[CML 021035] ジュネーブ報告記◆Г佞しま集団疎開裁判の柳原敏夫さん

Yasuaki Matsumoto y_matsu29 at ybb.ne.jp
2012年 11月 17日 (土) 20:33:48 JST


みなさまへ    (BCCにて)松元

先月末、ジュネーブの国連人権理事会に福島の惨状を訴えに行った「ふくしま集
団疎開裁判」の弁護団柳原敏夫さんの報告を紹介させていただきます。 重たい
メッセージです。

ガザも戦争ですが、日本も戦争です。嘘と誤魔化しから子どもと未来を守り自然
を回復する戦争です。昨年4月にガザで殺害されたイタリアの活動家 ヴィットリ
オ・ アッリゴー ニのシンボルメッセージが「人間になるために」でした。奇し
くも以下の柳原敏夫さんのメッセージも「人間になるために」です。いま世界の
民衆は、 同じ境遇 にあるようです。

「ジュネーブ報告記」4回分を2回に分けて配信いたします。

■ふくしま集団疎開裁判ブログ
http://fukusima-sokai.blogspot.jp/

======以下、転載=====

◆ジュネーブ報告記(3)3.11以後―天地がひっくり返った―(弁護団 柳原敏夫)

3.11 の原発事故は、私にとって自分があと百年どころか、千年生き永らえ
たとしても二度と体験できないと思えた未曾有の事故だった。しかし、当 時、
この認識を回 りの人々と共有することは困難だった。というのは、この惨害は
原発周辺以外は目に見えず、臭いもせず、痛みも感じない、要するに私たちの
日常感覚に頼る限 りぜったい理解できないものだから。ひとたび日常感覚に
頼ってしまったら、3.11以後の光景も3.11以前と何も変わらない、つま
り事 故はなかったも同 然に見えるから。

し かし、たとえ放射能の異常を日常感覚で理解することが困難でも、日常感覚
で理解可能な異常事態が1つだけあった――政府・原子力ムラ・御 用学者・御用
マスコミの対応ぶりである。それまで羊のように大人しく飼いなされていた私た
ち市民もさすがに「福島県の学校の安全基準を20倍 にアップする」「健康に直
ちに影響はない」「国の定めた基準値以下だから心配ない」‥‥に天と地がひっく
り返る位思い切り翻弄された。天 と地がひっくり返 る極限形態が戦争である。
普段なら殺人という凶悪犯罪が戦争では英雄行為と賛美される。普段なら不登
校、辞職といった離脱(逃走)行為が 戦争では死刑に処 せられる重大犯罪とさ
れる。この意味で、3.11以後、私たちは戦争状態にある、福島原発から放出
された大量の放射性物質から発射される 放射線の絶え間の ない攻撃という意味
での核戦争の中に。

ふくしま集団疎開裁判が起こされた郡山市に 何度か通ううちに、郡山市が事実
上戒厳令状態にあることを知った。ここに住む以上、人々は、正直に、思ったま
まのことを言うことはできな い。
それは福島県の殆どの市町村も同様である。
のみならず、日本全体も、事実上、戒厳令状 態にあることが判明した。世界で
は、いま、福島の子どもたちの救済を求める様々な声が上げられている。ノーベ
ル平和賞を受賞した医師の国 際的団体「核戦争防止国際医師会議
<http://www.ippnw.org/>」 は、昨年と本年の8月に、くり返し、以下のように
述べ、年間1ミリシーベルトを超える地域に住む子どもたちの避難の必要性を表
明した。

    「国際的に最善といえ る水準の放射線防護策を実施するには、いっそうの
    避難が必要です。私たちはそれ以外 に方法はないと考えます。」(11.8.23
    原文 <http://peaceandhealthblog.com/2011/08/23/ippnw-pm-kan-
    fukushima/>)
    「一般公衆の医療行為以外での付加的な被ばくの許容線量は、すべ ての放
    射性核種に対する外部被ばくと内部被ばくの両方を含めて、合計年間1ミリ
    シーベルトに 戻されるべきです。これは特に子どもと妊婦にとって重要で
    あり、一刻も早く実施されるべきです。」(11.8.23原文
    <http://peaceandhealthblog.com/2011/08/23/ippnw-pm-kan-fukushima/>)
    「子どもや子どもを出 産できる年齢の女性の場合には1ミリシーベルトを
    超えることが予想されるときには、彼らが移住を選択する場合に健康ケア、
    住居、雇 用、教育支援および補償が公正かつ一貫した形で受けられるよう
    にしなければならない。」(12.8.29 原文
    <http://fukushimasymposium.files.wordpress.com/2012/08
    /20120829_ippnw_recommendations_fukushima.pdf>)

