[CML 017335] 「しんぶん赤旗」に見る震災がれきの広域処理問題に対する共産党員(党中央と共産党議員)間の認識とスタンスの違いについて

higashimoto takashi higashimoto.takashi at khaki.plala.or.jp
2012年 5月 29日 (火) 15:51:25 JST


共産党の機関紙「しんぶん赤旗」には震災・放射性がれきの広域処理の問題に関して管見の限り下記の3本の記事が掲載され
ていますが、同広域処理の問題に関しては以下の論証に見るように共産党員(党中央と共産党議員)の間でも同問題に対する
認識には少なからぬ温度差があり、その解決方法の提唱についても少なからぬスタンスの違いがあるようです。

(1)2012年3月18日(日)
主張 がれき「広域処理」 政府は責任をもった方策を
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik11/2012-03-18/2012031801_05_1.html
(2)2012年4月23日(月)
宮城県 ゼネコン“丸投げ”がれき処理進まず 広すぎる地域・地元業者を軽視 「現場を知らない」と地元
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-04-23/2012042315_01_1.html
(3)2012年5月24日(木)
がれき処理 復興の大前提 広域処理 安全性確保に万全 共産党県議 斉藤信さんに聞く 

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-05-24/2012052401_04_1.html

(1)の記事はがれきの広域処理についてはどちらかといえば肯定的です。(1)は赤旗の「主張」記事ですから、この「主張」の見
解は同党のリーディング・オピニオン(中央委員会の見解)とみなしてよいでしょう。同見解は「『広域処理』をすすめる」ことの必
要性を説いています。

「災害がれきをできるだけすみやかに処理することは、被災地の復興にとって最重要の課題であることは言うまでもありま
せん。/ぼう大ながれき処理を被災地だけで行うことは困難です。政府が被災地での処理能力を強化することはもちろん、
被災県以外の協力を得て、「広域処理」をすすめることが必要です。政府は、その方策を責任をもってすすめていくべきで
す。」(「赤旗」2012年3月18日付)

(2)の記事は共産党宮城県議会発の記事(森近茂樹「赤旗」記者)と思われるもので、どちらかといえばがれきの広域処理に
批判的です。

「横田有史県議団長はこう強調します。『ゼネコン丸投げで処理地域の規模を大きくしたことが遅れの要因になっている。
小規模の方が、がれきの輸送時間も短縮できて効率的。さらに地域に詳しい地元業者が加わると業務ははかどる。同時
にがれき処理が地域経済の活性化にもつながり、復旧・復興にとって一石二鳥です』」(「赤旗」2012年4月23日付)

(3)の記事は岩手県の「共産党県議 斉藤信さんに聞く」という体裁をとっていますが、「(岩手)県内の処理能力を超えるがれき
の存在は復興の大きな障害になっており、県外での広域処理が必要です」という赤旗編集局ないしは赤旗記者の見解を前提と
して述べた上で、「この問題について、日本共産党の斉藤信県議に聞きました」(聞き手 細川豊史赤旗記者)という構成の記事
になっています。そういう意味で(3)の記事は共産党岩手県議会発の記事というよりも、実質的には(1)の赤旗の「主張」を土
台にした同紙編集部発の記事になっていると見てよいでしょう。したがって、この(3)の記事も(1)と同様がれきの広域処理の
必要性を説く記事になっています。

「東日本大震災で甚大な被害を受けた岩手県では、県全体の一般廃棄物の12年分に相当する525万トンもの震災がれ
きが生じました。県内の処理能力を超えるがれきの存在は復興の大きな障害になっており、県外での広域処理が必要で
す。この問題について、日本共産党の斉藤信県議に聞きました。(聞き手 細川豊史)」(「赤旗」2012年5月24日付)

