[CML 025191] 2013東京都議会議員選挙――結果分析
OHTA, Mitsumasa
otasa at nifty.com
2013年 6月 30日 (日) 23:38:20 JST
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表はブログ記事でご覧ください。
2013東京都議会議員選挙――結果分析
http://kaze.fm/wordpress/?p=470
【使用データ】
東京都選挙管理委員会 | 選挙結果&データ | 投開票結果
http://www.senkyo.metro.tokyo.jp/data/data01.html
総務省|選挙関連資料
http://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/data/index.html
東京新聞:都議選2013(CHUNICHI Web)
http://www.tokyo-np.co.jp/feature/togisen13/
【目次】
(1) 自民・共産躍進の中身――維新を経由して民主の票が自民へ回帰し、民主・旧未来(生活・みどりの風)・社民の票が一部共産へ?
(2) 共産党は2人区で1議席を獲得し、1人区でも2012衆院選1人区(東京)より得票率を伸ばす
(3) 得票率で見ると、共産党は定数の多い選挙区で民主党に勝ったが、定数の少ない選挙区で負けた――共産党に対する死票心理の表れか
(4) 中選挙区制(大選挙区制)は民意よりも候補者調整ないし票割りの巧拙を測定する
【関連投稿】
2009東京都議会議員選挙――結果分析
http://kaze.fm/wordpress/?p=274
(1) 自民・共産躍進の中身――維新を経由して民主の票が自民へ回帰し、民主・旧未来(生活・みどりの風)・社民の票が一部共産へ?
表1に選挙結果(全選挙区)を示しています。表2は2013年都議選とそれ以前の衆院選比例区(東京)、2009年都議選の間で得票率(%)の変化を見たもの、表3は1人区における得票率の変化を2013年都議選と2012年衆院選の間で比べたものです(2013都議選で民主党は総定数7のところ、3人しか擁立していないことに留意)。
民主党が惨敗したとはいえ、得票率15.24%は2012年衆院選比例区(東京)の得票率15.42%から0.18ポイントしか減少していません(表2)。ただ、定数3以上では2012年衆院選比例区(東京)の得票率から数ポイント減少しています。選挙区の多い2人区で得票率24.11%を稼いだことで、相殺された形です。
自民党は2009年都議選、2009年衆院選比例区(東京)、2012年衆院選比例区(東京)で25%前後の得票率を保ってきましたが(昨年、民主党の票は自民党にいかず、維新とみんなに流れた)、今回は得票率を36.04%へと大きく伸ばしました。ただ、維新との合計で見た得票率は2012年衆院選比例区(東京)の得票率から0.44ポイント減少しています。
自民・民主・維新の合計得票率が昨年からほとんど変化せず、民主党の得票率もあまり変わらず、維新の得票率がガタ落ちということからして、自民大勝の票は維新から移動してきたものでしょう。もっとも、その維新の票は民主党由来でしたから、自民党の票が維新を経由して民主党から回帰したということでしょう。
共産党は議席数の点で躍進しましたが、2013年都議選の得票率13.61%は2009年都議選の得票率12.56%から1ポイント程度増えたに過ぎません(今回の得票数616,722は2009年都議選の得票数707,602より少ない)。ただし、2012年衆院選比例区(東京)の得票率7.41%から比べて、5ポイント以上も増えています。
2012年衆院選と比べ、共産党躍進の票はどこから来たのか。2013年都議選の投票率43.50%が2012年衆院選比例区(東京)の得票率62.20%と比べ低下したため、組織票を期待できる共産党に有利な状況といわれますが、まずこの点を検証します。
2012年衆院選比例区(東京)の同党の得票数484,365を2013年都議選の全党派得票数4,532,280で割ると、10.69%となり、 今回の得票率13.61%より小さいことから、同党の得票率の伸びは低投票率だけからは説明されません。もっとも、今回の得票数自体が616,722票で、昨年より増えています。2012年衆院選と比べて実質的な支持の拡大があったと見るべきでしょう(2013年都議選から比べれば支持の回復)。
