[CML 014269] 井野博満教授「ストレステストについての意見」

Yasuaki Matsumoto y_matsu29 at ybb.ne.jp
2012年 1月 12日 (木) 18:28:14 JST


みなさまへ    (BCCにて)松元
京都の諸留さんが、「ストレステスト意見聴取会で 何が議論されているか」についての詳細な報告に続き、井野博満東京大学名誉教授の「ストレステストについての意見」の詳細文を井野氏の了解のもとで公表しています。

ここではその重要性にかんがみ、当日の配布資料から井野博満教授の「意見」詳細文のみ紹介させていただきます。

前者「ストレステスト意見聴取会で 何が議論されているか」の冒頭に諸留さんの次のような導入と井野教授の紹介が掲載されていますので、その部分だけ以下に紹介して、その後、上記井野氏の「意見」を転載させていただきます。

======冒頭の導入文=======

今週1月9日(月)に大阪市内(エル・おおさか)で、レベッカ・ハームス氏(女性)と、ゲオルギ・カスチエフ(男性)、及び井野博満東京大学名誉教授3名による、「ヨーロッパのストレステスト、ドイツなどヨーロッパの脱原発政策」及び「日本のストレステストの問題」の講演が開催されました。

ゲストのレベッカ・ハームス(女性)とゲオルギ・カスチエフ(男性)の二人の報告は別途に回し、現在、焦眉の問題となっている、日本政府が原発再稼働を射程に入れた、ストレステストを、原発再開の口実にしようとしている緊急性を鑑み、井野博満東京大学名誉教授よる、「ストレステスト意見聴衆会で何が議論されているか」「そこにはどんな問題点があるのか」の、極めて重要な指摘と報告もなされたので、以下に報告します。

 今回の1月9日の大阪での講演会終了直後に、私(諸留)が、井野博満氏が当日の会場で配布及び説明なさった資料の電子文字化と、そのインターネット上への掲載を、井野博満氏より、私(諸留)が御承諾を得ましたので、以下に掲載します。

○井野博満氏の紹介
国立大学法人東京大学 名誉教授。柏崎刈羽原発の閉鎖を訴える科学者・技術者の会代表。主な著書:『福島原発事故はなぜ起きたか』(編著、藤原書店、2011年6月刊)、『徹底検証21世紀の全技術』(現代技術史研究会編、責任編集、藤原書店、2010年10月刊)。なお井野博満氏は、後藤政志氏と共に、原発即停止の立場から「ストレステスト意見聴衆会」の委員にて参加しています。

===井野教授「ストレステストについての意見」転載====

[2012(H24)年01月8日(木曜)AM05:45送信]
《パレスチナに平和を京都の会》諸留です
**転送/転載/拡散 歓迎**
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前回に続き、井野博満東京大学名誉教授氏の
「ストレステストについての意見」の詳細文を、続けてお届けします。
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■「ストレステストについての意見」
井野博満 東京大学名誉教授
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1・従来枠組みのままでのストレステストの審議でよいのか

 福島原発事故は、これまでの安全審査に不備があったことを如実に示した。すなわち、福島原発事故を防ぐことが出来なかった立地審査指針、耐震設計審査指針、安全設計審査指針、安全評価審査指針の内容的不備、および、これらに基づいて行われた具体的安全審査の不備を示すものである。これらの不備な内容の安全指針類の検討がなされない状態で、位置付けの不明なストレステストを実施することは安全性評価を混乱させることになる。

 加えて問題なのは、ストレステスト評価の枠組みが、事業者がストレステストを実施・評価し、その結果を保安院が意見聴取会での検討を経て確認し、安全委員会がその妥当性を確認するという従来の安全審査と同じ枠組みになっていることである。このストレステストに関する意見聴取会を進めるに際して、まず重要なことは、原発に批判的な考えをもつ市民や地元住民をメンバーに加えるべきことである。現状では、メンバーがいわゆる専門家に眼られている。メンバー構成の根本的な見直し・拡大を求める。

2・市民・住民の参加がなぜ必要か

 今回の原発事故により、安全神話が崩壊し、原発のリスクがゼロでないばかりか過小評価されてきたことが明白になった。ストレステストが、リスクゼロ、すなわち、大事故は絶対に起きないことを証明するものでないことは明らかである。とするならば、ストレステストの結果が再稼働の条件として適切なものであるかどうかについて意見を述べ判断する主体は、被害を受ける可能性のある地域住民であって、いわゆる専門家はその助言をする立場であると考えるべきである。この意見聴取会のメンバーに市民・住民の参加を求めるゆえんである。

