[CML 022576] 沖縄、根拠なき負担・構造的差別

BARA harumi-s at mars.dti.ne.jp
2013年 2月 11日 (月) 17:09:10 JST


新聞記事
朝日新聞2013.2.7
池澤夏樹「沖縄、根拠なき負担・構造的差別の先には」
http://digital.asahi.com/articles/TKY201302050361.html

政治の課題は重要か緊急か、あるいはその両方である。

 安倍内閣が自分のサイコロと国民の金で大ばくちをするのはずいぶん危険なことだとぼくは思う。インフレに苦しんで借金が残るだけにならないといいが、結果が出るのはまだ先だろう。

 沖縄は緊急にして重要。

 一月二十七日、沖縄の四十一の市町村ぜんぶから首長、議長、県議百四十人が上京して、オスプレイ配備の撤回と普天間基地の県内移転反対を訴えた。この人たちは烏合(うごう)の衆ではない。公正な選挙によって選ばれた県民の代表である。

 また、この二つについて、琉球新報と毎日新聞による世論調査では県民の九割が反対という意思表示をしている。九割は普通ならばあり得ない数字だ。

 日本国の一つの県が一個の事案についてここまではっきり嫌だと言ったことはかつてなかった。

 しかし彼らの声は届かない。国、ならびに一都一道二府四十二県、また本土のメディアの多くはこれを完全に無視している。

 沖縄が普天間の海兵隊基地を撤去してほしいというのは感情論ではない。ただ危険だからということではない。

 現実の話、沖縄に海兵隊を常置させる根拠はないのだ。

 尖閣諸島を巡る防衛問題について沖縄の海兵隊は抑止力にはならない。もしもアメリカ軍に出番があるとしたら(ありえないけれど)、それは空軍か海軍第七艦隊であって海兵隊ではない。仮に海兵隊が出るとしても、発進するのは強襲揚陸艦の基地である佐世保からであって普天間からではない。

 今、沖縄の海兵隊はフィリピンやタイ、オーストラリア、韓国などを巡回して、各国の軍と共同訓練をすることを主務としている。これまた沖縄を基地にする必要はない。

 沖縄経済は米軍基地がなければ成り立たないというのも過去の話だ。返還された土地の活用はどこもうまく行っているし、雇用者数が何千倍にもなったところが少なくない。実例としては那覇の新都心を見ればいい。ハブしかいなかった荒れ地が繁華街になった。

 オスプレイの配備で沖縄人が怒るのは、日米両方の政府があからさまに嘘(うそ)をついているからだ。

 ハワイ島で、この飛行機が飛ぶ経路から千六百メートルのところにカメハメハ大王の遺跡があるというので、海兵隊は訓練飛行を止めた。滑走路への進入コースから百三十メートルのところに学校と幼稚園がある普天間への配備は止められなかった。沖縄の子供たちの命はそこまで軽いのか?

 軍隊は若い者たちを集めて毎日のように喧嘩(けんか)の練習をさせる。暴力沙汰や無分別な行いが生じるのは当然だろう。基地の中に閉じ込めておけるものではなく、外へも滲(にじ)み出す。沖縄で米兵がらみの犯罪は少なくない。

 それを抑え込むために日米地位協定があるのだが、これが日本側にとって圧倒的に不利。沖縄は何十年も前から地位協定の改定を日本政府に求めているが、今もって何の動きもない。ドイツも韓国でも改定は実現したのに。アメリカはけっこう柔軟なのに。

 これだけカードが揃(そろ)うと一つの結論が見えてくる。

 日本人の大半は沖縄人を別種の人間と見なしている。すばらしい観光地、癒やしの島、定年後は移住もいいかもしれない、歌手と俳優の供給源。そして基地を置いておくのに便利なところ。

 沖縄の側から構造的差別という言葉が出てきている。差別といっても、日常の場でちょっと嫌いとか、あいつはねとか、そのレベルの差異感ではない。

 このカテゴリーの人たちは同じ日本国民でも一段下だからこれくらいの負担は当然、という思い込みが一都一道二府四十二県の側にある。その現物が普天間でありオスプレイなのだ。

 ここまで嫌だと言っているのに、理をつくして海兵隊が沖縄にいる必然性はないと説明しているのに、アメリカ側にもそれを支持する意見が少なくないのに、なぜ政府は無視するか。国民(マイナス沖縄県民)は目を背けるか。

 国の中の地域対立は国を揺るがす。

 一九八〇年、韓国光州事件の遠因はこの地域への構造的な差別ではなかったか。

 縁起でもないことを敢(あ)えて言う。

 二〇〇四年八月の沖縄国際大学への米軍ヘリ墜落事件で米軍はまこと横暴にふるまったが、幸いこの事故では住民への被害はなかった。今もしオスプレイが墜(お)ちて、もし一九五九年の宮森小学校米軍機墜落事件のようにたくさん死者が出たら(小学生十一人、一般住民六人)、抗議する沖縄人は基地になだれ込むだろう。米兵は彼らを撃つかもしれない。

 小説家が大げさなことを言っていると笑ってほしい。しかしこの恐ろしい妄想には現実的な土台があるのだ。(作家) 



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