極に投票することは考えにくい。第3極支持層が山本太郎の本質を知らずに有名人ということで投票してしまったということではないか。山本太郎への得票から反TPP、反改憲に支持があると分析することは危険である。
http://hayariki.jakou.com/home/34.htm
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林田力Hayashida Riki
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