[CML 014458] ジェイムズ・ペトラス著 帝国主義と「愚者の反帝国主義」

Yasuaki Matsumoto y_matsu29 at ybb.ne.jp
2012年 1月 20日 (金) 00:15:26 JST


みなさまへ     (BCCにて)松元

バルセロナの童子丸さんが、ジェイムズ・ペトラスの「帝国主義と「愚者の反帝国主義」」を翻訳されましたのでお届けします。

帝国主義の公然たる裏面史を見事にトレースして、進歩的「草の根運動」へ警鐘を鳴らしている秀れた論考です。

======以下転載=====


現在の世界情勢について、ジェイムズ・ペトラス教授の新しい論文がありますので、和訳(仮訳)しました。
「地獄への道は善意で敷き詰められている」という言葉がありますが、これが単なるたとえではなく、現実世界の事実であることは、歴史と現在への観察から明らかになるでしょう。最も警戒すべきは、大勢の人々の「善意」を集めて、善意でか悪意でか、せっせと地獄への道に敷き詰めていく人々の存在です。
メールのフォームでは注釈へのリンクができませんので、よろしければ下記のアドレスでウエッブサイトの方にお入りください。

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http://doujibar.ganriki.net/Today's%20World%20of%20Fraud%20&%20Myth/Imperialism_and_the_Anti-Imperialism_of_the_Fools.html
全文和訳(仮訳):ジェイムズ・ペトラス著
帝国主義と「愚者の反帝国主義」

 ジェイムズ・ペトラスについては以前の『オバマは軍事的な賭けに出る:中国およびロシアと国境線で対峙』の冒頭で紹介しているので、そちらをご覧いただきたい。彼は自らのホームページに2011年12月30日付で次の記事を書いた。
Imperialism and the “Anti-Imperialism of the Fools” 
http://petras.lahaine.org/?p=1886


 以下にその日本語訳(仮訳)を掲げておくが、その前に訳者から若干のコメントをしておきたい。
 ここで多用される”帝国主義的「反帝国主義」”(imperialist 
 “anti-imperialism”)

およびその数種類の変化形に首をひねる人もいるかもしれない。しかしこの一見複雑な言い回しは、次のような極めて単純な事実の言い換えに過ぎない。
 《帝国主義者が侵略戦争を行おうとする際には、決まって、その地を支配している者や勢力を無法者呼ばわりし悪魔化しながら自らを正当化しようとするものだ。》


 彼らがそのようにする理由は、第1に、自国民を戦争支持に向かわせるためである。次に、国際世論を戦争支持に向かわせ最低でも中立化させるためである。そして第3に、侵略したい地域や国の中の反対勢力を有形無形に支えて分裂と内紛を誘発させ既存の支配勢力を弱体化させるためである。
 もちろんだが、外見上の侵略戦争に至らないまでも、クーデターや内戦を誘導して傀儡政権をしつらえる際にも同種の手口が使われることになる。そしてこのような事実は世界の歴史を見れば一目瞭然であり、特にわざわざ新しく言うほどのものでもない。


 問題となるのは次の点だ。
 その”帝国主義的「反帝国主義」”は侵略あるいは傀儡作りをたくらむ者たちの専売特許ではない。普段から国の内外で帝国主義や戦争や独裁や抑圧などに反対して「自由」や「民主主義」や「平等」などの抽象的なスローガンを叫ぶ者たちが、その”帝国主義的「反帝国主義」”に積極的に加担していく構図が確立されている。これもまた歴史を少し詳しく見てみるならば誰にでも分かる事実である。


 著者のジェイムズ・ぺトラスは主要に米国に見られるそういった構図について語っているのだが、私が付けた注釈に書いているとおり欧州でも全く同じ状況である。日本でどうなのかは日本にいる読者の方に考えていただきたいのだが、著者はこれを”愚者の「反帝国主義」”と呼んでいる。
 この”愚者の「反帝国主義」”を具体的に形作り組織化する役割を担っているのがマスメディアであることは言うまでもない。この点についてはぜひとも『でっち上げ:メディアはどのように世界を戦争に向けて操るのか』を参照いただきたい。欧米で、左翼や進歩主義者などと呼ばれている者たちがこのような愚者となる理由について著者は次のように言う。
 《帝国吹きかえの「反乱」に「進歩的な外見」を提供することでマスメディアに近づこうとする誘惑》
 その者たちは結局はマスメディアに「飼われて」いるのだ。 