しかし、いったい日本の医師たちのどの団体 から、これと同様の避難の必要性
を表明した声明がなされただろうか。
「教え子を再び戦場に送るな」から戦後をス タートにした日本の教師たちと教
育者たちのいったいどの団体から、同様の、子どもたちの避難の必要性を表明し
た声明がなされただろうか。
これまで、憲法9条を守れと叫ぶ平和主義者 や文化人たちのいったいどの団体
から、子どもたちの避難の必要性を表明した声明がなされただろうか。
この異常極まりない事態はいったい何に由来 するのか。
それは、いま、日本が再び、ある種の戦争状 態に突入したからで、日本全体が
見えない戒厳令状態にあり、多くの専門家、知識人、文化人たちが、「命を守
る」のではなく「祖国防衛」(経済復興)の側に 回ってしまったからにほかな
らない。

であれば、戒厳令のない場所で、福島の惨状 を訴えよう。これを試みない理由
はない。それ以後、この認識を共有できる人をひそかに求めていた。そこで出
会ったのが双葉町長の井戸川さんだった。10月30日の本 番2週間前、それまで
一度しか会ったことのない私に、彼は「ジュネーブに行きたい」と言い出した。
福島の惨状、福島の真実を世界に伝える という伝道者としての決意がそれを言
わせたのだ。それは冒頭に紹介した彼の原稿
<http://fukusima-sokai.blogspot.jp/2012/11/blog-post_8579.html>に現れて
いた。


2012年11月16日金曜日
◆ジュネーブ報告記(4)人間になるために―ぼくに炎の戦車を―(弁護団 柳原敏夫)

これまでに何度も述べた通り(8.24官邸前スピーチ「なぜ福島の子ども達の集団
疎開は検討すらされないのか」
<http://fukusima-sokai.blogspot.jp/2012/08/blog-post_25.html>な ど)、日
本政府 くらいチェルノブイリ事故から学び尽くした者はいない。彼らの
SPEEDIの情報隠しも、避難地域拡大防止のためにソ連政府が行 なった情
報隠しから学んだ成果の実行にすぎない。

チェルノブイリ事故でソ連政府がタブーにし た最大のものが2つあって、その
1つが子ど もたちの被ばくデータである(「ネットワークでつくる放射能汚染
地図 <http://www.nhk.or.jp/etv21c/file/2011/0515.html>」のプロデューサー
七沢潔「原発事故を問う――チェルノブイリ からもんじゅへ」137頁)。日本
政府もソ連政府の忠実な教え子として、子どもたちの集団避難をタブーと決めた。

なぜ、そのような決断をしたのか――ベトナ ム戦争の米軍による枯葉剤散布で最
も深刻な 被害が出たのは子どもだったように、長期にわたる低線量被ばくによ
る最 大の被害は子どもに出るから。子どもたちの被ばくに関するデータが明ら
かになると、原発事故で子どもたちがどれほど深刻な、どれ ほど悲惨な被害を
受ける か、これが人々の前に明らかになる(チュルノブイリ事故で多重先天障
害 を負った子どもたちの写真
<http://1am.sakura.ne.jp/Nuclear/Chernobyl-child.jpg>参 照)。なおかつ、
深刻な被ばくから子どもたちを救うために集団避難を実施するとどれくらい大規
模なプロジェクトになるか、これも 人々の前に明らかになる。 その結果、誰も
が、二度と、決して、原発事故はあってはならないと、深く確信するようにな
る。そして、二度とこのような悲惨な事 故を起こさないために、二 度と、決し
て、原発は稼動してはならない、廃炉にするしかないと、深く確信するようにな
る。多くの人々がこの不動の確信を持つに 至ること、それをソ連政府 も日本政
府も最も怖れた。だから、必死になって子どもたちの被ばくデータを隠すことを
決めた。

真実は――ふくしまの子どもたちは、原発推 進者たちが今後とも原発推進をやり
続けるた めに、「原発事故が起きてもたいしたことはない、問題ない。」と言
い続 けるための「盾(たて)」として使われたのだ。子どもたちは福島県立医
大のただの患者ではない、原発推進者たちの最大の犠牲者、 否、彼らが生きの
びるため のいけにえにされたのだ!

