[CML 020920] 宇都宮健児氏が東京都知事選挙に立候補

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2012年 11月 9日 (金) 23:55:31 JST


宇都宮健児(宇都宮けんじ)・前日弁連会長が東京都知事選挙(2012年11月29日告示、12月16日投開票)への立候補を表明した。反貧困運動家の都知事就任による都政の転換に期待が高まる。 

支持母体の「人にやさしい都政をつくる会」声明は石原都政を「都民の安心を奪い、人々を生き難くさせて切り詰めたお金は、都市再開発や道路建設に回され、知事が旗を振るオリンピック誘致や新銀行に無意味に蕩尽された」と断罪する。 

現実に東京都世田谷区の二子玉川ライズでは税金の無駄遣いと住環境の破壊が行われている(林田力『二子玉川ライズ反対運動』)。北区の十条駅西口地区第一種市街地再開発では税金の無駄遣いと住環境の破壊が行われようとしている。 

声明の福祉を切り捨てて捻出した財源を大型開発に回しているという認識は重要である。福祉切り捨てを単体で論じるならば、「財政危機だから仕方がない」「福祉受益者に税金が使われることは不公平」という批判にぶつかる。それ故に「開発と福祉がトレードオフであり、開発予算を削減すれば福祉への支出と健全財政は両立する」「福祉が削られる一方で、開発予算によって開発業者やゼネコンが潤うことは不公平」という理解が重要になる。 

このロジックは「新しいせたがやをめざす会」の2011年の政策案でも採用された。政策案の基本政策では「『再開発』や『道路優先』がもたらす大きなムダと住民被害、財政圧迫の三重苦を取り除き、税金を区民生活第一に使います」と掲げる。 

このように注目すべきで出しで始まった「人にやさしい都政をつくる会」声明であるが、全体の論調は石原慎太郎が嫌いという一点で結集したイデオロギー色が強いものになっている。「東京都知事を変えることは、日本の右傾化を阻止する力になる」と都民の生活とは縁遠い目標を掲げている。これは石原氏を嫌っていない大多数の有権者の心には響きにくい(林田力「石原慎太郎支持層に届かなかった石原批判」PJニュース2011年5月9日)。 

これは内向きの左派の団結には有用な声明である。日本の左派にはリベラル中道に対して異常なほどの対抗意識を抱く人々がいる。「よりまし」な選択を否定し、極右に対する以上の敵意をリベラル中道に向ける教条主義的な左派が左派内部で一定程度の勢力を有している(林田力「草の根革新派市民の対立軸」PJ ニュース2010年9月3日)。 

その種の教条主義的左派にとって保守的な考えも許容するリベラル派は市民派の団結を阻害する人間になる。教条主義的左派こそが市民派の結束を害する存在であるが、彼らの論理は逆である。そのような人々向きには声明くらいのイデオロギー色が有効である。 

声明と比べると宇都宮氏の「「人にやさしい東京」をめざして 都政で実現をめざす4つの柱」は印象が大きく異なる。声明も「4つの柱」も4つのポイントを挙げている。声明は「日本国憲法を尊重し、平和と人権、自治、民主主義、男女の平等、福祉・環境を大切にする」「脱原発」「教育に民主主義を取り戻す」「貧困・格差と闘う」である。「4つの柱」では「誰もが人らしく、自分らしく生きられるまち」「脱原発」「子どもたちのための教育を再建」「憲法のいきる東京」である。 

「4つの柱」では「誰もが人らしく、自分らしく生きられるまち」を最初にもってきている。ここで福祉や雇用という住民の生活に関わるテーマへの取り組みを表明する。「大規模再開発などの支出を見直し、福祉・医療を充実できる財政を確立します」とし、開発と福祉はトレードオフという問題意識も明らかにする。 

声明も「4つの柱」も3番目は共に教育問題であるが、「4つの柱」では「子どもたちのための教育を再建します」と「子どもたちのため」であることを強調する。これは声明が「教師に自信と自律性を、教室に学ぶ喜びと意欲を回復させる」と教師を先に持ってきたことと対照的である。声明では「教室」と場所しか示さず、子ども達には触れていない。 

教育現場への締め付けは深刻な問題であり、教師も被害者であることは否定しない。しかし、管理教育・愛国心教育批判に対しては「教師が好き勝手している」との反感が市民派からも存在することも事実である。実際、「新しいせたがやをめざす会」の政策案作成時も草案の「教育の自由」に批判が出て「教育の自主性」に修正された経緯がある。 

特に大津市立皇子山中学校いじめ自殺事件によって、いじめが社会問題としてクローズアップされている。その中で伝統的な左派の管理教育・愛国心教育批判はピントがずれていると批判が噴出した。この点でも「4つの柱」は以下のように述べ、いじめ問題に言及するだけでなく、従前の教育行政の問題点とリンクさせている。 

「学校選択制などで競争をあおるのではなく、着実な教育インフラ整備をはじめとする、子どもたちにあたたかい教育行政に転換し、いじめ問題の解決に取り組みます。」 
http://www.hayariki.net/8/5.htm
北本いじめ自殺裁判(平成19年(ワ)第2491号損害賠償請求事件)では成果主義導入などの教育政策が、いじめを助長したと主張されている。「4つの柱」の問題提起は重要である。 

このように宇都宮氏本人の政治的センスは素晴らしいものである。派閥を向こうにまわして無派閥で日弁連会長に当選したことは伊達ではない(林田力「宇都宮健児日弁連新会長の課題はモンスター弁護士の排除」PJニュース2010年3月27日)。一方で「人にやさしい都政をつくる会」は生活保守とされる大多数の都民向きではない。市民派が生活に密着する争点で勝手連的に盛り上げていくことが重要である。
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林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』
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