[CML 014586] 環境ジャーナリストの青木泰さんの被災地がれきの各自治体の受け入れに反対する論への反論

higashimoto takashi higashimoto.takashi at khaki.plala.or.jp
2012年 1月 26日 (木) 18:16:05 JST


環境ジャーナリストの青木泰さんの下記のブログに紹介されているような論を紹介して放射能に汚染された被災地がれ
きの各自治体の受け入れに反対する論について反論の文を書きました。地元メーリングリストに投稿されたメールへの
反論の形をとっています。ご一読ください。
http://ameblo.jp/datsugenpatsu1208/entry-11142095881.html

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○○○さん

「フィルターの性能については根拠がなかった」、とあなたが依拠される環境ジャーナリストの青木泰さんの説(脱原発の
日のブログ 2012年1月21日付)には看過しえない飛躍があります。 青木氏はその自身の飛躍の論をもって「生活廃棄
物に濃縮された放射性物質は焼却して煙突から放出し、『空気』を汚してゆく」と結論し、「国や環境省の方針は支離滅
裂で、これをストップすることなくしては、内部被爆がさらに広がり、放射能汚染による影響が私たちを襲うことになる」と
私たちに警鐘を鳴らします。が、その警鐘は必ずしも当を得ていません。というよりも、誤った認識を読者に植えつけ、
読者を誤った方向に誘う危険な役割しか果たしえていないように思います。
http://ameblo.jp/datsugenpatsu1208/entry-11142095881.html

青木氏が「今回環境省は東京新聞の取材で、データなく焼却の方針を決定していたことを認めました」というその方針の
決定時期は同じ同紙の記事(2012年1月21日付)によれば「昨年6月」のことです。そして、環境省がこの件に関して実際
のデータを取得したのは「昨年十一月末から十二月中旬までの間」のことというわけですから、青木氏が「環境省は、放
射性物質が除去できるという実際のデータがないままがれき償却方針を決めてしまった。方針を決めた後に実験でつじ
つまを合わせても誰にも信用されない」(同左)と憤るのは当然のことです。

しかし、環境省が「実際のデータがないままがれき償却方針を決めてしまった」ということと、がれき償却方針を決定する
際の根拠となったバグフィルターの性能についていまもなおその有効性を示すデータがない、すなわち「根拠がない」と
いうこととは別様のことです。

環境省も後追い的であったとしても一応「昨年十一月末から十二月中旬までの間、福島県内六カ所の焼却施設で測定
した結果」「(バグフィルターによる)放射性セシウムの除去率は実際に99.99%だった」という実験結果を示しています
(しかし、この環境省の実験結果を信用する必要はありません。「方針を決めた後に実験でつじつまを合わせても誰にも
信用されない」(青木氏)たぐいの論証でしかないからです)。

また、先の国会で国民を瞠目させる「満身の怒り」発言をした児玉龍彦氏(東大教授・東大アイソトープ総合センター長)
のバグフィルターに関する次のような指摘もあります。

■国土を守り国民とともに生きる5項目提案(24/30頁 児玉龍彦)
http://www.cas.go.jp/jp/genpatsujiko/info/twg/dai4/siryou1.pdf
*上記のアドレスで開かない場合はこちらの検索サイト[ http://akb.cx/OFr ]の「国土を守り国民とともに生きる5項目提
案(Adobe PDF)」をクリックしてご覧ください。

「セシウムを回収できるバイオマス、汚泥燃焼炉
汚染木材、汚泥などの消却を行うときに、貴金属などの回収用に開発された技術。燃焼700℃以上になると
セシウムは気化する。そこで、排気を温度低下させ、200℃程度にするとセシウムは析出する。それをバグ
フィルターでとっているが、さらに原子力施設で使われているガラス繊維フィルター、微粒子をとるHEPAフィル
ターでのぞき、さらに流量放射線量計で連続モニターすることにより99、99%カットできる。」

上記について、児玉氏は、「今度太平洋セメントなんかが予備的に実験をやってみているのはそれを2サイクルやった
ら99.99%セシウムを除けています。(略)ゴミ焼却場なんかからセシウムを除くということは技術的には今の日本で
は比較的可能になっています」と述べています(下記の1:23:13頃。上記の表は1:22:46頃)。つまり、「99.99%セシ
ウムを除け」ることは実験で確認されている、と述べています。

■児玉龍彦教授講演会「放射線と健康、そして除染~こどもと妊婦を守るために~(IWJ 録画日時:2011/12/03)
http://www.ustream.tv/recorded/18899927

