[CML 025119] 全国の弁護士152名が代理人となり、6月16日新大久保排外デモ参加者の傷害・暴行事件について告訴

higashimoto takashi higashimoto.takashi at khaki.plala.or.jp
2013年 6月 26日 (水) 18:20:25 JST


一昨日の6月24日、「人間として『アンチ朝鮮人デモ』(外国人排撃デモ)をもはや等閑視することは許されない」とする全国の
弁護士152名が代理人となり、6月16日に東京都新宿区新大久保周辺で行われた「行動する保守運動」が主催した外国人
排外デモ「桜田祭」の参加者による暴行、傷害の被害を受けた被害者2名(Kさん、Nさん)による告訴状を新宿警察署に提出
し、受理されました。

同弁護団の有志は先に「外国人排撃デモに関する弁護士有志の声明」を出して、外国人排撃デモにおける「集団行進や周辺
への宣伝活動において一般刑罰法規に明白に違反する犯罪行為を現認確認したときは、当該実行行為者を特定したうえ、
当該行為者と背後にある者に対して、その責任追及のためのあらゆる法的手段に及ぶことを言明する」と宣言していましたが、
今回の新宿警察署へのKさんとNさんの刑事告訴状提出はその宣言の実行の第一弾ということができるでしょう。
http://www.mklo.org/public_html/mklo/html/archives/94.html

「警視総監、よく聞いて下さい。甘い捜査をやるようであれば、検察審査会に申立てをし、国民の名において捜査を断罪します」
と、同日開かれた記者会見に参加した弁護士の一人、梓澤和幸弁護士は冒頭、警察行政責任者に向けて強い口調で「怒り」
の啖呵を切りました。啖呵は時と場合によっては必要です。この場足は特に必要な啖呵だったと言えるでしょう。

その弁護団有志の記者会見の模様は下記で観ることができます。
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/86613

また、同日、同弁護士団が代理人となって新宿警察署に提出したKさんとNさんの告訴状は下記で見ることができます。
http://www.mklo.org/public_html/mklo/html/archives/97.html

下記は同記者会見で代理人弁護士の代表のひとりとして語った澤藤統一郎弁護士の弁です。

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■新大久保ヘイトスピーチ・デモ参加者による傷害・暴行告訴の記者会見で(澤藤統一郎の憲法日記 2013年6月24日)
http://article9.jp/wordpress/?p=643

弁護士の澤藤です。
新大久保のヘイトスピーチ・デモ参加者が暴走して、ヘイトスピーチを止めるよう説得・抗議活動を行っていた方に対して起こし
た傷害・暴行事件の告訴に関して、梓澤和幸弁護士から詳細な背景事情や意義の説明がありました。私から、若干の補充を
いたします。

この事件について、2人の告訴人代理人として名乗りを上げた弁護士は150人を超えます。いずれもヘイトスピーチの被害者
の側に立つべく旗幟を鮮明にしています。

その皆が、表現の自由をこの上なく大切に思う立場の者ばかりです。けっして公権力による言論規制を望むものではない。し
かし、表現の自由とは、本来公権力や社会的強者を批判する言論の自由を保障するもの。表現の自由の美名に隠れて、弱
者の基本権を侵害する自由が認められてよいわけがない。とりわけ人種差別発言や民族差別発言で、マイノリティを貶めるこ
とは到底許し難い。

さりとて、人種差別や民族差別が純粋に言論にとどまる限りは、これを処罰する刑事法規は現在ありません。刑罰権の発動
によってこれを処罰せよ、あるいは押さえ込めというわけにはまいりません。

では、どうすべきか。一般論としては、言論には言論をもって対抗すべきだということになります。差別される側にも十分に反
論する権利が保障されているのだから、その権利を行使して反論すればよいでないかという議論です。

しかし、この議論は画に描いた餅でしかない。対等者間モデルの一般論を当て嵌めることの不当性について多くを語る必要
はないと思います。強者が弱者を貶めているとき、弱者に自力で権利の救済をせよというのは、権利侵害を放置し容認する
ことにほかなりません。いじめられている人に、「反撃の権利があるのだから、いじめっ子に反撃すればよい」といって傍観し
ているに等しいのです。

このような場面で、被害者に代わって対抗言論を買って出る市民が現れるということは、まことに貴重な、素晴らしいことと言
わねばなりません。被害者の立場にたち、被害者に代わって、ヘイトスピーチの恥ずべきことを説得し、愚かな行為を止める
よう働きかける行動は、民主々義社会の良心と良識に基づくものと賞賛に値するものです。

ところが、ヘイトスピーチデモへの参加者の中には、この説得に耳を貸さないばかりか、このような説得活動を不愉快として、
実力行使に及ぶ者さえ現れました。本日告訴に及んだ2件の事件は、ヘイトスピーチデモの参加者が説得者に体当たりし、
転倒させ、あるいは蹴飛ばすなどして、暴行・傷害に及んだというものです。明らかに犯罪ですし、警察官が現認している行
為です。到底許すことができません。

もし、この暴行や傷害を座して見過ごすとすれば、ヘイトスピーカー側に間違ったサインを送ることになります。この程度のこ
とは許されるのだと。そして、せっかく立ち上がった良識ある人々の勇気を挫くようなことにもなりかねません。実は、これま
での間違ったサインの積み重ねが、今日までの事態のエスカレートをもたらしたといわざるを得ません。断固とした刑事制裁
によってヘイトスピーチデモの異常さ、間違いを糺し、彼らに自覚を促さねばなりません。

警察は、「デモ隊もデモへの抗議の人々も、どっちもどっち。警察がどちらに肩入れすることはしない」と言っていますが、大
局を見失ってはなりません。人種差別・民族差別の発言で弱者の人権を侵害している側と、その被害者に代わって説得を
試みている人々と。それを一緒くたにして、どっちもどっちと言ってはならない。ことさらに、ごく小さな局面だけに焦点を当て
れば、そのように見えることもあるかも知れません。しかし、大局をみれば、一方は余りにもひどい差別発言の加害者であり、
もう一方はヘイトスピーチの醜さを克服しようと立ち上がった、良識ある人々。その区別を見失うようなことがあってはならな
い。

私たちは、この良識と勇気とを発揮して説得の行動に立ち上がった人々の側に徹底して立ちたいと思っています。それこそ
が民主々義社会における主権者としてあるべき姿であり、とりわけ、社会正義と基本的人権を擁護する使命を負っている弁
護士の責務だと思ってのことです。

そのような趣旨での本件告訴であることにご理解をいただきたいと思います。
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東本高志@大分
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