しかし、以下に紹介するおふたりの共産党議員のブログ記事の見解は上記(2)の記事の見解とほぼ同じです(そのうちのひと
り、(4)のブログ記事の筆者は(2)で紹介されている横田宮城県議会議員その人ですから当然といえば当然ですが)。

(4)瓦礫は県外処理354万トンを大きく上回る431万トンの圧縮へ。県外処理は必要ありません。(共産党宮城県議会議員・横
田有史氏のブログ 2012年5月21日)
http://yushi-yokota.web3plus.net/modules/wordpress/index.php?p=516

「昨日は、一日中定例の県議会常任委員会。環境生活・農林水産常任委員会では、放射能汚染対策を巡る諸問題と瓦
礫処理問題をメインに6時間以上の議論。/瓦礫処理では県処理分とされていた1,107万トンの約4割、431万トンが圧縮
され、676万トンになることを発表。その一方、広域処理が必要とされていた354万トンを大きく上回る圧縮にも拘わらず、
東京・山形・青森の13万トンを除いても更に114万トンの県外処理が必要という発表で、国の162万トン広域処理に数値あ
わせでは無いか。『復興の遅れを広域処理の遅れに。その遅れを反対市民のせいにする。と言う思惑ではないか』とつ
い主張せざるを得ませんでした。委員会では『処理ブロックごとの数値の変化』などの資料を改めて提出させること。更
に、今回の見直しに加味されていない『命の森の防潮堤』50キロ・150キロ建設への瓦礫の活用などで、少なくとも“放射
能まみれの宮城の瓦礫”については、県内処理での自己完結を追究すべきとする意見が相次ぎました。」

(5)【がれき広域処理問題 北九州で逮捕者・・・無用の対立を持ち込んだのは誰か(共産党仙台市議会議員・花木則彰氏の
ホームページ 2012年5月23日)
http://homepage2.nifty.com/hanaki-sendai/

「実際は産廃処理のノウハウもないゼネコンが、県に助け舟を出し、仕事が丸投げされた・・・今、起きている困難・矛盾
の一つはここにあります。ゼネコンの作った処理計画は、大量のがれきを遠くへ運んで処理する、運送費に大きな費用
をかけそこで儲ける、という中身でした。その数字を、県や環境省がそのまま「広域処理が必要な量」として発表してい
たのではないか・・・今回の見直しで、さらにその疑いが強まっています。/仙台市では、市域内のがれき処理を市で行
うことにし、ゼネコンではなく産業廃棄物処理業者に委託をしました。がれきを仮置き場に運ぶ時から、分別を行い焼却
するもの、埋め立てるものをできる限り減らす、危険なものの管理を徹底する方法がとられています。/宮城県内でも、
石巻ブロックを除けば、それぞれの地域内での処理が可能だとされています。広域処理を、お願いする前に、域内処理、
県内処理、東北内での協力についてもっと検討を深めるべき課題だと思います。」

上記の(5)で花木則彰仙台市議会議員も指摘されているように「放射線管理の立場からは、分散させない、集中してしっかり
管理することが原則です」。この花木議員の認識は放射線、放射線管理の専門家(たとえば小出裕章京大原子炉実験所助
教や安斎育郎立命館大名誉教授(放射線防護学)、注1・注2)の認識とも一致します。 


注1:小出裕章京大原子炉実験所助教の震災がれき処理問題に関する認識。「原発から排出された放射性物質はその本来
の原発敷地内に戻すのが当然」(「毎日放送『たね蒔きジャーナル』文字起こし」ざまあみやがれい! 2011年12月22日)。
http://blog.livedoor.jp/amenohimoharenohimo/archives/65781692.html


