[CML 022464] 限界にっぽん 大阪から:7 生活保護 (一部修正)

BARA harumi-s at mars.dti.ne.jp
2013年 2月 4日 (月) 18:43:14 JST


http://digital.asahi.com/articles/TKY201302030374.html?ref=pcviewer

限界にっぽん 第2部・雇用と成長 大阪から:7 生活保護/朝日4日朝刊

●日雇い激減、雇用保険もらえず

通称「釜ケ崎」。関西のビル建設などを担ってきた日雇い労働者の街として知られる大阪市西成区のあいりん地域。
夕方5時前、毛布や紙袋をもった数百人の人影が長い列をつくる。
寒風に身を縮めながら約30分、ようやく手にした宿泊券にかかれた番号が、シェルターと呼ばれる無料宿泊所の寝床の場所だ。

プレハブ棟のシェルターには、2段ベッドがぎっしり並ぶ。畳に保温マットを敷いただけのベッドに座り、カップ麺を食べる人。
日付の古い新聞を読む人。押し黙ったまま、大半の人たちが消灯時間の夜9時前には横になった。

「朝は早めに『寄り場』にいかないと、仕事にあぶれてしまうから」。
釜ケ崎暮らしが30年余りになるというミヤザキさん(59)も朝3時半に起きて、寄り場と呼ばれる「あいりん労働福祉センター」の車寄せに向かった。

すでに数十台のライトバンが止まり、仕事を手配する業者が声をかける。「現金(日帰りの仕事)いこうか、いこうか」

「解体 6800円」「一般土木 9000円」。車の窓ガラスに張られた求人票をのぞき込みながら、仕事を探す男たち。
だが1時間もすれば、大半の人は取り残されて、路上や公園で長い一日を過ごす。

いま仕事にありつけるのは、飯場(作業員宿舎)に寝泊まりする仕事も含めて1日に約5千~約8千人。
最盛期のバブル時の3分の1から4分の1だ。

「思えばシャープの堺工場(堺市)を建設した数年前が、にぎわった最後だった」。

この日も仕事にあぶれたミヤザキさんは、酒の臭いをさせながら吐き捨てた。「公園で寒さをしのぐのは百円焼酎。しらふじゃやりきれん」

ここでは3人に1人が生活保護を受ける。

「安い賃金で中国や韓国がテレビも洗濯機も作る。日本企業が国内に工場をつくらなくなり、日雇いの仕事が減ったのも当然だ」。
シブヤさん(64)も月約12万円の保護を受けている。

公共事業や工場建設が減る一方で、働く人の高齢化が進む。
現場では、重機を使いながら1人がいろんな作業をするようになり、年をとってもやれる片付けなどの仕事がさらに減った。

かつては月に13日間働けば、「日雇い雇用保険」から出る失業給付金で生活ができた。 

就労日数が大幅に減ったいまは、給付の条件を満たせない人が急増している。
雇用保険が事実上、崩壊し、リーマン・ショック後は数千人が路上生活や生活保護になだれこむことになった。

「労働市場からはじき出された人を無理やり、病人にしたてて施設に入れるようなこともあった。
だがもう限界だ。公的な就労支援を拡充し、雇用を確保する新しい仕掛けをつくらないと。そうすれば保護費も抑えられる。ここは日本の近未来の縮図だ」。
地域で労働者の支援にかかわってきた山田実・釜ケ崎支援機構理事長は言う。

「保護は受けたくない」という人が頼るのが、「特掃」と呼ばれる大阪府の就労支援事業だ。
約1500人が登録、地域や公園を掃除して1日5700円もらえる。だが、仕事が回ってくるのは月に5回だけだ。

「体が動くうちは、自分で稼ぎたい」。センターの2階。
床に段ボールを敷いて寝ていたサカモトさん(67)もその一人。
埼玉県川口市から大阪万博の時にここに来た。「あの頃は自分も元気だったし、日本も勢いがあった……」

「特掃」がない日は、空き缶拾いで街を歩く。
1缶で1円ちょっとの稼ぎだ。
朝方までにセンターに戻って仮眠し、夕方、並んでシェルターが開くのを待つ。その列からも生活保護に頼る人が増えるばかりだ。


●若い派遣社員も受給

生活保護の受給は、働く若者にまで広がっている。

テレビや音響機器をつくるパナソニックグループのAVCネットワークス社(大阪府門真市)の工場で働く男性派遣社員(30)も、昨年6月から保護を受けるようになった。

時給千数百円で、ボーナスはない。
多いときには、残業をして手取りで月20万円余りになるが、妻と3人の子どもを養うのには足りず、毎月数万円を保護費で補う生活だ。

「派遣とはいえ大きなカイシャで働いている。保護を受けないと暮らせなくなるとは思いもしなかった」

パナソニックが昨年、巨額の赤字決算を発表した後、工場は減産で「夏休みが長くなる」と聞かされた。
派遣の給料の計算は1日ずつ。休みが長いほど収入が減る。「これでは、やっていけないと思った」

工場の経費削減はすでにぎりぎりのところまで進む。

工員約100人の9割が派遣社員だ。
「しんどい仕事を押しつけられ、安い賃金で頑張ってきたのに」。
景気が悪くなると生産の調整弁に使われ、短い時は半年で契約を打ち切られる「雇いどめ」にあった。

3カ月ごとの契約期限が3月末に迫っている。
職場ではすでにうわさが飛び交う。「3分の1が削られる」「仕事のできるできないにかかわらず、(辞めさせる人を)くじ引きで決めるらしい」。
不安で眠れない夜が増えた。

低賃金にあえぎ、生活を揺さぶられる。唯一の支えが生活保護というわけだ。


●「逆走」政府、削減方針

社会の底割れのシグナルである生活保護を受ける世帯の数は156万4千世帯(昨年10月)で、毎月のように過去最多を更新し続けている。

保護を受けているのは、高齢者世帯が約4割を占めるが、最近は働くことができる層を含む「その他」の世帯の受給が増えている。
非正規社員の増加や賃金の低下で、仕事の稼ぎだけでは暮らせなくなっているのが実態だ。
その厳しい現実は、大阪からみえてくる。府内の非正規社員の比率は全国平均を大きく上回り、保護率は全国で最も高い。

政府は先月末、保護の基準を引き下げ、保護費の伸びを670億円削る方針を決めた。 


受給者たちに対して、「怠けている」「甘やかされている」という批判が高まっていることが背景にある。

だが、不正受給の数は約2万5千件で、全体の2%弱にすぎない。
保護を受ける資格があるのに、わずかな収入で我慢している人の方がはるかに多い。

不正に厳しく対応するのは大事だが、ごく一部の不正のために、本来は社会で支えなければならない人たちまで保護費カットの割を食うのでは本末転倒だ。
政府の「逆走」は、社会の底割れを加速させかねない。

(編集委員・西井泰之)




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