[CML 025793] 状況の危機は、言語の堕落からはじまる(2)――古舘伊知郎はもしかしたら麻生発言(「ナチスの手口に学んだらどうかね」発言)をほんとうに「ナチスを肯定した発言ではない」と見ているのかもしれない

higashimoto takashi higashimoto.takashi at khaki.plala.or.jp
2013年 8月 6日 (火) 14:10:18 JST


私は先の記事で報道ステーションの「麻生『ナチス発言』」特集ビデオをご紹介した際、同番組コメンテーターの恵村順一郎(朝日新聞
論説委員)の「(麻生副総理の)ナチスを肯定するような発言」云々の発言を「肯定しているのではないか、と誤解されるような発言(と
いうことですね)」とすぐに訂正コメントを入れた同番組メインキャスターの古舘伊知郎の発言姿勢(下記のURLビデオの10:38頃~)
について「ジャーナリストの位置にいる者としてはきわめてお粗末な対応」、と批判をしておきました。
http://bit.ly/190umK0
http://mizukith.blog91.fc2.com/blog-entry-632.html

しかし、その私の古舘批判は、麻生副総理の「ナチス発言」撤回表明をも報道する立場にいる者として、麻生の「私の発言がナチスを
肯定しているという捉え方は誤解」という釈明があったことを念頭においた上での古舘の訂正コメントであった、という私のそのときの
状況理解を前提にした上での批判にすぎないものでした。

しかし、よくよく考えると上記の古館の訂正コメントは、麻生の「ナチスの手口に学んだらどうかね」発言をほんとうに「ナチスを肯定した
発言ではない」と古館自身が判断した上でのコメントではなかったか、といま思い直しています。そうであれば、古館発言は、ジャーナ
リストの眼を持った者の発言としては「お粗末」という以前の問題として、決定的にジャーナリストとしての眼そのものを欠損させた者の
発言としてさらに厳しく批判されなければならない質の訂正コメントであったように思います。

麻生発言が「ナチスを肯定した発言というのは誤解」という見方はある一定の層に広く流布されている見方、考え方です。その代表的
なものが橋下大阪市長の「(麻生発言はナチスを)正当化した発言でないのは国語力があればすぐ分かる」というものでしょう。
http://www.47news.jp/47topics/e/244364.php

橋下氏がここで「国語力」を持ち出しているのは、麻生発言の前半部分のたとえば「ワイマール憲法という、当時ヨーロッパでもっとも
進んだ憲法下にあって、ヒトラーが出てきた」という発言(朝日新聞「麻生副総理の憲法改正めぐる発言の詳細」参照)には麻生氏が
ナチスを「悪」と判断しているニュアンスが感じられるからです。そこで「(麻生発言はナチスを)正当化した発言でない」と解釈する余
地も出てきます。前述で私が「古館の訂正コメントは、麻生の「ナチスの手口に学んだらどうかね」発言をほんとうに「ナチスを肯定し
た発言ではない」と古館自身が判断した上でのコメントではなかったか、といま思い直しています」と言っているのはそういうことです。
http://www.asahi.com/politics/update/0801/TKY201307310772.html

ここのところの麻生発言の文脈を整合的に理解した上での「麻生発言」批判でなければ、上記のような「麻生発言」擁護論者、また、
その論を首肯する一定の市民層を説得することはできないでしょう。むしろ、そうした「理解」なしに「麻生発言」を批判しても、「麻生
発言」擁護論者、また、その論に影響された市民たちから「お前たちには国語力がない」などという見るも無惨な返り討ちにあうのが
オチというものでしょう。

こういう論理の問題があることに気がついたのは、「麻生太郎のナチス発言を国語の受験問題的に分析してみる」(ナベテル業務日
誌 2013年8月2日)、また、「麻生発言はナチ肯定なのか?」(紙屋研究所 2013年8月3日)という論に学ぶところが大きかったから
です。

「ナベテル業務日誌」の筆者(渡辺輝人弁護士・京都)はこの論理の問題について次のような解を与えています。正答だと私も思い
ます。

      「(この問題を)受験的に言うなら、いわゆる『二項対立』の発言だと言うことが分かる。対立しているのは赤字を付した『狂
      騒』『怒鳴りあい』『物議』『騒ぎ』『騒がれた』『騒ぎます』『喧噪』に対して青字を付した『静か』『静かに』『わーわー騒がない』
      という言葉だろう。そして、麻生太郎が後者の青字のカテゴリーに軍配を上げ、そちらの方向性を好み、肯定していること
      も読み取れる。」

以下、それぞれの論のアドレスだけを示しておきます。それぞれの論の詳細についてはアドレスをクリックしてご参照ください。

■「麻生太郎のナチス発言を国語の受験問題的に分析してみる」(ナベテル業務日誌 2013年8月2日)
http://nabeteru.seesaa.net/article/370956778.html

■「麻生発言はナチ肯定なのか?」(紙屋研究所 2013年8月3日)
http://d.hatena.ne.jp/kamiyakenkyujo/20130803/1375502413

大事な視点だと思います。

さて、はじめの問題に帰ります。「古舘伊知郎はもしかしたら麻生発言(「ナチスの手口に学んだらどうかね」発言)をほんとうに
『ナチスを肯定した発言ではない』と見ているのかもしれない」ことに気がついたのも上記の論に学んだところが大きいということ
でもあります。報道ステーション・メインキャスターの古舘伊知郎の責任は(その影響力という点で)大きいのです。心して上記の
「国語」問題を解いてみていただきたいものです。


東本高志@大分
higashimoto.takashi at khaki.plala.or.jp
http://mizukith.blog91.fc2.com/ 



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