[CML 022713] 辻元清美氏の「小沢一郎」氏評と「未来の党」評についての感想

higashimoto takashi higashimoto.takashi at khaki.plala.or.jp
2013年 2月 19日 (火) 19:59:02 JST


『世界』別冊(2013年3月号)に元社民党、現民主党衆院議員の辻元清美氏のインタビュー記事が掲載されています。そのインタビュー
記事で辻元氏は同誌インタビュアーの質問に応える形で自身の「小沢一郎」氏評と「未来の党」評を次のように述べています。
http://www.iwanami.co.jp/sekai/

     「 -- 小沢一郎さんについてはどう思われますか。民主党政権は小沢さんなしでは樹立できませんでした。

     辻元 政権交代には、自民党のやり方を熟知する小沢さんの力が不可欠でした。しかし、小沢さんに政策の理念があったか
     といえばやっぱり疑問です。彼が代表に就いたとき、小泉政権の後の自民党に勝つために、新自由主義的な方向へのアン
     チテーゼとして社民主義的な政策を旗印にしました。〇九年の民主党のマニフェストも、小沢さんが代表時代に作成したもの
     が元になっていますが、結局小沢さんにとっては、選挙に勝つための『手段』だったのでは。だから大盤振る舞いだった。『実
     現できるかしら?』と聞くと、『政権とったら何でもできる』と小沢さんは言うばかり。理念があって心からこれを実現したい、実
     現すべきだと思っていたら、もっとしぶとく粘るはずですが・・・・。3.11後も、あの非常時に小沢さんは『菅おろし』に走りまし
     た。そういう小沢さんの政局的仕掛けに党内は振り回されて、反小沢・親小沢という対立軸で動いたようなところがあり、政治
     がゆがめられてしまいました。

     -- 小沢さんが仕掛けた未来の党についてはどうでしょう。

     辻元 嘉田さんたちは本気で卒原発をやろうとしたのならば、もっと入念な準備が必要です。私は彼女に直接、そうアドバイス
     もしました。しかし、『卒原発と言っている、本気だ』と小沢さんの政治手法にナイーブに乗ってしまったのでしょうか。嘉田さん
     は小沢さんから『一〇〇人通ると言われた』と言ったらしいですが、そんな簡単な話ではないというのが、壁にぶつかり続けた
     私の実感です。小沢さんは嘉田さんというイチゴをショートケーキに乗せて、おいしそうにデコレーションしたわけですが、勝つ
     ための手段が今回は卒原発だった、と見透かされてしまったのではないでしょうか。

     -- 未来の党に投票した人にすれば、裏切られた思いでしょうね。

     辻元 ただ、私はそこに、市民運動のある種のナイーブさもあったと思います。脱原発で、格差を縮めていこう、平和主義を
     貫こう、そういう政治勢力をつくらなければいけないわけですが、それはそう簡単に即席でできるものではない。時間をかけ
     て、しんどいことも引き受けてねばり強くやらないと、できないと思います。忍耐力が必要なんです。スローガンを叫び、すぐ
     に結果を求めるだけでは実質的に政治を動かし、社会を変えることはできません。今回の結果だけをもって切り捨て続けた
     ら、政党は育たない。」(『世界』別冊2013年3月号「政治を立て直す」54-55頁。「kojitakenの日記」2013-02-15付より引用)
     http://d.hatena.ne.jp/kojitaken/20130215/1360886481

上記の辻元清美氏のインタビュー発言について「kojitakenの日記」の主宰者の古寺多見さんは次のように評価しています。

     「小沢一郎と旧『日本未来の党』についての辻元清美の分析は、非常に説得力がある。(略)私は辻元清美に対しては、賛
     同できる部分とそうでない部分があるが、氏が日本の政治において今後も存在感を放つ有力なプレーヤーであり続けるこ
     とは間違いないだろう」、と。

しかし、私の見方は古寺多見さんの見方とは少し異なります。

辻元清美氏の上記の発言は「説得力がある」という古寺多見さんの評価については私もある意味ではそのとおりだろうと思います。
しかし、その説得力とはどのような性質の説得力だろうか、と私は思います。辻元氏の発言は少なくとも権力に対抗する精神から
発せられた説得力のようには私には見えません。

単純化していえば説得力とはリアルにものを見る力のことですから、権力者の側にも昔からリアルにものを見る力のある人は少な
くなくいました。私の知るところでいえば田中角栄しかり、後藤田正晴しかり。その種の(政界を泳ぎ渡るための)直観ようなものを
彼女一流の政治的カンで身につけた説得力。彼女の説得力とはそういう性質のものではないか。私の辻元清美氏の『世界』誌上
における発言の評価はそういうものです。

権力の側の説得力とは本質の問題としていえば被権力者としての大衆を権力に屈服させるための説得力です。かつての池田隼
人(元総理大臣)の「貧乏人は麦を食え」発言(実際の発言は少し違うようですがそういう言葉として人口に膾炙しました)は有名で
すが、この言葉は明らかに貧乏人に屈服を強いる発言でした。