これ以上考えられないほど理不尽極まりない 不正義に対して、はっきりノー!
という声を 上げる者がいるぞを世界に示すのが今回のスイス・ジュネーブの国
連行きの目的だった。
だが、国連はIAEAのような国際原子力ム ラの牙城ではないのか?しかし、
我々が行っ たのは国連の人権理事会である。それは人類普遍の原理である人権
を鏡として問題を明らかにする場である。

人権を定めた憲法の基本書(例えば宮沢俊義 「憲法供廖碧[С愾棺検法砲魄貪
でも手に したことがある人なら、もともと近代憲法の出現が世界史の奇跡であ
るこ とを知るはずである。なぜなら、それまでの法律は我々市民に対し「〜し
てはならない」と命じるものであったのに対し、近代憲法に おいて初めて、市
民ではな く、国家に対し、お前は「〜してはならない」と命じ、しかも、我々
市民の生命・自由・人権を奪ってはならないと命じたからであ る。このとき天
と地がひっくり返ったのである。それは世界史の奇跡と呼ぶほかない(国家主義
者たちはこの事実を隠そう、隠そうと 必死だが)。

その近代憲法が定めた人権の本質が「抵抗 権」である。それは「個人の尊厳か
ら出発する 限り、どうしても抵抗権を認めない訳にはいかない。抵抗権を認め
ないこ とは、国家権力に対する絶対的服従を求めることであり、奴隷の人民を
作ろうとすること」(宮沢俊義「憲法供廝隠沓格如砲世らで ある。

しかし「抵抗権」とはさかのぼれば、生命そ のものを鏡にして得られた理念で
ある。なぜ なら、自然界では生命体も含めてすべての物理現象に押し寄せるエ
ントロ ピー増大の法則が存在するが、生命とは、この「無秩序に向かうエント
ロピー増大の法則にたえず抵抗して、生命体の秩序を維持する あり方」(福岡
伸一氏が命 名した「動的平衡」〔生物と無生物のあいだ
<http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%9F%E7%89%A9%E3%81%A8%E7%84%A1%E7%94
%9F%E7%89%A9%E3%81%AE%E3%81%82%E3%81%84%E3%81%A0>〕 164頁〜)のことで
あり、この意味で抵抗とは生命そのものの営みである。私たちの「生きたい!」
という渇望と行動が「抵抗」そ のものなのである。「生き たい!」という渇
望・行動が止まない限り、「抵抗」が止むこともない。逆に「抵抗」をやめたと
き、それは生きる屍である。生きる 屍はなく、生きた人間とな るために抵抗が
不可欠なのである。「命を守る」私たちの取組みこそ人権理事会で取り上げる議
題として最もふさわしい。

18世紀に世界史の奇跡として出現した近代憲法(ヴァージニア憲法3条
<http://fukusima-sokai.blogspot.jp/2011/12/blog-post_16.html>やフランス
人権宣言など、これらは改めて声に出して読みあげ る価値がある)は、人類普
遍の原理として300年後の「命を守る」私たちの取組みに尽きることのない勇
気と激励を鼓舞してくれ る。その人権宣言を詩(うた)にしたのが、同じ18
世紀の詩人ウィリアム・/ブレイクである。彼の/預言詩『ミルトン』(Milton)
の序もまた世界史の奇跡のように、私たちに無限 の勇気と激励を与えてくれ
る。以下はその21世紀版である。

And did those feet in ancient time,
Walk upon Fukushimas mountains green:
And was the holy Lamb of God,
On Fukushima pleasant pastures seen!

古代 あの足が
ふくしまの山の草地を歩いたというのか
神の聖なる子羊が
ふくしまの心地よい牧草地にいたなどと

And did the Countenance Divine,
Shine forth upon our clouded hills?
And was Jerusalem builded here,
Among these dark Satanic Mills?

神々しい顔が
雲に覆われた丘の上で輝き
ここに エルサレムが 建っていたというのか
こんな闇のサタンの工場のあいだに

Bring me my Bow of burning gold:
Bring me my Arrows of desire:
Bring me my Spear: O clouds unfold!
Bring me my Chariot of fire!

ぼくに燃える黄金の弓を
希望の矢を
槍を  ああ 立ちこめる雲よ 消えろ
ぼくに炎の戦車を 

I will not cease from Mental Fight,
Nor shall my Sword sleep in my hand,

精神の闘いから ぼくは一歩も退かない
この手のなかでぼくの剣を決して眠らせておかない


Till we have built Jerusalem,
In Japanese green and pleasant Land.

心地よいみどりのニホンの大地に
エルサレムを打ち建てる日まで

(12.11.15 柳原敏夫)



(ジュネーブ報告記(3)(4)転載おわり)


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