[CML 027626] 『ダンダリン』第5話、ブラック士業の幼児性

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2013年 11月 13日 (水) 21:13:32 JST


ドラマ『ダンダリン 労働基準監督官』第5話「嫌な会社を辞める方法」は、ブラック士業の幼児性が強調された。若造ブラック士業は、むかつく嫌な野郎として演出されている。その傲慢な雰囲気と、まるでいつも嫌な臭いを嗅いでいるような歪んだ表情。若造ブラック士業は失敗から学ぶどころか一層陰湿化している。東急不動産だまし売り裁判における東急リバブル東急不動産と同じである(林田力『東急不動産だまし売り裁判こうして勝った』ロゴス社)。 

今回は初回放送と同じく段田凛(竹内結子)の死後から始まる。主人公の死亡が視聴者に予め明らかになっている点は斬新である。話の流れからすると逆ギレしたブラック士業に殺されるという推測も成り立つ。現実にもブラック士業がブラック興信所を使って嫌がらせやストーキングをしていると指摘される。 

本筋は辞めたくても辞めさせてもらえない従業員の話である。人気パティシエの唐沢(賀来賢人)が、社長の川合(東根作寿英)が退職を認めてくれないと相談に訪れる。大量生産のためのレシピ改悪や、菓子作りより取材重視の姿勢が我慢できないという。段田凛はアドバイスするが、川合はブラック士業の入れ知恵で唐沢が退職するなら、5千万円の損害賠償裁判を起こすと言い出した。 

退職する従業員を高額な損害賠償請求で脅すことは、典型的なブラック士業の手口である。「辞めようとしたら弁護士から損害賠償請求の書類が送られてきたり、残業代を請求しようとしたら、逆に弁護士から脅された、という相談が数多く寄せられている」(今野晴貴『ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪』文春新書、2012年、208頁) 

今回もブラック士業の悪辣さが全開である。段田凛は「個人の正当な権利を、わがままと表現するような考え方こそが日本にブラック企業を蔓延させた」と指摘する。若造ブラック士業は損害賠償請求訴訟になることを歓迎している様子であり、依頼人の利益ではなく、もめればもめるほど、紛争が長引けば長引くほどブラック士業が儲かるという立場である。労働者を搾取し、依頼者企業さえも食い物にするブラック士業の実態が描かれる。 

経営者は段田凛らに「辞めたいと言っている人間を辞めさせないなんて酷い経営者と思っているでしょうね」と自らのブラックさを自覚している。唐沢を未経験者として雇い、フランス修行に行かせるなど、感情的には辞職を容認できない事情も説明されている。あくまで悪人はブラック士業である。 

一方で若造ブラック士業は法の網の目を狡猾な人間ではなく、世間を知らないために傲慢になっているだけの困った小人として描かれている。一般には労働者は弱い立場であり、だからこそブラック企業やブラック士業が問題になっており、『ダンダリン』のような作品は価値がある。 

しかし、今回の設定で若造ブラック士業のような強気な設定は無理がある。今回のブラック企業被害者は一労働者ではない。独立しても当然な有名パティシエである。企業側の立場に優位性はない。ドラマでも実際に行われているが、労働者側に不満があれば一人でサボタージュするだけでも企業に打撃を与えられる。 

労働者側の退職意思の貫徹を阻むことは、世間常識があれば無理と分かる。それにも関わらず、若造ブラック士業はデタラメな法律論で退職を阻止できると本気で思っている。若造ブラック士業の世間知らずな幼稚性だけが際立った。若造ブラック士業のレベルの低さは明らかである。 

それでもドラマでは途中までは若造ブラック士業に対抗できないという流れになっていた。この点でリアリティに欠けている。そのために段田凛側の秘策もおかしなものになっている。パティシエが特許を主張するならば企業側は職務発明で対抗できるためである。 

若造ブラック士業の手法はブラック士業の女所長にも否定された。この女所長が比較的まともな解決策を率先して行ったために痛み分けのような雰囲気になってしまった。しかし、菓子の人気は有名パティシエが作っていることに負っている面がある。唐沢の菓子を食べたい消費者にとって、後輩パティシエが製法を引き継いだとしても意味がない。また、大量生産のためにレシピを改悪する経営者の方針では味も維持できず、唐沢の退職後に行列ができるほどの人気を維持することは無理である。 

引き継ぎがなされようとも企業側にとってパティシエの退職は痛手である。だからこそ、企業側は唐沢の退職を必死になって阻止しようとした。企業側には唐沢の好きなような菓子作りを追求させるという妥協の余地もあった。しかし、若造ブラック士業の幼稚な高圧的姿勢が、その可能性を潰してしまった。ブラック士業は本当に有害極まりない。 

若造ブラック士業が雑魚キャラ、女所長がラスボスという展開がオーソドックスである。女所長は段田凛に個人的な因縁を有しているようで、ラスボスとしてふさわしい。女所長は労働者よりも会社の存続・発展を優先する点で思想的には相容れない。しかし、若造ブラック士業と異なり、これまでの行動は問題が少ない。今後どのようにブラック士業の闇を描くのか、注目である。
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林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』
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