[CML 023180] Re:  法律ができるまで排外行為は続くのでしょうか

maeda at zokei.ac.jp maeda at zokei.ac.jp
2013年 3月 16日 (土) 01:00:05 JST


前田 朗です。
3月15日

石垣さん

ご苦労様です。

ヘイト・クライム法は、人種その他の差別的動機に関連して行われる犯罪です。
いろんな分類がありえますが、ここでは次の5つに整理してみます。

(1)差別的動機による暴力的犯罪
(2)差別発言を伴う暴力的犯罪
(3)暴力を伴わない差別発言(一般にヘイト・スピーチと呼びます)
(4)暴力を伴わない差別煽動、民衆煽動罪の一つ(人種差別撤廃条約第4条
(a)が犯罪にせよと定めています)
(5)「アウシュヴィツの嘘」罪、民衆煽動罪の一つ(日本で言えば、南京事件
や「慰安婦」問題を否定する発言の処罰)

このうち(1)と(2)は、日本でも、暴行罪、傷害罪、殺人罪、威力業務妨害
罪、強要罪などを適用できます。(ただし、警察・検察はしばしばサボタージュ
します)

ところが(3)と(4)は、日本では犯罪ではないとされています。それどころ
か、日本政府も多くの憲法学者も「これらを処罰することは憲法21条の表現の
自由に反する」と主張しています。彼らは「人種差別表現の自由」を主張してい
るのです。頭がおかしいのは、在特会だけではありません。日本政府も多くの憲
法学者も異常です。

今回の在特会の差別発言は、主に(3)と(4)に当たる問題です。(5)とも
重なりますが、中心は(3)と(4)です。

(5)も、日本では「表現の自由」ということになっています。安倍晋三や橋下
徹が馬鹿げた発言をしても平気なのはそのためです。

民衆煽動罪にはいろんな要素がありますが、一般に「アウシュヴィツの嘘」罪と
呼ばれているように、「アウシュヴィツのガス室はなかった」「ナチスのユダヤ
人虐殺はなかった」という歴史修正主義発言を処罰するものです。

これはドイツ法だと断言するおかしな人がいますが、スイス、オーストリア、フ
ランス、スペイン、ポルトガル、スロヴァキアなどに同じ類型の法律があります。
ただし、世界全体でみると、「アウシュヴィツの嘘」罪は必ずしも多くありませ
ん。それ以外のヘイト・クライム法、つまり上記の(3)と(4)のほうが一般
的です。

ヘイト・クライムについては、私の論文で何十回も書いてきました。世界各国の
法律についても60か国を調査して、そのうち30か国以上にヘイト・クライム
法があることを紹介しました。何十という実際に処罰した判決も紹介しています。
人種差別撤廃委員会の審議で、ヘイト・クライムを処罰せよと勧告が出ているこ
とも、いやになるほど何回も紹介してきました。これからも、しつこくやり続け
ます。

そこまで詳しいものではありませんが、とりあえず、以下を参照願います。

前田朗『ヘイト・クライム』(三一書房、2010年)

私のブログには「ヘイト・クライム(1)〜(15)」をアップしてあります。
やや古いものですが、
「ヘイト・クライム(1)」
http://maeda-akira.blogspot.ch/2009/08/blog-post.html
「ヘイト・クライム(15)」
http://maeda-akira.blogspot.ch/2010/07/blog-post_08.html

ヘイト・クライムと表現の自由については、
「差別表現の自由はあるか(1)」
http://maeda-akira.blogspot.ch/2012/11/blog-post_5.html
「差別表現の自由はあるか(4)」
http://maeda-akira.blogspot.ch/2012/11/blog-post_8.html


----- Original Message -----
> 前田朗さん
> お世話様です。
> ご丁寧な経過の説明ありがとうございます。
> 法律ができるまで排外行為は放置されるのでしょうか。
> 
> 3月14日参院講堂で行われた「排外・人種侮蔑デモに抗議する国会集会」に
参加して(約500名参加)
> この集会で、上瀧浩子弁護士が、ドイツの民衆扇動罪*(下段)に類する法律
が日本に制定されていないので
> ヘイトクレイム規制が難しい、という話をされました。
> その理由として個人が侮辱、名誉毀損されたわけではない。発言が不特定多数
を指しているからとのことでした。
> 人間は法律より先に生まれているのです。法律に定められていないからといっ
て加害者を放置することは許されません。
> 人権侵害発言を受けた当事者は自分の人生を左右するような衝撃を受けます。
> 特に未成年の受ける衝撃は大きく、その傷ついた心を取り戻すには長期の時間
を必要とします。
> 日本政府の北朝鮮政策に便乗しているとみられる「在特会」と称する団体の人
権侵害発言を
> 即時日本政府は止めさせる行動をとるべきです。
>                             石垣敏夫
> 
> *民衆扇動罪(ドイツ刑法130条)の構造
> 「公の平和を乱し得るような態様で、
> 1 国籍、民族、宗教、またはその民族性によって特定される集団、住民の一
部に対して、
> 又は上記に示した集団に属することを理由に若しくは住民の一部に属すること
を理由に個人に対して
> 憎悪をかき立て若しくはこれに対して暴力的若しくは恣意的な措置を求めた者、
又は
> 2 上記を示した集団、住民の一部又は上記に示した集団に属することを理由
として個人を冒涜し、
> 悪意で侮蔑し若しくは中傷することにより、他の者の人間の尊厳を害した者は
> 3月以上5年以下の自由刑に処する。」
> 
> 
> 
>




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