[CML 028562] 市民運動と選挙と党派性

林田力Hayashida Riki info at hayariki.net
2013年 12月 29日 (日) 14:16:52 JST


大久保青志(THE ATOMIC CAFE主宰)「市民運動と選挙──これからの社会運動をどうする」は重要なテーマを投げかけた。「日本のピンチを希望に変えるtalk talk talk!」は宇都宮氏の出馬表明によって都知事選決起集会の様相を呈したが、もともとは市民運動の連帯や規模拡大を長期的視点に立って取り組む趣旨の集会であった。その意味で大久保氏の指摘には重要な問題が内在する。

 「市民運動と選挙」は1960年代以降の市民運動・社会運動を振り返り、運動と市民型選挙について総括と問題提起する。全共闘運動の衰退で地域の中で生活密着の運動を志向する。若者や市民や女性にアピールする運動を目指す。「政党という党派性を排除した、政策・選挙・運動を一体として取り組める社会運動体を展望できないか」と問題提起した。

 党派性の否定は集会全体に共通するものである。宇都宮健児氏もイデオロギーを超えた共同を訴えた。中山武敏弁護士も宇都宮氏が無党派で活動してきたことを強調した。直近の課題は東京都知事選挙であり、首長選挙ではバリバリの政党人でも無所属として出馬する慣行になっている。東京都知事選挙の選挙戦術として党派性の否定は結構なことである。

 一方で大久保氏の主張は宇都宮氏や中山氏より一歩踏み出している。異なる党派が存在することを認識した上で共同を目指すことと、党派性そのものを否定することには差がある。この党派性にどう向き合うかは市民運動の将来について考える上で大きなテーマとなる。

 管見は政治を扱う以上、党派性を排除できないと考える。議会制民主主義の歴史は会派と共にあり、会派を否定したら議会制民主主義は成り立たない。これは既存政党は全て支持できないという主張とは別次元の問題である。「自民党から共産党まで現存する政党は全て体制内批判派も含む体制派である。大企業の土建政治を否定する政党も中小企業や労働者におこぼれが落ちる土建政治は推進し、既得権益を擁護する」。このような主張には賛同する部分がある。

しかし、目の前の全ての政党が愚劣であり、党利党略と既得権益擁護しか眼中にないからといって、党派を否定することは論理の飛躍がある。愚劣な党派には、まともな党派をぶつけることが解決策になる。

かつて橋下徹大阪府知事(当時)や河村たかし名古屋市長が地方議会と対立して喝采を浴びたことがあった。しかし、結局のところ、彼らは自分の主張を支持する新党を結成することになった。両氏の主張を支持するか否かは別問題であるが、両氏の立場に立つならば、それが議会制民主主義の下での正しい解決策である。

そして党派ができれば個人の恣意に歯止めが働く。たとえば公営企業の民営化は支持しても、外資への叩き売りは造反が生じる。それが首長の意向であるとしても唯々諾々と従うことはない。民主主義における党派の効用である。

 一方で大久保氏のような立場が党派性を否定する結論に行き着く結論も理解できる。もともと住民投票など直接民主主義を志向する人々が多い。それ故に「議会制民主主義の歴史は会派と共にある」と主張したところで、議会制民主主義自体を乗り越えようとする立場には説得力がない。

さらに大久保氏が指摘したように日本の再狭義の市民派は各地の議会に一人当選させることが精一杯という実態がある。しかも、その当選する一人は党派の力ではなく、個人の魅力・知名度に負うところが大きい。この状況で当選議員に議会の中で人数以上の存在感を発揮してもらうためには、会派という仕組みを否定した方が得策である。

ここで注目は緑の党の評価である。緑の党は従来の再狭義の市民派諸勢力と比べると、近代政党を志向する。このような評価は緑の党には不本意であることは承知している。緑の党は共同代表や地方組織など近代政党のアンチテーゼを提示しているためである。しかし、従来の再狭義の市民派諸勢力との比較という観点では党組織を強固にしており、近代政党的である。これは無所属・無党派の枠から飛び出し、自らの党派性を出した動きである。
http://www.hayariki.net/tobu/talk.html
 参議院選挙の結果は緑の党も従前の市民派諸勢力と変わらない結果となった。それ故に大久保氏が党派性否定の結論を志向することは筋が通る。緑の党が無所属議員のネットワークであり続けるか、独自の党派として成長するか分岐点に立っている。

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林田力Hayashida Riki
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