(2012年1月17日 バルセロナにて 童子丸開)

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 訳文中の(1),(2)・・・は私からの注釈のナンバーである。

■帝国主義と「愚者の反帝国主義」  ジェイムズ・ペトラス 2011年12月30日

 歴史の最も大きな矛盾の一つが、帝国主義の政治家による、自分たちは偉大なる人道的十字軍であり国と人民を解放するという歴史的な「文明の伝道」に携わっている、という主張である。その一方で彼らは、歴史の記憶の中で最も野蛮な征服、破壊の戦争と被征服民の巨大な流血を行っているのだ。
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 近代資本主義の時代に帝国主義支配者の思想は、初期の富と力と植民地と威厳を手に入れる「権利」から、後の「文明の伝道」という主張にまで、時を経て変わっている。もっと最近になると帝国主義支配者たちは、特定のコンテキストや敵対者や環境や聞き手に適用される正当化の理屈の様々な変化形を宣伝するようになった。
 この論文は、支配を維持するための戦争と制裁を正当化する現在の米国の帝国思想的な主張の分析に集中している。

●帝国主義思想の文脈の付け方
 帝国主義的なプロパガンダは、それが、世界的権力を巡る競争相手に対して向けられるものなのか、あるいは地方的・地域的な社会政治学上の敵に対して制裁を課したりおおっぴらな戦争をおこなうものなのか、ということによって異なってくる。


 既成の帝国(欧州)あるいは新興の帝国(中国)を考慮して、米国の帝国主義プロパガンダは時と共に変化している。19世紀初期にワシントンは「モンロー・ドクトリン」を宣言して、ラテンアメリカを植民地化する欧州の努力を非難しつつ、同地域での自らの帝国主義支配の構造を特権化した。米国の帝国ポリシーメーカーたちが中東とアフリカで一次資源獲得のための植民地から欧州を追い出しつつあった20世紀には、それは様々なテーマを奏でることになった。それは「植民地支配の形態」を非難して「新植民地」への転換を推し進めたが、これが欧州の独占を終わらせ、米国の多国籍企業の進出を容易にした。このことは第2次世界大戦の最中とその後に中東の産油地帯で明らかな形を取った。


 1950年代の間、米国が帝国の筆頭となり過激な反植民地主義ナショナリズムが全面に立ったときに、ワシントンは没落しつつある帝国主義勢力との同盟を画策したが、それは共通の敵と戦うための、そして共通の敵と戦う植民地化後の権力を支えるためのものであった。第2次世界大戦後の経済的な回復と成長と統一はあったのだが、欧州は、ナショナリストの反抗とその政権に対する軍事的抑圧では、いまだに米国の主導の下に共同で働いている。米国と欧州の政権や銀行や企業との間に紛争と競争が起こるときには、それぞれの地域のマスメディアが「調査結果」を発表して競争相手の腐敗や不正行為等々を強調し、米国の取締り機関は、ウォールストリートの投資企業による同様の行為は見過ごしながら、欧州の企業に重い罰金を科す。


 最近では米国内でイスラエルの同盟者によって強化される軍事帝国主義と植民地戦争の盛り上がりが、米国と欧州の帝国主義の間である深刻な不一致を作り出している。英国を除き、欧州は米国によるイラクとアフガニスタンの戦争と占領に対して最小限の形だけの貢献を行った。ドイツとフランスは、主要な市場と資源獲得の場で米国と入れ替わりながら、その輸出市場と経済的な能力の拡大に専念した。米国と欧州の帝国の類似点が資本投資機関の糾合とその結果としての共通の危機と崩壊をもたらしたが、そこには何らの協調された回復の策も無かった。米国の論者たちは「傾いて崩れつつある欧州連合」という見方を宣伝し、その一方で欧州の論者たちは、英米的な規制緩和や「自由市場」の失敗とウォールストリートの詐欺を強調した。

