[CML 023550] Re2: 人間として「アンチ朝鮮人デモ」をもはや等閑視することは許されない!!

higashimoto takashi higashimoto.takashi at khaki.plala.or.jp
2013年 4月 7日 (日) 08:50:48 JST


前田さん

「ですから、人種差別禁止法とヘイト・クライム法が必要なのです」という結論に到るご説明はよく理解できましたし、前田さんの
法律解釈も抽象レベルではそのとおりなのでしょう。しかし、なにか釈然としませんね。前田さんの法律解釈論では、私たちは、
これほどの「憎悪」をむき出しにした文字どおり「犯罪」と呼ぶほかない排撃的な言語暴力としての朝鮮人・韓国人差別を目の
前にしてもなんら為す術もなくただ拱手傍観して立ち竦むほかないということにならざるをえないからです。どう考えても理不尽
です。

私が先に紹介した弁護士有志12人が物した「人権救済申立書」中の「『よい朝鮮人も悪い朝鮮人も、みんな殺せ』(甲6)『韓
国≠悪、韓国=敵 よって殺せ』(甲7)『朝鮮人、頸つれ、毒飲め、飛び降りろ』(甲8)以上のような発言及びプラカードは、明ら
かに常軌を逸しており、とりわけ、大量殺人の煽動は刑法の騒乱罪(刑法106条)、営業妨害は威力業務妨害罪(234条)、
歩行者や店員に対して向けられた発言は、脅迫罪(刑法222条)、侮辱罪(231条を構成する」という文言は、同じく弁護士有
志の「声明」中の「5 また、上記の集団行進や周辺への宣伝活動において一般刑罰法規に明白に違反する犯罪行為を現認
確認したときは、当該実行行為者を特定したうえ、当該行為者と背後にある者に対して、その責任追及のためのあらゆる法的
手段に及ぶことを言明する」という決意の言葉とセットになっている言説であろうと思います。

すなわち、前者の文と後者の文は一対の関係にあって、前者の文によって犯罪の一般的な該当用件を示した上で、その具体
論を後者の文で示すという構成になっているように思います。「一般刑罰法規に明白に違反する犯罪行為を現認確認したとき
は、当該実行行為者を特定したうえ、当該行為者と背後にある者に対して、その責任追及のためのあらゆる法的手段に及ぶ
ことを言明する」、と。

その弁護士有志の「犯罪」特定に到る(到ろうとする)論理構成を「はい。間違いです」と一蹴するのはそれこそ「間違い」という
べきではないでしょうか。同じことの繰り返しになりますが、前田さんの論では私たちは「ヘイトクライム法」が成立するまでは拱
手傍観するほかないということにならざるをえないのです。



東本高志@大分
higashimoto.takashi at khaki.plala.or.jp
http://mizukith.blog91.fc2.com/

━━━━━━━━━━━━Original Message Started━━━━━━━━━━━━
From: maeda at zokei.ac.jp
Sent: Saturday, April 06, 2013 10:42 PM
To: 市民のML
Subject: [CML 023542] Re: 人間として「アンチ朝鮮人デモ」をもはや等閑視することは許されない!!
前田 朗です。
4月6日

東本さん

はい。間違いです。

第1に、性質の異なる犯罪類型を次々と列挙している点で、理解に苦しみます。
社会的法益も個人的法益もごっちゃになっています。

第2に、騒乱罪について言えば、大須事件、吹田事件、メーデー事件から新宿騒
乱事件に至る判例を知っていれば、このような書きかたができないことは、すぐ
にわかることです。刑法理論をご存じない東本さんに説明するのはなかなか難し
いのですが、刑法総論や刑法各論の教科書をご覧になれば、「危険犯(抽象的危
険犯、具体的危険犯)」という概念で説明されていますので、ぜひご覧になって
ください。

もし、東本さんの主張をいったん認めてしまえば、労働争議で団交要求のために、
無責任に逃げ回る社長宅前に行ってシュプレヒコールをあげることができなくな
ります。

なお、「殺人の教唆(煽動)」にもあたりません。個人に対する殺人の教唆(煽
動)ではないので、被害者を特定できないためです。

他方、国際刑法では「ジェノサイドの煽動」が犯罪です。しかし、日本にはジェ
ノサイドの罪がありません。仮にあったとしても、本件で「ジェノサイドの煽動」
が成立すると考える法律家はいないでしょう。具体的危険性の概念が問題になり
ます。