民主党が定数3以上で2012年衆院選比例区(東京)と比べ得票率を落としていることからして、民主党と、候補者をほとんど立てていない旧未来の党(現生活の党・みどりの風)と社民党の支持者の一部の票が共産党へ移ったと推測されます。
来る参院選では生活、みどりの風、社民が選挙区でそれなりの候補者を立てるので、共産党が参院選の選挙区で今回の都議選と同様の躍進を達成できる保証はありません。
民意を反映しない選挙制度による共倒れの懸念がいつまでも付きまといます。護憲・脱原発の政党・候補者には、平等な国民主権の実現に最大の価値を置いて、選挙制度改正を最優先の結集軸に候補者調整をしていただきたいものです。現行選挙制度で選出された国会議員は主権者からの厳粛な信託を受けておらず、国会活動をする資格がなく、本来であれば選挙制度改正と選挙管理内閣の公約のみが許されます。
(2) 共産党は2人区で1議席を獲得し、1人区でも2012衆院選1人区(東京)より得票率を伸ばす
2人区の文京区で共産党が1議席を獲得したことは注目に値します。今回、共産党最大の得票率15.41%はこの2人区で達成したものです(表4)。
1人区でも共産党は2012衆院選1人区(東京)の9.13%から2013都議選1人区(7選挙区)の13.82%へと5ポイント近く得票率を伸ばしました(表3)。
共産党の得票率は1人区、2人区以外でも、全選挙区で2012衆院選比例区(東京)の得票率7.41%を上回っています(表3、表4)。
(3) 得票率で見ると、共産党は定数の多い選挙区で民主党に勝ったが、定数の少ない選挙区で負けた――共産党に対する死票心理の表れか
表4に2013年都議選の定数別の選挙結果を示しています。
全選挙区計の得票率で比較すると民主党が共産党を上回っていますが、定数別に見ると少ない定数の選挙区と多い定数の選挙区で関係が違ってきます。
1人区と2人区という定数の少ない選挙区では、どちらも得票率で民主党が共産党に勝っています。
3人区と8人区では得票率で民主党が共産党を若干上回っています。ところが、4人区、5人区、6人区では共産党の候補者数が民主党より少ないにもかかわらず、得票率では共産党が民主党を上回っています。
得票率を1〜2人区、3〜8人区でまとめると、次のようになります。
1〜2人区の得票率 3〜8人区の得票率
共産党 15.13 12.97
民主党 23.01 12.00
この結果は非常に興味深い。潜在的な支持の点で共産党は民主党を上回るものの、定数の少ない選挙区では共産党に対する票が死票になるとの恐れから、依然として民主党に集中しているのかもしれない。
(4) 中選挙区制(大選挙区制)は民意よりも候補者調整ないし票割りの巧拙を測定する
表4の定数別の結果で明らかなように、1人区と2人区はもちろんのこと、定数3以上でも各党の得票率と議席占有率に大きな乖離が見られます。今回の選挙は、2009年都議選と同様、民意よりも候補者調整ないし票割りの巧拙を測定したようなものです。
2009東京都議会議員選挙――結果分析
http://kaze.fm/wordpress/?p=274
5人区まで得票率と議席占有率に大きな乖離が見られ、6人区でようやく差が縮小したと思いきや、8人区でまた乖離します。
この8人区(2選挙区)は象徴的です。共産党と維新の得票率はまったく同じ9.45%であるものの、候補者と議席数(議席占有率)は各党でそれぞれ2人および2議席(12.50%)、4人および1議席(6.25%)と、候補者調整の巧拙が反映されています。民主党は共産・維新より得票率が10.69%と高いものの、やはり候補者調整がまずく、1議席しか獲得できませんでした。
いくら定数が多い中選挙区(大選挙区)でも、候補者数が多くなれば、各党の得票率と議席占有率は乖離してきます。来る参院選の東京選挙区で脱原発候補が林立する模様ですが、心配されます。
このような問題に対処できる選挙制度が、中選挙区比例代表併用制です。
中選挙区比例代表併用制を提案する
http://kaze.fm/wordpress/?p=164
太田光征
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