●帝国のイデオロギー、経済列強の興隆とナショナリズムの挑戦
 帝国主義的「反帝国主義」には長い歴史がある。それは、敵対する帝国、新興勢力、あるいは単なる競争相手に対してだけに向けられる、公的な力に支えられた告発、暴露、そして道徳的な憤りである。その相手が単に既成の帝国主義勢力の跡を追っているだけの場合もある。
 英国の帝国主義者たちはその最盛期に、ラテンアメリカの原住民に対するスペイン帝国の「例外的な残虐さ」という「暗黒伝説」を広めながら、そして一方で最大規模の最も利益の上がるアフリカ人奴隷貿易を行いながら、3つの大陸にわたる地球規模の略奪を合理化した。スペインの植民地主義者たちは原住民を奴隷化したのだが、米大陸に移住した英国人たちは原住民を絶滅に追いやった・・・。


 第2次世界大戦に向かう時期には、欧州と米国の帝国主義列強は、そのアジアでの植民地搾取の一方で、日本の帝国主義による中国への侵略と植民地化を非難した。逆に日本は自分が欧米帝国主義に対する戦いの先頭に立っていると主張し、植民地時代後のアジアの対等なパートナーによる「共栄圏」を計画した。


 「反帝国主義」の道徳的なレトリックの帝国主義的使用は、競争相手を弱めるように作られ多くの聞き手に向けて発せられた。実際には、その反帝国主義のレトリックが植民地の人々を「解放する」役を果たしたことなど一度も無かったのである。ほぼ全てのケースで、勝者となった帝国権力はその植民地または新植民地支配の形を敗者のそれと入れ替えたのみだった。


 帝国主義者による「反帝国主義」は、植民地にされた国々で起こるナショナリズム運動に、そして自らの国内の大衆に向けて発せられる。英国の帝国主義者たちはラテンアメリカの農業・鉱山エリートたちの間で反乱を扇動したのだが、スペインの重商主義の支配に対抗して「自由貿易」を約束した。また彼らは米国で北部に対抗して南部の奴隷を使う綿花プランテーションの地主たちの「自立」を支持した。アメリカの反植民地革命に対してはイロコイ族の領有権を支持した。・・・このように正当な不満を帝国の目的のために見つけて利用したのである。第2次世界大戦の間には、日本の帝国主義者たちはインドで大英帝国に反対するナショナリストの反帝国主義運動の一部を支持した。米国はキューバとフィリピンでのスペインの植民地支配を非難し、抑圧される人々を暴虐から「解放する」ための戦争を欲したが(1)・・・、テロと搾取と植民地支配の体制を押し付け続けた・・・。


 帝国主義列強は反帝国主義運動を分裂させ、成功の暁には将来のための「従属支配者」を作り出そうとした。反帝国主義的なレトリックは2種類のグループの人々を惹きつけた。まず帝国の権力と一緒になって共通の政治的・経済的な利益を持つ保守的なグループだが、彼らは革命的なナショナリストへの嫌悪を共有し、新興帝国の権力にその富を結びつけることでより大きな利益を手に入れようとした。他方、反帝国主義運動の過激なグループは新興の帝国権力と戦術的に同盟を結んだが、それは手段(武器、プロパガンダ、車両そして金銭援助)を確保するために帝国権力を利用しようという発想であり、権力を確保しさえすればそれらを棄てる考えであった。往々にして帝国とナショナリストの相互の騙しあいゲームは帝国側の勝利に終わった(2)・・・。それは今も昔も同じである。


 帝国主義的「反帝国主義」のレトリックは、同様に国内の大衆に対しても向けられた。18世紀の反植民地闘争の遺産を賞賛する米国のような国では特にそうである。その目的は、帝国建設の基盤を、帝国への忠誠者や軍事主義者や企業受益者たちの強固な結束を越えて広げることである。それは、自由主義者たち、人道主義者たち、進歩的な知識人たち、宗教的・非宗教的な道徳論者たち、そしてその他の「オピニオン・メーカー」たちに向けて訴えかけられた。帝国同士の戦争と植民戦争のためにその命と税金を支払うはめになる広範な大衆の間で名声の高い者たちに向けてである。