そして、私がいま設定した「権力の側の説得力」という命題からここですぐに思い出すのは、2007年5月に発表された当時の自
民党政府の労働市場改革専門調査会の下部組織として設置された労働タスクフォースの悪名高い「脱格差と活力をもたらす労働
市場へ――労働法制の抜本的見直しを」という提言の中にあった言葉です。

その提言には次のように記されていました。

     「一部に残存する神話のように、労働者の権利を強めれば、その労働者の保護が図られるという考え方は誤っている。不
     用意に最低賃金を引き上げることは、その賃金に見合う生産性を発揮できない労働者の失業をもたらし、そのような人々
     の生活をかえって困窮させることにつながる。過度に女性労働者の権利を強化すると、かえって最初から雇用を手控える
     結果となるなどの副作用を生じる可能性もある。正規社員の解雇を厳しく規制することは、非正規雇用へのシフトを企業
     に誘発し、労働者の地位を全体としてより脆弱なものとする結果を導く。一定期間派遣労働を継続したら雇用の申し込み
     を使用者に義務付けることは、正規雇用を増やすどころか、派遣労働者の期限前の派遣取り止めを誘発し、派遣労働者
     の地位を危うくする・・・」
     http://bit.ly/Y1doDa

上記の言葉ほど権力者の側の思想の本質、そして、そのマヌーバ―性を見事に体現している言葉はほかにあまり例を見ないでし
ょう。たしかに提言の表面上の言葉としては「労働者の失業」とその「生活の困窮」を憂うる言葉があります。また、「労働者の地位」
と「派遣労働者の地位」の「脆弱」化を憂うる言葉も散りばめられています。しかし、そこで主張されていることは「不用意な最低賃
金の引き上げ」の反対、「過度に女性労働者の権利を強化する」ことへの反対、「正規社員の解雇を厳しく規制する」ことへの反対
でしかありません。こうした言葉のマヌーバーが大衆を権力に屈服させるための説得術として使われるのです。

さて、辻元氏は上記の『世界』インタビューで「小沢一郎さんについてはどう思われますか」というインタビュアーの問いに応えて
「小沢さんに政策の理念があったかといえばやっぱり疑問です。(略)結局小沢さんにとっては、選挙に勝つための『手段』だった
のでは」と述べていますが、「やっぱり」という疑念を当初から小沢一郎氏に対して持っていたのであれば、なぜ相対的に「理念」
の明確だった社民党を離党してまでそうした「理念」のあやふやな政党に入党し直したのか?  辻元氏が民主党に鞍替え入党し
た2010年9月の時点ではいまだ小沢氏は同党代表選挙で現職の総理大臣であった菅直人氏と国会議員票を二分する党内実
力者の位置にいたのです。

私は3年ほど前の「辻元清美の社民党離党 社民党的なものの見方の限界と愚かしさについて」という記事の中で辻元氏の社民
党離党に到る行動スタンスを次のように批判したことがあります。

     「辻元氏は大阪での離党表明記者会見で『政権交代を逆戻りさせてはならない』『政権の外に出ると、あらゆる政策実現
     が遠のく」(読売新聞 2010年7月27日)と述べました。辻元氏は自民党政権から民主党政権へと変わった昨年夏の衆院
     選での『政権交代』を絶対視しすぎているようですが、政権交代で重要なのはいうまでもなく政権交代という形ではなく、
     その政権交代の結果として政治変革、政治の中身が変化したかどうか、ということです。自民党政治の延長にすぎない
     政権交代は政権交代の名に値しないのです。民主党政権は自民党政治に決別しえたか。普天間基地問題に象徴され
     る民主党政権の対米従属、民意無視の政治姿勢を見る限り、民主党政権の政治は自民党政治の延長であり、というよ
     りもさらに悪質化しており(たとえばSCC共同声明参照)、自民党政治に決別しえたとはとてもいえません。それを単純
     に「政権交代を逆戻りさせてはならない」などと言ってしまう。ここに辻元氏の信念に基づく「理念」の実現よりも『権力』に
     よるまやかしの『理念』の実現(すなわち『理念』の非実現)の方を重要視する権力(政治的エスタブリッシュメント)志向
     の姿勢がよくあらわれていると見るべきでしょう」(要旨)、と。
     http://mizukith.blog91.fc2.com/blog-entry-134.html

辻元氏の今回の『世界』インタビューで見せた説得力はその延長線上にある説得力、政治的エスタブリッシュメント志向の人の
眼から見た説得力でしかない。すなわち、その説得力には権力に対抗しようとする批判精神が見られない、というのが私の判断
です。辻元氏には少し厳しすぎる評価であったかもしれません。が、私は、彼女をいまの状態のままで「日本の政治において今
後も存在感を放つ有力なプレーヤーであり続けることは間違いないだろう」などと評価する気はさらさらありません。


東本高志@大分
higashimoto.takashi at khaki.plala.or.jp
http://mizukith.blog91.fc2.com/ 



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