[CML 020766] 東京都知事選挙は構造改革批判を

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2012年 11月 2日 (金) 00:07:27 JST


石原慎太郎知事の突然の辞任表明で降ってわいた東京都知事選であるが、市民派にとって大きなチャンスである。石原氏を評価しない立場でも石原氏が型破りな存在であることは認めなければならない。そのような人物が都知事選挙に出ないことで石原都政に対する本質的な議論がしやすくなる。 

石原都政の本質は新自由主義・構造改革路線である。『空疎な小皇帝−石原慎太郎という問題』の著者・斎藤貴男氏は、石原都政が小泉純一郎政権の構造改革を先取りしていたと指摘する(東京を考えるシンポジウム実行委員会主催シンポジウム「もう、ごめん!石原コンクリート都政」2010年2月13日)。築地市場移転や東京外郭環状道路(外環道)などの開発優先と都立病院廃止などの福祉切り捨ては構造改革路線そのものである。 

よって都知事選挙では新自由主義・構造改革批判を市民は結集のベースとすべきである。これは過去の石原当選の失敗から学ぶことでもある。過去の都知事選挙でも反石原が求められた。それでも石原慎太郎氏が再選を果たした。反石原という論点が生じながらも、それが大きなうねりにならなかった要因として反石原という言葉の曖昧性・多義性がある。 

反石原の声は大きく3パターンに分類できる。第一に「大震災は天罰」発言など数々の暴言への反発である。つきつめれば石原慎太郎という人格に対する嫌悪感である。これが一般的には最も強い反石原イメージであるが、好き嫌いの問題である。石原氏を嫌っていない大多数の有権者の心には響きにくい(林田力「石原慎太郎支持層に届かなかった石原批判」PJニュース2011年5月9日)。 

第二にタカ派と呼ばれる石原氏の保守・反動思想への批判である。しかし、これも首長選の選挙戦術として前面に出すことは難しい。保守・反動思想への対抗軸は平和主義・護憲運動になるが、それらは市民派結集の軸になりにくい。反戦・平和主義は十五年戦争当時に侵略戦争に反対したかをめぐり、旧社会党系と共産党系で溝がある(林田力「共産党と社民党の大きな溝」PJニュース2010年3月22日)。 

護憲運動は日本国憲法自身が国民主権や法の下の平等に矛盾する天皇制を規定しているという矛盾と歴史的限界を抱えている(「中井洽の非礼発言と天皇制の対立軸化(下)」PJニュース2010年12月5日)。どちらも突き詰めると市民派の団結よりもセクト的対立を誘発しがちである。現実に対立をもたらしてきた経緯がある。 

第三に新自由主義・構造改革批判である。石原氏を構造改革派と位置付ければ、そのタカ派姿勢もレーガン、サッチャー、中曽根康弘、小泉の各氏ら従前の構造改革派と共通する要素と理解できる。石原氏をウルトラ保守の異常な政治家と位置付けるよりも、既に出尽くしている構造改革派の亜種と位置付けた方が、そのカリスマ性を奪うことができる。 

これに対して第一や第二の点からの批判に注力することは逆効果の危険がある。まず人格批判に専念すると構造改革批判がぼやけてしまう。構造改革路線の問題は全てを金銭的価値で評価する市場原理主義である。血も涙もない非情な市場原理主義に対して、批判者は人間性を対置する。構造改革派を無機的な金の亡者と描けるならば構造改革批判は成功である。 

ところが、石原氏の暴言が逆に彼の人間味として受け止められ、構造改革派の非情さを見えにくくしてしまう。石原氏の批判者にとって石原氏の暴言は彼の冷酷さの表れであるが、人間としての冷酷さである。差別感情をあらわにすることで、無機的な市場原理主義者のイメージを回避できる。現実に構造改革路線の成功者の小泉氏も首相就任当初は変人というキャラクターが国民的関心を集めた。 
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タカ派批判も新自由主義批判と比べると世論に合致しない。むしろ一般都民は逆に批判者のイデオロギー的な異常性を感じてしまう傾向がある。石原氏のウルトラ保守主義は弱者の痛みを理解しない偏狭さを反映したものである。しかし、イデオロギー的な石原批判者も一般人の目に寛容とは映らない。そのような立場からの石原批判は一般人に石原批判者の異常性を認識させ、石原応援団として機能してしまう。 

現実に小泉政権に対しては靖国神社参拝や自衛隊のイラク派兵よりも、格差拡大や貧困の批判が強かった。それを踏まえれば、都知事選でも構造改革路線への批判を前面に出すことが効果的である。前回の都知事選挙では東日本大震災後の自粛選挙によって構造改革批判の論点を深められなかった点が反石原陣営にとって残念な点であった(林田力「反石原慎太郎の多義性と曖昧性 」PJ ニュース2011年5月10日)。
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林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』
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