 帝国の広報官たちは、ライバルたちの実際のあるいは捏造された暴虐さを発表する。そして植民地化の被害者たちの苦境を強調する。企業エリートと強固な軍事主義者たちは、資産を保護しあるいは戦略的な資源を手に入れるために軍事行動を要求し、人道主義者や進歩的な人々は「人道に対する犯罪」を非難してジェノサイドの被害者を救うための「断固たる措置を行う」ことを呼びかける。左翼のグループがこの合唱に加わって、その抽象的なイデオロギーにぴったりの被害者の集団を見つけ出し、「人々が自らを解放するために武装させよ」(ママ)と帝国権力に懇願する。



帝国主義戦争への道徳的な支援と社会的な体面のお飾りを借りることによって、そして「被害者を救うための戦争」というプロパガンダを丸呑みすることによって、進歩主義者たちは「愚者の反帝国主義」の典型になる。「反帝国主義」の土台に立った広範な大衆的支持を確保したときに、帝国主義権力者たちは、正義のためにという道徳的な熱狂に盛り立てられて、戦争を遂行するために安心して国民の命と公共の財産を犠牲にできるのだ。血みどろの戦いが続き戦死者が増大し国民が戦争とその犠牲を心配するようなときになると、進歩的そして左翼的な熱狂は沈黙に変わり、あるいはもっと悪くすると、「戦争の性質が変わった」とか「これは我々が考えていたような戦争ではない・・・」などといった主張をしながら道徳的な偽善へと変化するのである(3)。あたかも戦争実施者たちが前もって、どのようにどうして帝国主義戦争を行うべきかを、進歩主義者や左翼と相談していたかのように!


 現代という時代では、帝国による「反帝国主義戦争」と攻撃が、十分な資金を得た「草の根運動」、いわゆる「非政府組織」によって幅広く支持されそそのかされるようになった。それらは帝国主義的な攻撃を「招く」ことができる大衆運動を起こすために行動する(4)。
 過去40年以上にわたって米国帝国主義は少なくとも24の「草の根」運動を扇動してきたのだが(5)、それらは、民主的な政府を破壊し、集団主義的な福祉国家を破滅させ、標的とされた国々の経済に大きな損害を与えてきたのだ。


 チリでは民主的に選ばれたサルバドール・アジェンデ政府の下で1972年から73年を通して、CIAが資金を与えAFL-CIO(アメリカ労働総同盟・産業別組合会議)を通した巨大な支援によって、私営の運輸業者たちに物品とサービスの流れを止めるようにさせた。彼らはまた、銅の産出と輸出を止めるために(エル・テニエンテ鉱山で)銅鉱山労働組合の部門によるストライキに資金を与え、そしてついにクーデターにまで至らしめた(6)。軍が政権を握った後、多くの「草の根」キリスト教民主主義同盟の役員たちが、選挙で選ばれた左翼の組合活動者へのパージに参加した。言うまでも無いことだが、運輸業者と銅鉱山労働者たちは直ちにストライキをやめてその要求を引き下げ、結局のところあらゆる交渉権を失ったのである!


 1980年代に、CIAはバチカンの経路をとおしてポーランドの「連帯」を支援するために何百万ドルも送金した。そしてグダニスク造船所の労働者のリーダーであるレフ・ワレサを英雄にしたのだが、彼は共産主義政権を転覆させるためのゼネストの先頭に立った(7)。共産主義政権が倒されると同時に保障された雇用と社会保障と労働組合組織もまた消えてしまった。ネオリベラル政権はグダニスクの労働者を50%に減らし終にはそこを閉鎖してしまい、全部の労働者を解雇したのである。ワレサは豪勢な大統領年金付きで退職し、一方でかつての彼の同僚は路上をさまよい、そして新たな「独立」ポーランドの支配者たちはアフガニスタンやイラクでの帝国主義戦争のためにNATOに軍事基地と軍需用品を提供したのである。


