[CML 025263] Re: 「ヘイト・スピーチ処罰は世界の常識である(4)」

Maeda Akira maeda at zokei.ac.jp
2013年 7月 5日 (金) 10:29:16 JST


前田 朗です。

7月5日

森永さん

ユニークなご意見、ありがとうございます。

第1に、既に指摘したことですが、濫用の恐れがあるから反対すると言うのは、
説得力がありません。いかなる民 主主義国家であっても、刑罰法規が乱用され
る恐れがあります。現に濫用されてきました。殺人罪も傷害罪も詐欺罪も脅迫罪
もみな著しく濫用 されてきました。しかし、殺人罪、傷害罪、詐欺罪、脅迫罪
に反対する理由にはなり得ません。

第2に、特に日本警察・検察・裁判所が信用できないからというのは――それ自体
は、もちろん正しい判断ですが ――、それならば公務執行妨害罪、住居侵入罪、
私文書偽造罪、公正証書原本不実記載罪など、弾圧のために濫用されてきた多く
の犯罪規定を 削除しなくてはなりません。非現実的な主張です。

殺人罪や公務執行妨害罪など、上記の犯罪規定が問題なのではありません。刑罰
規定を濫用し、拡大解釈し、不当 に適用してきた日本の刑事司法がおかしいだ
けの話です。ヘイト・クライム法、ヘイト・スピーチ法に反対する理由になって
いません。

第3に、これも既に指摘したことですが、ヘイト・スピーチは、通常、構造的差
別の下で、マジョリティがマイノ リティに加える犯罪です。この点を見失う
と、森永さんのように考えることになります。国際自由権規約、人種差別撤廃条
約、マイノリティ権 利宣言の精神を理解している人ならば、心配する必要のな
いことです。

とはいえ、ご指摘のような濫用がなされる場合があります。例えば、イギリス
(UK) のヘイト・クライム法は、構造的差別を認識して立法されたはずなの
に、条文に明示されていないため、白人による黒人に対するヘイト・ス ピーチ
だけでなく、黒人による白人に対するヘイト・スピーチにも適用されます。

こうした濫用、逆用はどこでも起こりうる話です。とりわけ独裁的な体制、権威
主義的な体制、あるいは原理主義 的思考が蔓延している社会では、権力・多数
派の自己防衛と横暴のために濫用が行われます。しかし、それはヘイト・スピー
チ固有の話ではあ りません。

いずれにせよ、刑事立法をつくって、当局にお任せする社会では、どんな刑事立
法にしても濫用されます。市民に よる監視が重要です。

最後に、この投稿では主題ではないのですが、一番重要なことを付け加えておき
ます。

ヘイト・スピーチ規制法に賛成するか、反対するかの、最大の論点は、被害をど
う認識するかです。現に違法な行 為(少なくとも不法行為に該当)が行われて
いて、悪質な被害が起きているので、ヘイト・スピーチ法が議論されているのです。

「表現の自由だからヘイト・スピーチ規制はできない」というインチキ憲法論
は、被害を度外視して、現状を放置 する議論でしかありません。

森永さんのこれまでの投稿を拝見しても、被害をどうするのかについての関心を
お持ちでないことが良くわかりま す。





> やはり、「ヘイトスピーチ立法」には反対せざるをえません。
> 「宗教上の理由で特定集団への憎悪などを扇動した罪」が有罪になるのなら、ヤスクニナチスジンジャを参拝する者を「ヤスクニヒトモドキ」と呼び、ヤスクニナチスジンジャ・ゴコクナチスジンジャや神社本庁関係者、また「日本会議」に参加する宗教団体幹部の処刑を唱えている私は有罪にされてしまうことが確実です。
>
> 森永和彦
>
> 2013/07/03 (Wed) 14:05, "Maeda Akira" <maeda at zokei.ac.jp> wrote:



CML メーリングリストの案内