[CML 025008] 人権条約委員会からの勧告の遵守について

Maeda Akira maeda at zokei.ac.jp
2013年 6月 20日 (木) 17:49:19 JST


前田 朗です。

6月20日

日本政府が、拷問禁止委員会からの勧告などについて、勧告には拘束力がないか
ら従う必要はない、と公然と主張 しています。

これまでも女性差別撤廃委員会、人種差別撤廃委員会などからの勧告を公然と拒
否してきました。


単に勧告に従わないだけではなく、わざわざ公然と、勧告など従う必要がない、
と発表しています。喧嘩を売っているようなものです。

第1に、人権条約委員会の勧告に法的拘束力がないのは、その通りです。

例えば、拷問等禁止条約

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/gomon/zenbun.html

日本政府は拷問等禁止条約を批准しましたから、条約を遵守する義務がありま
す。その義務とは、第2条1項の 「自国の管轄の下にある領域内において拷問
に当たる行為が行われることを防止するため、立法上、行政上、司法上その他の
効果的な措置をと る」のような実体的な義務と、第19条1項の政府報告書提
出のような手続的な義務、です。後者については、報告書を提出して、審査を受
け ることです。拷問禁止委員会は、審査の結果として、「一般的な性格を有す
る意見」を公表します(19条3項)。これを私たちは「勧告」と 呼んでいま
すが、「一般的な性格を有する意見」であって、確かにそれ自体には法的拘束力
はありません。

第2に、実体的な義務には従う必要があります。

委員会の勧告それ自体は「一般的な性格を有する意見」ですから、直ちに従うべ
き拘束力がないとしても、勧告 (一般的な性格を有する意見)のうち、条約上
の実体的な義務を確認した部分については、もともと従うべき義務ですから、
「法的拘束力がな い」などと言えません。

第3に、国際協力と建設的対話を考慮するべきです。

国際人権規約、子どもの権利条約なども含めて、各種の人権条約は、国際協力を
通じて、そして「建設的対話」を 通じて、各国及び国際社会における人権の促
進・擁護を図ることを共通の前提認識としています。各国政府には、批准した人
権条約を誠実に遵 守する義務があります。それは直ちに改善し、すべて善処す
ると言うことまでを意味しているわけではないとしても、条約当事国として条約
を 遵守するために前向きに努力し続けることを国際社会に約束したものです。
日本政府の態度はこの当然の前提を踏みにじるものです。

第4に、日本政府は国連人権理事会の理事国です。

たまたま選ばれたのではなく、わざわざ立候補して選挙で選出されたのです。人
権理事会理事国に立候補して選出 された国家であるならば、当然、自国内の人
権状況の改善努力をきちんと続けるべきです。日本政府は、人権理事会における
普遍的定期審査 (UPR)の際に、自国の立場表明をして、人権理事会への貢
献を語り、国際人権水準の確保を公約してきました。ならば、人権条約委員会か
らの勧告を誠実に受け止めて、改善努力をするべきです。サボタージュするばか
りか、勧告を拒否するなどと公然と主張するのであれば、人権 理事国を辞退す
るべきです。



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