○○○さんのおっしゃる先の大分講演の際の小出裕章氏の「バグフィルターでセシウムの99.99%(「ほとんど」という
表現だったかも知れません)除去できる」という発言( 
http://youtu.be/qrwBSOfuYE0 )もおそらく児玉氏と同様の上記
のような知見に基づく発言であったでしょう。児玉氏はアイソトープの専門家ですからある意味除染の専門家といっても
よいでしょう。また、小出氏も放射能の専門家です。それも民主的な。この民主的でもある放射能医学、物理の専門家
のおふたりが根拠を挙げて(この場合は児玉氏)バグフィルターの有用性を論じているのです。環境省のアリバイづくり
めいた言説と同一視して、彼らの論それ自体を否定することはできないでしょう。否定するのであれば、否定するにふさ
わしい論拠が必要です。しかし、上記のような青木氏の飛躍の論では児玉氏や小出氏の論を否定する論拠にはなりえ
ないと私は思います。

もう一点。上記の青木氏の「生活廃棄物に濃縮された放射性物質は焼却して煙突から放出し、『空気』を汚してゆく」
云々という認識は児玉氏の言う「セシウムは沸点は641℃。だからゴミ焼却場で処理するときは641℃以下に抑え
る」(上記「児玉龍彦教授講演会」1:04:40頃~参照)という指摘をよく理解しえていない認識だともいわなければなら
ないでしょう。放射性物質の焼却で煙突から煙が出ないように「排気を温度低下させ、200℃程度に」した上でセシウ
ムを析出し、放射能汚染がないように同セシウムを隔離するというのが上記の児玉氏の提案なのです。

さらにもう一点。これは青木氏の上記の説とは直接には関係はありませんが、たとえば小出氏が先の大分講演の際
に除染について次のように言っていることへの広く一般に流布している誤解についてもひとこと述べておきたいと思い
ます。

「私、いま、放射能というものは、今日聞いていただいたようにどんなことがあっても消えない(と言いました)。除染な
んていうのはうそです。別のところに移すということだけですから。除染だってできないんです。」(上記ビデオ 2:15:
47頃~)。

上記で小出氏は除染しても放射能はなくならない、ということを言っています。単に別のところに放射能が移るだけの
ことにすぎない、と。しかし、こうした小出氏の発言から直に小出氏は除染を否定しているという結論を導き出すのは
誤りです。なぜなら、小出氏は除染を否定しているわけではないからです(たとえば弊ブログ「私たちは「除染」問題と
どのように向きあうべきなのか?」2012年1月4日付参照)。除染しても放射能はなくならないという事実があることと
除染そのものとは別のことです。放射能に汚染された地域の人々の生命と健康を守るためにその地域から放射能
をなくすための除染を挙行することはきわめて重要な課題です。ただ、除染しても放射能はなくならないという前提に
立って、たとえば上述の児玉氏は除染汚泥、材木などから析出された放射性物質の何百年単位の厳重な遮蔽と隔
離を提案しているのです(下記参照)。この児玉氏の提案と上記の小出氏の「除染しても放射能はなくならない」とい
う認識はあい補うことはあっても矛盾するものではありません。

■国土を守り国民とともに生きる5項目提案「人工バリア型処分場」(22/30頁 児玉龍彦)
http://www.cas.go.jp/jp/genpatsujiko/info/twg/dai4/siryou1.pdf
■児玉龍彦教授講演会「放射線と健康、そして除染~こどもと妊婦を守るために~(IWJ 録画日時:2011/12/03 1:
16:45頃~)
http://www.ustream.tv/recorded/18899927

最後に災害・原発被災地からのがれきの撤去反対論者に決定的に欠けていると思われる視点を指摘しておきます。

それは、放射能の全国的な拡散を防ごうとして災害・原発被災地の放射能がれきの撤去に反対するのはよい。しか
し、では、現実にいまもなお膨大に残る放射能がれきの処理に悩まされている災害・原発被災地に住む人々の放射
能被害の問題はどうすればよいと考えているのか、という視点の欠如の問題です。

先の大分講演での小出氏の質問者への応答はその問いに答えようとするものでした。その小出氏の発言を最後に
置いてこの文を閉めたいと思います。

「いま膨大にある瓦礫をこのまま放置するということは私はできないと思いますので、それならばしかたがない。焼くし
かない、と僕は思っています。そして、膨大に汚染しているもの、原発の周辺の瓦礫に関しては周辺にあらたな焼却
施設をつくってそこで焼くということを提案しています。でも、それを建設するのにも時間がかかるし、それでも能力が
足りない分は必ず残る。」(上記ビデオ 2:20:06頃)

「もしそれをそのまま放置しておくようだとたとえば(野積みされた放射能瓦礫が)自然発火してそのまま散っていくこと
にもなる。私が願っていることは先ほどもきいていただいたように子どもたちを被爆から守るということなんです。子ど
もたちの中にはもちろん大分県の子どももいます。九州の子どももいます。私は大阪ですけれども大阪の子どももい
ます。でも、福島の子どもだっているんです。そういう子どもたちの被爆をトータルとしてどうすれば少なくできるかとい
うこと(を考えること)しか私たちには選択の余地はないのです。」(同 2:16:35頃)

すなわち、単に災害・原発被災地からのがれきの撤去の反対をいう論、主張には与しがたい、と。
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東本高志@大分
higashimoto.takashi at khaki.plala.or.jp
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