[CML 015525] 言葉をつぶす人、言葉をつくる人(6)

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2012年 3月 6日 (火) 22:07:35 JST


前田 朗です。
3月6日



(1)	林田さん

林田さんが、「言葉をつぶす人、言葉をつくる人」というのはレトリックにすぎ
ないと批判されています。

はい、レトリックです。当たり前です。

また、私はPCの必要性を肯定し、現にヘイト・スピーチを批判する活動に力を
注いできました。そのことは、CML参加者には明瞭なことではないでしょうか。
CMLで、ヘイト・スピーチ、ヘイト・クライムについて、私ほど書き続けてき
た人が、どれだけいるでしょうか。つぶすべき言葉をつぶせ、とはっきり主張し
てきたのは、私です。

また、私は次のように書いています。

「言葉をつぶしながら、読みかえる。定義しなおす。新しい字をつくる。新しい
表現方法を工夫する。新しい言葉をつくる。/繰り返します。単に言葉をつぶす
だけではなく、よりよい表現を工夫するほうがずっと生産的であり、文化的です。
楽しいし。」

以上は、林田さんへの応答です。


(2)	9条を生きる

さて、本題です。

前々回は造字、前回は伏字の活用でした。

今回は、新しい言葉です。

「9条を生きる」――いつ思いついたのかははっきりしませんが、べマル丘からカ
ブール市街を見下ろしながら、「ここは憲法のない世界だ」とか、あれこれ考え
ながら、「9条を生きる」と呟いていたのはよく覚えています。2002年、戦
争中の夏でした。当時はアフガンには憲法がありませんでした。ここに憲法をも
っていない人々がいるのに、9条を持っている日本はアメリカの戦争を支援して
いる、と考えながら。

「9条を守る」という言葉があります。ぐちゃぐちゃになってしまった言葉です。
なぜなら、もともとは「9条の内容を実現する」という意味でした。かつては
「9条を守る」とは、安保反対であり、自衛隊反対であり、軍隊廃止、戦争放棄
の文字通りの意味で使っていました。

ところが、安倍政権による憲法改悪策動が激しくなったころから、いつの間にか
意味が変質しました。「9条を守る」が「9条改悪阻止」「9条を書き換えるな」
の意味になりました。9条改悪阻止が最重要課題ですから、改悪阻止の一点での
共同行動が求められました。正当な課題の掲げ方であり、必要な運動でした。私
も及ばずながらその一員でした。

その結果、何が起きたかというと、「9条を守る」という言葉には2つの意味が
含まれることになり、しかも「9条改悪阻止」の意味のほうが大きなウェイトを
占めるようになりました。

それゆえ、「自衛隊とともに9条を守ろう」という倒錯した言葉が平和運動の世
界で堂々と語られるようになりました。そのうち「米軍とともに9条と世界平和
を守ろう」になるのかもしれません、

「9条を守ろう」と言う人たちが、「安保反対とか自衛隊反対などと言ってはい
けない。いまは9条改悪阻止の一点で団結するべきだ。自衛隊反対などというの
は運動の足並みを乱すものだ」と言うようになりました。何度も言われました。

こうして言葉が根っこから腐っていきます。立ち枯れていきます。運動が変質し
ていきます。

とはいえ、「9条改悪阻止」の一点で団結することが重要なのは間違いありませ
んから、そのことを批判するわけにはいきません。

となると、「9条を守るとは、9条の内容を実現することだ」という意見をとり
あえず封印するしかありません。現状では「9条を守る=改悪阻止」の意味で使
うことが重要だからです。

そこで、しばしば用いられるのが「9条を生かす/活かす」です。これはこれで
重要な言葉ですが、「9条を適用しないで、9条を生かす」といっても、何をし
たら生かしたことになるのか、私にはよくわかりません。

そこで、私は、「国家の基本法である憲法」は、政府に対する拘束が最大の意味
であるが、同時に、社会形成の根本規範であり、かつまた個人の行動規範でもあ
るという観点で考えることにしました。もちろん、国際社会も射程に入れます。

1)個人として、私は「9条を生きる」。心の武装解除であり、市民的不服従。
平和的生存権の担い手として思考し、活動すること。

2)社会において9条の意義を敷衍すること。ピースゾーンをつくること、ピー
スゾーンの思想を広めること、自治体の平和行政と平和教育。

3)国家に対して9条の順守を要求し続けること。「改悪阻止としての9条を守
る」も重要。

4)国際社会に対して9条と平和的生存権を普及すること。「9条を輸出せよ」
(吉岡達也)。9条世界会議。平和への権利国連宣言をつくろう。

以上の射程で平和的生存権の主体として「9条を生きる」――これが私の言葉です。

2年ほど前に、『マスコミ市民』『友和』という小さな雑誌に書きました。

いま改めて、「9条を生きる」という言葉を再活用しようと思います。

あなたも、いかがですか。――「9条を生きる」





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