注2:安斎育郎立命館大名誉教授(放射線防護学)の震災がれき処理問題に関する認識。「参考までに土の汚染を例に取る
と、セシウム137が1平方メートルあたり1000ベクレルで汚染した土壌が半径100メートルの円形状に剥き出しで広がって
いる場合、その真ん中に立つと地上1メートルでの被ばく線量率が大略「毎時0.000003ミリシーベルト」といった桁になる
でしょう。おそらく、具体的な処分条件に基づいて被ばくの可能性を評価しても、その数値が深刻な確定的影響(1000ミリシ
ーベルトで急性の放射線障害)や確率的影響(1ミリシーベルトでがん死亡の確率が0.005%増大の恐れ)などに結びつくよう
なことにはならないと思われます。だからといって、島田市を含めて地方の分散するのが好ましいのかと問われれば、放射
線防護学的には、100年単位で居住や生産に適さなくなった事故原発周辺に集中保管管理施設を築いて一括処分するのが
好ましいと考えています。」(「島田市の震災がれき受け入れに関する、安斎育郎さんの見解について【続】」市民社会フォー
ラムブログ 2012年3月22日)
http://civilesociety.jugem.jp/?eid=13959

(1)の赤旗の主張を反映する上記(3)の記事のいうように、たしかにがれきに含まれる100ベクレル/1キログラムのセシ
ウム137の含有量は「一般廃棄物として扱ってよいとされる、原発事故前からの基準(クリアランスレベル)」であり、また、
日弁連の下記の見解などとも一致しており、「放射性廃棄物かどうかを区別する基準はセシウム137については、100ベ
クレル/1キログラムによるべきである」という赤旗及び日弁連の主張は3・11以前の原子力関連法の安全基準に照らして
も条理のある主張といってよいものです。

■ 放射能による環境汚染と放射性廃棄物の対策についての意見書(日弁連 2011年7月29日)
http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/opinion/report/data/110729_2.pdf

「放射性廃棄物かどうかを区別する基準については,現行のクリアランスレベルである10μSv/年を基本として定める
値(セシウム137については,100ベクレル/kg)によるべきであり,したがって,100ベクレル/kg 以上のものにつ
いては,放射性廃棄物として厳重な取扱いが必要であるものとすべきである。」

しかし、3・11以前のわが国の原子力関連法体系に基づくクリアランスレベルは福島第1原発事故による放射能漏えいや
それにともなう甚大な広域放射能汚染などまったく予期していなかった段階で作成されたクリアランスレベル(安全基準)に
すぎません。3・11以後しだいに明らかにされるようになった放射能の低線量被ばくの危険性(微量の放射能被ばくでも必
ずしも安全とは言い切れないこと)を指摘するさまざまな現在の科学的、医学的レベルの国際的研究の到達点から見れば
3・11以前のクリアランスレベルはきわめて不十分な基準であるといわなければならず、その見直しは避けられないでしょ
う。

放射線、放射線管理の専門家たちの指摘する放射能は「分散させない、集中してしっかり管理する」という原則に立ち返っ
た、また、放射能の低線量被ばくの評価など現在の世界の放射線研究の到達点を反映させたあらたな放射線被害に関す
るクリアランスレベルの見直し、その作成は、いま、国民、というよりも人類の生命を守るという人類共通の道義的見地か
らも急務の課題というべきものだと思います。

そういう意味で放射性廃棄物の広域処理に反対する人たちの不安と怒りには相応の根拠と道理があります(根拠の乏し
いデマゴギーとでも呼びたい(個人的には吐き気をもよおすほどの)情報ともいえないトンデモ「情報」の「拡散」が多いこと
も確かですが)。(2)(4)(5)で紹介した共産党議員の主張はそうした広域処理に反対する人たちの不安と怒りの声を反
映しているものと見てよいでしょう。広域処理の考え方については共産党議員間だけでも上記に見たような認識とスタンス
の違いがあるのです。

放射性廃棄物の広域処理の考え方については共産党には現在の世界の放射線研究の到達点を踏まえた上でいま一度
真摯に再考してほしい、と私は思っています。


東本高志@大分
higashimoto.takashi at khaki.plala.or.jp
http://mizukith.blog91.fc2.com/ 



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