[CML 026110] 日治か、日拠か 台湾、植民地支配どう表記 歴史教科書めぐり論争

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2013年 8月 27日 (火) 08:50:51 JST


新聞記事・朝日新聞・8月27日朝刊

日治か、日拠か 台湾、植民地支配どう表記 歴史教科書めぐり論争
http://digital.asahi.com/articles/TKY201308260665.html?ref=pcviewer
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戦前50年、日本に植民地支配された時代を何と呼ぶか。台湾で最近、
議論が起きた。
統治を意味する「日治」で近年は定着していたが、批判的なニュアンスを
含む「日拠(據)」が盛り返している。
どちらを使うかは台湾の歴史をどう考えるかに直結する問題だ。


 議論になったのは7月。
民間出版社「史記文化事業(史記)」が新たに作った高校1年向けの
3種類の歴史教科書で、日本の植民地統治を「日拠」と記したのが
きっかけだ。
「日拠」には日本の軍事占拠や不法な占拠といった意味合いがある。

 台湾ではこれまで、教科書の内容を定める検定基準で「日本統治時期」
「日本植民統治」という中立的な表現を使用。
検定委員会は略称を「日治」とするよう業者に指導してきた。

 そこにあえて挑戦した理由を、史記の周世雄社長は「歴史を元通りの
姿に戻すためだ」と説明する。

 根底にあるのは、台湾人も中国人だという「中華民族」としての意識だ。
編纂を主導した張亜中・台湾大学教授(政治学)は中台の統合を訴え、
中国との関係が深い人物だ。
日清戦争の末、清朝が台湾などを日本に譲った1895年の下関条約に
ついて「後に無効が確認されており、日本の統治は不法」と主張する。

 「日治」表記についても、「日本がやったことは清朝と同じという考え方。
すべて外来政権との立場で、(台湾を中国と分ける)台湾独立派の
主張だ」と批判する。

 検定委ははじめ、問題の教科書をすべて不合格とした。
ところが、地元メディアで取り上げられると議論が百出。馬英九(マー
インチウ)総統は7月中旬、退役軍人の会合で「私は小さい頃からずっと
『日拠』と言ってきた。
だが、他の人が『日治』と呼ぶことに反対するわけではない」と発言した。

 それでも、議論は沈静化せず、圧力にさらされた教育部(文部科学省
に相当)は結局、教科書で「日治」と「日拠」の双方の表記を容認。
行政院(内閣)はさらに踏み込み、「主権と民族の尊厳のため」として、
公文書では「日拠」に統一することを決めた。

 周氏によると、3種類の教科書のうち1種はすでに検定を合格したという。
9月からの新学年に向けた各校の教科書選びは終わっており、導入は
間に合わないが、今後教師らに採択を働きかけていくという。

 高校歴史教科書の検定委員を務める中央研究院近代史研究所の
黄克武所長は、「これまで『日拠』を『日治』に変えさせられていた
教科書の中に、『日拠』に戻す動きも出てくるのではないか」と話す。


 ■政権交代、揺り戻し

 「日拠」か「日治」か。その変遷はときの政権の立場と重なる――。
教科書作りに長く携わった王仲孚・元台湾師範大学教授(歴史学)は、
こう指摘する。

 日本の敗戦後、台湾は当時中国を治めていた国民党政権の「中華
民国」の統治下に。
その後、1949年に中国大陸では共産党政権の「中華人民共和国」が
成立。
内戦に敗れた国民党は台湾に逃れ、「中華民国」としての統治を続けた。

 国民党は台湾で一党独裁体制を敷き、その下では「中華民国」の立場
から歴史教育が行われた。
49年以前は大陸を含めた中国の歴史、それ以降は台湾に逃れた後の
歴史、というわけだ。
大陸で日本と戦った国民党の対日感情は厳しく、この頃は「日拠」の
表記に統一されていた。

 これを大きく変えたのが、台湾生まれで初の総統になった李登輝氏
(在任88~2000年)の登場だ。
台湾を本土として認識する動きが強まり、中国と台湾の歴史を切り分ける
考え方が出てきた。
国民党以前の台湾独自の歩みにも目を向けるべきだというわけだ。

 教育でも97年、台湾の歴史を中国史と切り離して教える「認識台湾」を
中学の新教科に。
日本統治も中立的にとらえ、「日本植民統治時代」「日治」と表記。
経済発展や衛生面など日本統治の肯定的な評価も取り上げられるように
なった。

 台湾独立志向の強い民進党政権が00年に誕生すると、「脱中国化」が
さらに加速。
「日拠」の表記が認められなくなり、「日治」に統一された。
06年からは、高校でも台湾史と中国史を別々に教えた。

 今回の動きは、国民党による08年の政権奪還を受けた揺り戻しと言える。
史記の教科書は「日拠」に変えただけでなく、ほかの内容も以前の国民党
体制下のものに近い。

 教育部の決定で問題は収まったが、専門家の意見は今も割れている。
王氏は「教科書は普通の本と違い、どの国でも国の立場に沿った内容だ。
『日拠』に統一すべきだ」。
一方、検定委の黄氏は「長い議論の末に共通認識ができ、『日治』とすべきだ
という検定基準になった。
混在させて生徒を混乱させるべきではない」と話す。

 (台北=鵜飼啓)



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