 2002年にホワイトハウスとCIAとAFL-CIO、そして複数のNGOが、ベネズエラの軍と産業界と労働組合と官僚が率いる「草の根」クーデターを支援して、民主的に選出された大統領チャベスを追い落とした(8)。48時間のうちに、都市の貧困階層による100万人の強力な自然発生的な草の根の運動が、軍隊内の護憲勢力を後ろ盾にして、米国をバックにする独裁者を打ち破りチャベスを権力の座に戻した。続いて石油産業の重役たちがロックアウトを命じたのだが、それは米国に資金を与えられた多くのNGOの支持を得たものだった。彼らは労働者たちが石油産業を奪い取ることで打ち倒された。この不成功に終わったクーデターとロックアウトはベネズエラの経済に何十億ドルもの損失を与え、GNPが2桁も下降する原因を作った。


 米国は「草の根」武装イスラム聖戦主義者を支援してボスニアを「解放」し、「草の根」テロリストであるコソボ解放軍に武器を与えてユーゴスラビアを解体した(9)。米国がベオグラードを爆撃し経済を破壊してそれを「ジェノサイドへの返答だ」と主張したときに、ほとんど全ての西側左翼がこれを褒め称えた。コソボの「自由と独立」は、欧州最大の米軍基地を備えた巨大な白人奴隷商人のマーケットとなった(10)。そこは全欧州で外国に移住する割合が最も高いのである。


 帝国主義「草の根」戦術は、人道主義的、民主的、そして反帝国主義的レトリック、資金と訓練を与えられる各地のNGOと結びついており、マスメディアによる西側の世論、特に「著名な左翼人士の道徳的な批評」を動員するための大キャンペーンがその権力掌握の背後に付き添っているのである。

●帝国が推し進める「反帝国主義的」運動の結果:誰が勝者で誰が敗者なのか?
 帝国主義者が推し進める「反帝国主義的」そして「プロ民主主義的」な「草の根運動」の歴史的な記録は、単一にネガティブである。その結果をちょっとだけまとめてみよう。チリでは運輸労働者の「草の根」ストライキがアウグスト・ピノチェットの残虐な軍事独裁を招き、ほぼ20年間にわたる何十万人もの拷問と殺人と投獄と亡命を招き、野蛮な「自由市場政策」と米国の帝国主義政策への従属を招いた。結局は米国の多国籍銅採掘企業とチリの寡頭支配者が大勝ちした者であり、労働者階級、および都市と田舎の貧困層が大負けしたのだ。



ソビエト支配に対する東欧で米国に支援された「草の根蜂起」は、ロシアを米国に取り替え、ワルシャワ条約機構の代わりにNATOへの従属、国有の企業や銀行やメディアが西側の多国籍企業に大規模に移された。国営企業の私営化は前代未聞の2桁台の失業を生み、借金はうなぎのぼりとなり年金生活者の困窮が急増した。この危機によって教育レベルと技術レベルの高い人材が国外に流れ、無料の国民医療と高等教育と労働者の休暇施設は廃止された。


 いまや資本主義化された東欧とソ連全体を通して、高度に組織化された犯罪者集団が大規模な売春と麻薬の回路を発達させた(11)。外国と地元のギャング「企業家たち」は豊かな公営企業を手に入れて新しい超金持ちの寡頭支配者となった。西側の「パートナー」とつながる政党政治家、各地の企業家と専門家たちは社会・経済的な勝者である。年金生活者、労働者、集約農業の農民、失業する若者たちが、以前には補助金を与えられていた芸術家たちと共に、大負けを喫したのである。東欧の軍事基地はロシアへの軍事攻撃の最前線となり同時にあらゆる反撃の標的となった。