 加えて、今まで安全審査に関わってきた専門家は、事業者の立場を代弁し、安全でないものを安全だと判断し、ときにはごまかしの論理を組み立ててきたという「実績」がある。公正な立場で安全審査に携わってきたとはみなされていない。そういう負の歴史を踏まえる必要がある。

 以上の理由から、ストレステストの審議プロセスに住民参加は不可欠である。意見聴取会のメンバーに市民・住民を加えるとともに、保安院のまとめ作成に際しては、公正な運営のもとでの公聴会を開催する必要がある。

3・ストレステストの位置づけについての疑問

 枝野・海江田・細野三大臣署名の文書「我が国原子力発電所の安全性の確認について(ストレステストを参考にした安全評価の導入)」(平成23年7月11日)によれば、一次評価は、定期点検中の原発の運転再開の可否についての判断のために行い、二次評価は、すべての原発を対象に運転の継続または中止の判断のために行うとしている。しかし、これは論理的に矛盾している。福鳥原発事故を受け、安全審査の瑞疵が問題になったのであるから、本来ならばすべての原発の運転を停止し、一次・二次の区別なく検査を受けるべきである。

 また、一次評価・二次評価の実施計画(保安院7月21目、参考3)において、二次評価の事業者報告は本年内(2011年12月末)を目処とするとされているが、一次評価の報告が11月初めにおいていまだに大飯3号機1件であることを考えると、一次評価と二次評価の時期は重なってきている。一次評価・二次評価は内容的に見ても連続しており区別して実施する意味はない。

 そもそも、ストレステストが原発の運転の可否を判断するためのものであるならば、個別の原発ごとに可否を議論・判断するのでなく、運転継続を求めるすべての原発についてのストレステストが出そろったところで、横並びにして議論をすべきなのではなかろうか。そのようにして初めて、各原発の安全評価上の相対的位置が理解できると考える。っまり、すべての原発に危険性があると考えている私流の表現を使えば、「非常に危ない原発」と「かなり危ない原発」との位置関係が理解でき、廃炉にすべき原発の緊急性の順序が評価できると考える。

 浜岡原発については、運転停止の措置が取られたが、同様の措置が必要と考えられる原発が数多くある。照射脆化の著しい玄海1号機などがその一例である。

4・ストレステストの判断基準が明確でない

 このように一括して議論・判断すべきと考えるのは、ストレステストの審査基準・合否の判断基準はどこにおいているのか、まったく不明確だからである。明確な判断基準がない状態では、合否の判断が窓意的・主観的なものにならざるを得ない。そのような判断はすべきでない。1・で述べたように、安全指針の見直しが先行されるべきであって、それに基づいて安全基準が新たに作られるべきである。別の恣意的・主観的安全評価がなされるべきではない。ストレステストは、せいぜい、各原発の評価結果の比較を行うことにより、どの原発がより安全か(より危険か)という相対的な判断に役立つことでしかない。

5・福島原発事故原因についての知見を反映させることの必要性

 政府の「事故調査・検証委員会」(畑村委員会)が調査を継続中であり、その中間報告が本年中にも出されると言われている。その中間報告で解明された事態を踏まえて、ストレステストは実施されねばならない。事故原因としては、津波による被害とともに、サイトをおそった地震動によって配管切断や機器の損傷があったのではないかと疑われている。原子炉圧力容器の水位計指示や格納容器の圧力上昇の時間推移などがその可能性を強く示唆している。ストレステストはそれらの知見を踏まえねばならないと考える。

 保安院の実施計画(7月21目、別添2)では、福島第一、第二原発についてはストレステストの実施計画から除くとしているが、東北地方太平洋沖地震で被災した原発もまたストレステストを実施すべきである。なぜならば、それら被災した原発についてストレステストを実施することは、事故原因解明に寄与しうるとともに、ストレステストの有効性を検証することになる。すなわち、ストレステストの結果が福島事故の現実を(完全ではないにしても)再現できるものでなければストレステストの意味をなさない。その意味では、これら被災原発に対するストレステストが、ほかの原発に先駆けて行われるべきである。東京電力、東北電力、目本原電各社に対し、それぞれ、福島第一・第二原発、女川原発、東海第二原発のストレステストを早急におこなうよう保安院は申し入れるべきであると考える。

