[CML 015406] Re: 言葉をつぶす人、言葉をつくる人(1)

maeda at zokei.ac.jp maeda at zokei.ac.jp
2012年 3月 2日 (金) 17:47:59 JST


前田 朗です。
3月2日

池田さん
上田さん
萩谷さん

ご意見ありがとうございます。それぞれ興味深い内容ですが、元の私の投稿の趣
旨からすれば、残念ながらかみ合っていません。

3重の意味でかみ合いません。

第1が、「言葉をつくる人」について、一切無視されていることです。一番重要
なことに反応がないのですね。この点は次便で、さらに言及します。

第2に、たとえば、池田さんの下記の文章はいただけません。

> 
> 言葉は一義的には社会生活の道具である以上、時代とともに生まれたり廃れた
りしてきました。
> 死語となる条件は2つ。
> 社会の実情を反映しない言葉や、その時代の人びとの心情にそぐわない言葉が、
いつのまにか死語となります。
> 


これは一般論にすぎません。

このMLで以前話題になったように、一般論が重要な場合も、あります。

しかし、上記の池田さんの一般論は、私の元の投稿との関係から言って、見事に
ピント外れです。言葉が一般的にどのように変遷するかというのは、一般的すぎ
ます。

日本語に即しても、明治期国家が意識的に権力を用いて日本語形成を行ったので
あって、それ以前の日本語から自然に変遷してきたのではないことは、ご存じの
とおりです。

まして、父兄、強姦、嬲る・・・等の表現については、フェミニストたちによる
自覚的組織的な批判的作業があって、変遷してきたのです。「いつのまにか死語」
となるなどという話ではありません。

人種差別、部落差別、障害者差別、性差別に関わる表現の変遷は、差別と闘う人
々の懸命の努力の結果であって、単に「時代とともに」とか「いつのまにか」な
どというものではありません。と、これもご存じのことではあるのですが。

以上のことは当然の前提であって、その上で私の元の文章が書かれています。こ
れに対応するのは萩谷さんの投稿の最後の部分だけですね。それが第3につなが
ります。

第3に、つぶすべき言葉はつぶせばいいのです。人種差別でも部落差別でも。P
Cは必要です。どんどんやればいいのです。在特会的なヘイト・スピーチとは徹
底的に闘う必要があります。また、より適切な表現があれば、言い換えもやれば
いいのです。

問題は、1)安直なPCは無意味であり、失敗すること、2)PCによって差別
はなくならないこと、です。この点はおそらく同じ意見でしょう。

ただし、池田さんの下記の文章は容認できません。


> 
> 性差別については、漢字を問題にしてもしかたありません。
> 文字に限らず、そもそも言語は根っこから性差別的だと自覚していればいいと
思います。
> 



1)	漢字を問題にするべきところではどんどん問題にすればいいのです。ただ、
問題にする方法が必ずしも適切でないのが従来の傾向です。その点は、上記の第
1に関わります(次便へ)。

2)	「言語は根っこから性差別的だ」というのは、池田さんの言語観としては
断固そうなのでしょう。それに反論しても意味がないかもしれませんが、池田さ
んの言語観は、「人間は根っこから差別的だ」につながり、「だから差別はなく
ならない」、「だから差別克服運動には意味がない」とつながります。「そんな
ことを主張していない」とおっしゃるかもしれませんが、これまで世界中で何度
も何度も嫌になるほど繰り返されてきた議論です。――「嫌」という字にも「女」
が使われているのですね。――このような議論をつぶすために、人権活動家はずっ
と闘い続けてきたのです。これからも同じことが続くのでしょうが。








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