 もし我々が帝国権力の移動の結果を測ってみるなら、東欧諸国が米国とEUに(以前の)ロシアよりももっと従属的な位置に置かれていることが明らかになる。西側が誘導した経済危機がその経済を荒廃させている。東欧諸国の軍はNATOの下でソビエト支配の下でよりももっと帝国主義戦争に奉仕している。文化的なメディアは西側の商業的支配の下にある。とりわけ、経済面での全面的な帝国主義の支配の度合いが、かつてソビエトの下にあったものよりもはるかに進んでいるのだ。東欧の「草の根」運動は米帝国の深化と拡大を成功させた。平和、社会的公正、国の独立、文化的な復興と民主主義を伴う社会福祉の提唱者たちが大負けしたのだ。


 帝国主義者が推し進める「反帝国主義」と恋に陥っている西側の自由主義者や進歩主義者や左翼たちもまた大負けした者たちだ。ユーゴスラビアに対するNATOの攻撃への彼らの支持は、一つの多民族国家を分裂させコソボに巨大なNATOの軍事基地と白人奴隷商人の天国を作らせる結果を導いた。帝国が推し進めた東欧の「解放」への彼らの盲目的な支持は福祉国家を荒廃させ、社会福祉の展望を与える面で競い合う必要を感じていた西側政権への圧力を失ってしまった。



「草の根」の反乱を通して西側帝国が前進したことで主に利益を得たのは、多国籍企業とペンタゴンと右翼自由市場主義ネオコンだった。政治的な領域全体が右傾化するにつれ、左翼と進歩主義者のグループは次第に流れを追うようになった。左翼の道徳主義者たちは信頼と支持を失い、その平和運動は痩せ細り、その「道徳的批判者」は同調者を失った。帝国の支援する「草の根運動」の尻尾にくっついた左翼と進歩主義者たちは、その呼び名が「反スターリン主義」であれ「プロ民主主義」であれ「反帝国主義」であれ、いかなる深刻な自省をも行ったためしがない(12)。社会福祉や国の独立や個人の尊厳の喪失という見地から自らの位置の長期にわたる否定的な結果を分析する努力など全くやっていないのだ。


 帝国主義が操作する「反帝国主義的」論調の長い歴史は、現在、猛毒を帯びた姿に出会っている。オバマによって立ち上げられた中国とロシアに対する新たな冷戦、イランのいわゆる軍事的脅迫をめぐってペルシャ湾で起こりつつある熱い戦争、ベネズエラの「麻薬ネットワーク」に対する干渉主義的な脅迫、そしてシリアの「血の海」は、倒れかけの帝国を支える、「反帝国主義」の利用および誤用の、一部分および一群れである。願わくは進歩的で左翼的な著者と記者には、過去の思想的な落とし穴から学び、帝国吹きかえの「反乱」に「進歩的な外見」を提供することでマスメディアに近づこうとする誘惑に抵抗してもらいたいものだ。本物の反帝国主義や親民主主義の運動を、ワシントンとNATOとマスメディアに後押しされたものから峻別するべきときである。

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【訳者からの注釈】 
(1) キューバとフィリピンを巡る米西戦争とその引き金を引いた「メイン号事件」についてはこちらの文章を参照のこと
(2) その典型的な例は米西戦争後のフィリピンに見ることができるだろう。イラクもそうなのだがまだ決着はついていない。


(3) 私は2011年に、欧州の左翼勢力と「進歩主義者」たちのほとんどがリビアへの反カダフィ攻撃にもろ手を挙げて賞賛する、吐き気を催すような光景を目撃した。また、その同じ者たちがその10年前にアフガニスタンへの侵略戦争を、またその以前にはNATOによるユーゴスラビア解体の策謀を無邪気に支持する姿も目撃してきた。彼らはいまだに「アルカイダによるイスラムテロ」や「ミロセビッチによる民族浄化」といった米帝国のプロパガンダを固く信じている一方で、「残虐行為」や「誤爆」などについてだけを言い訳のように非難する。日本ではどうだろうか?


