[CML 023959] 「東シナ海を平和の海に!尖閣問題講演会」

泥憲和 n.doro at himesou.jp
2013年 4月 29日 (月) 18:41:00 JST


 昨日、「東シナ海を平和の海に!尖閣問題講演会」に参加しました。
 前田朗さん、貴重なお話を有り難うございました。

 日本政府が尖閣諸島領有の法的根拠としている無主地先占の法理について、
西欧帝国主義の強奪を合理化する怪しい理論だと思っていたのですが、
前田さんの解説で本当にとんでもない理屈だと知って驚きました。

 河口を「発見」したらその流域全部が発見国のものになるなんて、
まさに強欲を絵に描いたような論理です!
 こんな法理で尖閣の領有を合理化しているんですね、わが日本国は。

 しかしもう一人の岡田充さん(共同通信論説委員)が述べておられたように、
領土問題は魔力を持っています。
 どんな政府であれ、もしも領土を放棄するなどと言ったとたんに国民の非難を浴びて、政権を失うのは確実ですからね。
 どんな政権になっても、日本政府が自ら尖閣を手放すことは、考えがたい。

 いろいろ問題はあるけれど、第二次世界大戦終結時に定まった国境を既定のものとして呑むしかないのではないかというのが私の意見ですが、
竹島と尖閣はその解決法が当てはまらないので厄介です。
 かといって、尖閣をテーマにした二国間交渉で解決できるかも、疑問です。
 双方とも話し合いで変に妥協すると、国民のしっぺ返しを食らいますからね。
 お互いに国内の反発が怖いので、どうしても非妥協的な言い合いになってしまう可能性が高い。
 
 海底の共同開発が合意できればいいけれど、中国の国内からはきっと
「全部我が国のものなのに、どうして権益を半分もくれてやるのか、政府は日本が怖いのか」
なんて批判がわき上がるでしょう。
 そういう兆しが見えたら、中国政府も引くに引けなかろうし。
 お互いに妥協できないなら、はじめから交渉なんかしなければよかったということになりかねません。

 もうひとつ心配なのが、交渉失敗がそれだけに留まらない場合があり得ると考えるからです。

 中国が勝手なことを言っているだけだという態度を貫いて交渉しないなら、日本が有効支配している分だけ日本に有利です。
 しかし交渉する−すなわち係争地であることを承認したら、中国にも何ほどかの言い分があることを認めたことになります。
 すると国際的には、双方の言い分が五分五分になってしまうと聞きました。
 国際司法裁判だと支配の実態は考慮されないとか。
 五分五分にするのが危険なのは、相手にごり押しできる条件を与えることになるからです。
 二国間協議でごり押しの条件を与えると、
武力解決へのしきいを低くするのではないかなと、危惧するのです。
 平和を求めているつもりが、かえって力ずくの解決を誘発することになりはしまいか、 

そういう不安を覚えたのですが、いかがでしょうか。

 尖閣問題は日本と中国の問題ですが、中国と武力まじりの領土紛争をかかえている周辺国にとって他人事ではないし、
前田さんが答えられたように米国のプレゼンスにも関わるし、そういう意味でもなかなか難しいと思いました。

 でも、前田さんはご存じでしょうけどシンガポールとマレーシアの領土領海紛争が、 

数年前に国際司法裁判所で決着し、両国とも平和的に受諾しましたよね。
http://www.sof.or.jp/jp/monthly/monthly/pdf/200805.pdf#page=16
(直接飛べない場合はhttp://www.sof.or.jp/jp/monthly/monthly/index.phpから2008年をクリックし、2008年5月版で「ホット・トピック:国際司法裁判所、マレーシア・シンガポール係争岩礁の帰属に判決」をクリック)

 メディアは感情的にあおりたてるばかりでなく、
前田さんが紹介しておられた中国と他国の領土問題の解決とか、
平和的解決を主流にしようと世界は動いていることを、もっと報道してほしいものです。 


 そういった実績を知ることによって、領土の魔力が幾分かでも力を失えば、
 道は遠いけど、いつか平和的な交渉で譲り合える気運が出てくるかも・・・そのように願います。 



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