第3に、威力業務妨害罪について言えば、個人又は法人が被害者になりえます。
京都朝鮮学校事件で在特会メンバーが有罪になったのは、学校の前で大騒ぎして
授業を妨害したからです。被害者は京都朝鮮学校です。「犯行者の認識における
攻撃対象」と「実際の被害者」とが一致しています。一致がなければ、立件は困
難でしょう。

第4に、「通りかかった歩行者に対する脅迫罪」などということは、法律家なら
考え付きません。政治論として主張しているに過ぎないでしょう。脅迫罪は、暴
行罪と並んで議論されます。刑法各論の教科書をご覧になれば、「暴行・脅迫の
概念」という項目があります。4つの概念が区別されていますので、ぜひご覧に
なって勉強してください。4つのうちどの概念に相当するのかを考えることが重
要です。法学部の2年生なら何度も読んで勉強している話です。なお、「通りか
かった歩行者が抗議してきて、その歩行者に対して直接脅迫がなされた場合」は
話が別です。

第5に、侮辱罪について言えば、京都朝鮮学校事件で在特会のメンバーは侮辱罪
で有罪になっています。朝鮮学校の「法人」が被害者です。朝鮮学校の前で「朝
鮮学校はスパイ学校」と叫んだから、被害者を特定できたのです。鶴橋で「朝鮮
人を殺せ」と叫んだ場合は、被害者を特定できません。歩行者や店員が被害者と
いう解釈を認めてしまえば、恐るべき事態になります。

何度も繰り返して恐縮ですが、刑法総論と刑法各論の教科書をぜひ一度ご覧にな
ってください。

東本さんが引用されている申立書は「運動」(被害者救済、被害拡大防止)とい
う意味でとても重要なもので、私もあちこちに転送して宣伝しています。弁護士
12人のうち11人は直接知り合いで、かねてから尊敬する弁護士たちです。

しかし、そこに書かれている刑法解釈は、刑法学者にも検察官や裁判官にもちょ
っと通用しません。書かれているのは、何とかして被害を食い止めたい思いで、
使える法律はないかと次々と並べてみたというものです。被疑者、被害者、被害
事実の特定がなされていませんし、まして犯罪成立要件の検討もなされていませ
ん。

ロート製薬事件では直接の被害者に対する強要罪が成立しました。京都朝鮮学校
事件では、威力業務妨害罪、器物損壊罪、侮辱罪が成立しました(現在、民事訴
訟が続いています。私は弁護団の要請で、裁判所に出す意見書を書いているとこ
ろです)。水平社博物館差別街宣事件では、立件されませんでした(民事訴訟で
水平社博物館が勝訴しましたが)。その意味で、何か使える刑法の条文はないか
と探すことは必要ですが、犯罪成立要件を満たしているかどうかきちんと検討す
るべきです。

また、在特会の桜井誠こと高田誠会長はずっと以前から、何十回と「朝鮮人を殺
せ」「朝鮮人を海に叩き込め」と叫び続けています。これが日本では犯罪になら
ないと知って叫んできたのです。何も最近になって始まったことではありません。

残念ながら、こういう人物を刑務所に入れることがなかなかできません。京都朝
鮮学校事件の被告人の一人は有罪で執行猶予中に水平社博物館事件を引き起こし
たので、実刑で刑務所に入れるチャンスだったのですが、奈良県警、奈良地検が
動きませんでした。

ですから、人種差別禁止法とヘイト・クライム法が必要なのです。

もっとも、私は法制定を主張していますが、この間の、朝日新聞、毎日新聞、東
京新聞の記事をご覧になれば、「法規制よりも表現の自由を」という主張が並ん
でいます。「表現の自由」のはき違えも甚だしいのです。

ではまた。
━━━━━━━━━━━━Original Message The end━━━━━━━━━━━━ 



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