Re: [CML 022705] Re: 「100万人に1人のはずの子どもの甲状腺がん 福島で4万人中3~10人」という福島県・県民健康管理調査に関するナンセンスな言説について(「脱原発」の思いは同じですが)

泥憲和 n.doro at himesou.jp
2013年 2月 20日 (水) 20:44:36 JST


田島さん

 精力的な投稿、お疲れ様です。
 
 福島第一原発から放出されたヨウ素131による被ばくの影響がどの程度なのか、不安が取り除けない昨今ですから、東電にも政府にもきちんと検診と治療の責任を果たしていただきたいですね。 
 仮に甲状腺に悪影響があったとしても、チェルノブイリと違って早期発見・早期治療ができるのですから、子どもたちが絶望しなくてよいのは、不幸中の幸いです。
 必要な警戒はすべきですが、私は以前にも申し上げたとおり、子どもたちに絶望感をもたらすような過度な警戒情報は、マイナス面が大きいと思っています。
 ですので、福島の「県民健康管理調査」で4万人に3~10人の癌が見つかったという情報の取り扱いにも、細心の注意をはらうのがよいと考えます。
 
 さて、この間の田島さんの警戒情報ですが、前回私が指摘したのと同じように、データの取扱いに誤りがみられると思うので、その点を指摘したいと思います。


 日本ではこれまで何万人という組織的な甲状腺検査などはされていないのだから、データはほとんど、腫れがひどいなど、病気の自覚があって検査したら癌だったというケースにもとづいていますよね。
 そうやって発見された症例の統計が、いわゆる「罹患率」です。
 2007年版統計では人口10万人当たり女10.1、男2.8となっています。
 女で約0.1%、男で0.02%です。
 (「全国がん罹患モニタリング集計 2007 年罹患数・率報告」国立がん研究センター) 

http://ganjoho.jp/data/professional/statistics/odjrh3000000hwsa-att/mcij2007_report.pdf

 ところが、健康だと思っている人でも、検査をしてみたらかなりの人が甲状腺癌にかかっているというデータがあります。
 資料は「愛媛県立医療技術大学紀要 第7巻 第1号(2010年12月31日発行)」に収録されている、「甲状腺微小癌」です。
http://www.saechika.net/kbk/main1/gan15/KJS-chiryou1.html

 これは原発事故以前に発表されている資料ですので、意図的な安全情報ではありません。
 この資料によれば、甲状腺癌の「実際に癌になっている率(発見率)」と「患者の自覚的来院にもとづく罹患率」には大きな違いがあるそうです。
 「3~9㎜の乳頭癌は女性1万人当たり262人になると推定」というのだから、発見率は2.6%。
 国立がん研究センター統計(病気の自覚があった人)の26倍にものぼるわけです。
 (但し対象者は30歳以上です)

 別のレポートでも、超音波検査による癌の発見率が男で0.12~2%、女で0.33~1.28%と記載されているので、ばらつきがありますが、意外に多いものであることは確かですね。
 自覚のある人の統計との差は、男で6~100倍、女で3~12倍。
 数倍~数十倍の差があることは認められると思います。
(「日本における甲状腺腫瘍の頻度と経過」−人間ドックからのデータ) 
http://www.japanthyroid.jp/commmon/20100102_07.pdf 

 前記愛媛県立医療技術大学の資料を引用すると、
 「甲状腺検診に超音波検査を行っている他の多くの機関でも,多数の微小癌がみつかり,初めは早期発見,早期治療ができるとの発表がなされたが,あまりに多い発見率から,微小な癌を見つけることは患者にとってかえって不利益なのではとの反省がなされるようになった。」
 とのこと。
 繰り返しますが、これは原発事故以前の論文です。

 これらのデータは集団検診や人間ドックで収集したものです。
 子どもがまさか集団検診や人間ドックの検査を受けないので、小児甲状腺癌の統計は、「子どもに自覚症状があって検査したら見つかった」というケースに基づいていると思われます。 

 その「患者の自覚的来院にもとづく罹患率」が子どもの場合100万人に10人とすると、0.001%。
 福島の「県民健康管理調査」で4万人に3~10人の癌が見つかったということは、発見率0.0075~0.025%です。
 自覚症状のある子どもの7.5倍乃至25倍です。
  子どもにも「検査による発見率」と「患者の自覚的来院にもとづく罹患率」との間に、大人と同程度の差があるとするならば、当然あらわれても不思議のない数字ですね。
  すると、今回の発見は原発事故に由来するものではないと思われるという、医療界の多数意見にも、それなりの根拠があるわけです。
 
 だけど、原発事故という前例のない事態を受けてのことですから、断言したり安心したりは禁物です。
 これからも継続的かつ精力的に検診を続け、万が一のことがあれば直ちに適切な治療を施す体制がとられなければなりません。
 同時に、子どもに過度の不安を与えるのは罪ですから、早合点しないで、取り扱いに慎重を期した方がよいと思います。

 そういうことで、田島さんは「盛りすぎ」ではないかとの疑いもあるのですが、しかし無責任な政府に逃げを許さないという意味では、強い警鐘には意味があると思います。
 そう思うので、ひと言苦言を呈させてください。

 田島さんのからかい口調の文章に「喜び」のようなものが垣間見えて、どうにもやりきれないのは、私だけでしょうか。
 「してやったり、自分の予言が的中したではないか!」というような口吻を感じるのですが。
 それは不謹慎だと思うのです。
 原因がなんであれ、ことは子どもの癌なのですから、早期発見で大事に至らなかったとしても、はしゃぐことではありません。
 怒りなら、まだしもわかりますが。
 私の勘違いなら、ご寛恕下さい。 



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