6・耐震安全性評価(耐震バヅクチェック)見直しの必要性

 東北地方太平洋沖地震の誘発地震といわれる4月11目の福島県浜通りの地震(M7.0)の際、福島県の湯ノ岳断層が動いた。活断層とは認定されていなかったこの断層が動いたことを受けて、保安院は事業者に対し全国各地の原発近傍の断層についての調査を命じた。その結果は、いずれも活断層と認められないという回答であったが、その根拠は十分であろうか。住民を納得させるに足るものであろうか。これら断層が活断層である可能性を考慮してストレステストの前提となる基準地震動の大きさを見直し、再評価すべきではなかろうか。

 例えば、10月末に提出された関西電力大飯3号機の報告書において、前提となる基準地震動についての説明が添付5-(1)-2にあるが、700ガルとされた基準地震動の信頼性やその評価の幅についてなんら記述がなく、敷地近傍の2本の海底活断層に連続して陸側の熊川活断層が動く可能性の評価もなされていない。また、敷地内には多数の断層が走っている。

 これらが動けば重要設備・機器の支持基盤が喪失する怖れがある。ストレステストという以上、懸念されている最大の地震が起こった場合の言平価や断層が動いた場合の評価をし、その後の設備・機器の応答と組み合わせて全体像を明らかにすべきではないのか。

7・経年変化(老朽化)の現実を反映させることの必要性

 ストレステストで実施される評価方法は、基本的に解析的手法(シミュレーション)であって、現実の設備・機器がどのような状態にあるかについて、現時点での調査・診断がなされないのではないかと懸念している。現実の原発は長期間の運転によって老朽化(高経年化)しており、運転開始時と同じ状態にあるわけではない。この現実を踏まえたストレステストでなければならない。

 実施計画書(前出の別添2)には、「評価は、報告時点以前の任意の時点の施設と管理状態を対象に実施する」という説明文が書かれている。これは設備;機器の現実を取り入れて評価すると読めるが、「任意の時点」は「現時点」ではない。過去において実施した検査を踏まえるということであろうが、それは現時点で新しく設備・機器の検査などは実施する必要はないと言っていることになる。それは評価方法として不適当である。

 30年を超えて運転を継続することを望む原発については、事業者は「高経年化技術評価書」を提出し、老朽化の現実について評価を受けることになっている。30年に満たない原発においても材料劣化などは当然起こっている。それら設備・機器の現実を現時点で調査し、その結果をストレステストに反映させるべきであると考える。

 例えば、大飯3号機においては、2008年に原子炉圧力容器一次冷却水出ロノズルのセーフエンド溶接部に深さ20ミリを超えるひび割れが観測され、70ミリ厚の配管を工事認可申請書の記載を変更して53ミリまで削って運転を再開した。このような劣化個所が現在どのような状態になっているかの現状把握は安全上欠かせないと考える。しかし、今回提出されたストレステスト報告書には(見落としでなければ)この問題についての記述はない。

8・自然現象以外の外的事象も評価対象事象に加えるべきである

 上記別添2の実施計画では、評価対象として白然現象(地震、津波)および安全機能の喪失(全交流電源喪失、最終ヒートシンクの喪失)を挙げている。しかし、それ以外の重大な事象として、航空機墜落や破壊工作、他国からの攻撃が懸念されている。そのような場合に大事故にならないための対策が必要である。

 欧州原子力安全規制部会の声明(2011年5月13日)では、これらに関連する事象をEUストレステスト仕様書(アネックスI)の範囲外としているが、同時に、安全保障上の脅威によるリスクに関しては、特別な作業部会を設けることをアネックスIIとして同声明で提案している。日本においても、これにならう必要があると考える。

9・過酷事故にともなう被害とその緩和対策について評価することの必要性

 過酷事故の可能性がゼロでない以上、その被害の大きさの評価とどのような被害緩和策が用意されているかの評価は不可欠である。その具体的予測が明らかにされて初めて、受忍可能なものであるかどうか、地域住民・自治体の判断が可能となる。事業者は、過酷事故発生後の放射能汚染の評価をも加えた報告書を作成すべきである。

=====以上、転載終わり========

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真の文明は
山を荒らさず
海を荒らさず
村を荒らさず
人を殺さざるべし (田中正造)

「安全といってくれれば安心だ」政府依存の庶民の神話

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《パレスチナに平和を京都の会》
"Peace for Palestine" in Kyoto Movement(PPKM)
代表:諸留(モロトメ)能興(ヨシオキ)
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