(4) ごく最近起こった実例は(3)でも触れたリビアでの「反カダフィ運動」であり、また現在シリアで盛んに「反独裁の草の根運動」が展開されつつある。
(5) 近年に米国によって煽り立てられた「草の根運動」の格好の例として、旧ソ連圏で展開された一連の「カラー革命」が挙げられるだろう。


(6) もちろんだが、ピノチェットによるクーデターではチリ内の反共組織、地主と企業家、オプス・デイが主導するカトリック系の組織が中心的な役割を果たした。オプス・デイはバチカンに正式に所属する組織であり映画「ダビンチ・コード」にある同名の団体とは無関係だが、スペインのフランコ独裁政権を形作り、ローマ教皇ヨハネ・パウロ2世の後ろ盾となって中南米の反共「草の根運動」の中心を担った。ピノチェット自身オプス・デイの一員と言われる。さらに冷戦時に中南米で親米勢力による恐怖政治を煽り続けたのがジョセフ・ラツィンガー(現教皇ベネディクト16世)だったが、彼が教皇に選出される際にもこのオプス・デイが決定的な力を発揮した。一方で、米国の労働組合は常に帝国翼賛団体であり利権あさり構造の重要な柱の一つとして米帝国を支え続けており、彼らにとって外国の悲劇などは「利権の種」でしかない。さらに冷戦中の米国で「民主主義」者も「自由主義」者も反共プロパガンダの担い手として米国の新植民地主義の一翼を担っており、CIAの謀略と米欧巨大資本の搾取に苦しむラテンアメリカの現実には、形ばかりの同情は示しても一般的に冷淡だった。


(7) レフ・ワレサはオプス・デイの重要な関係者である。ポーランド人であるヨハネ・パウロ2世がオプス・デイの創始者エスクリバー・デ・バラゲーを異常な早さで聖人にしたときに、その列聖式にはワレサの姿が見られた。米国(CIA)〜バチカン(オプス・デイ)〜ポーランド「草の根運動」は深い部分で強固につながっていたのだ。
(8) このクーデター(未遂)にはベネズエラ内の労働組合と左翼組織が積極的に力を貸した。欧州内でも左翼勢力は「チャベス打倒」を支持した。スペインの社会労働党を長年率いたフェリペ・ゴンサレスは常にチャベスを非難しており、クーデターの結果登場したカルモナ「新政権」を積極的に称えた。なおこの政変劇が他の中南米諸国と同様にCIAとオプス・デイ(バチカン)の合作であったことは言うまでもない。


(9) 「アルカイダ」とか「イスラム聖戦主義者」などと呼ばれている者たちや団体の多くが1990年代にCIAやMI6にリクルートされてボスニアヘルツェゴビナで「解放戦争」を行った者たちを中心としている。モロッコの聖戦主義者の証言がこちらにある。またこちらにあるとおりなのだが、米国や英国こそが中東・イスラム圏でのテロを担ってきたのだ。現在(2012年1月)シーア派が爆弾テロの標的になっているが、これはイランを戦争におびき寄せるための策と思われる。
(10) そもそもコソボの初代首相となったハシム・タチはマフィア組織の一員である。また「コソボ独立」の意味についてはこちら(英文)およびこちら(英文)を参照のこと。


(11) スペインでの売春婦は中南米、アフリカ、東欧出身者の3種類に分けられる。その中でも東欧系の女性は「需要」が高く、彼女らの「商売」の背後にロシア系やクロアチア系など東欧のマフィア組織があることが、スペイン人の間では常識となっている。また麻薬に関しては、スペインに入るコカインは中南米産だが、欧州に入るヘロインはアフガニスタンで作られイラクを通してコソボのマフィアが欧州に流通させていると言われる。


(12) このことは、911事件・アフガニスタン戦争からイラク戦争にかけての「対テロ戦争」初期に米国や英国の首脳部から発せられた数々の明白な大嘘に対して、その重大さを訴える左翼や「プロ民主主義」者がほとんどいないという事実となって現れている。これは米欧だけではなく、日本を含めた世界的な傾向ではないかと思われる。単に騙された自分たちの愚かさを認めたくないだけなのか、目的あって意図的に嘘に加担しているのか、それとも(まさかとは思うが)それらのあからさまな嘘を本気で真実と思い込んでいるのだろうか?


(以上、転載終わり)





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